遗伝物质は顿狈础だけではなかった。精子でそのメカニズム解明に取り组む。| UTOKYO VOICES 062


定量生命科学研究所 病態発生制御研究分野 准教授 岡田由紀
遗伝物质は顿狈础だけではなかった。精子でそのメカニズム解明に取り组む。
生物の配偶子は顿狈础専用の乗物ではなかった――。
「配偶子で亲から子どもに引き継がれるのは顿狈础だけと言われていたのですが、実は精子の核内にある搁狈础やヒストンタンパク质も间接的に受け継がれることがわかってきました」と、生殖细胞を研究する冈田は话す。「例えば、高齢の父亲の子どもは精神疾患のリスクが高く、栄养ストレスを受けた父亲の子どもは栄养负荷耐性が低くなることなどから、顿狈础以外の物质が遗伝している可能性が见えてきたのです」。
今でこそ研究の日々を过ごしているが、近くに大学はおろか塾もない、纪伊半岛最南端の小さな町で育った冈田は、「あまり勉强した记忆がなく、研究者になるとは思ってもいませんでした」と笑う。高校3年生の进路相谈の际、何も考えていないと怒られるので、前日に死んだ爱犬を思い浮かべ、とっさの势いで「獣医になりたい」と言ったことが研究者への入口だった。
急に决めた进路であったが、北海道大学理滨滨系に见事合格。移行进学で獣医学部に进んだ。4年生の时、アルバイトを兼ねて动物病院に通ったら、猟犬やきれいな服を着た犬が来るのを见て、「动物が人间の都合で振り回される世界は自分に合わない」と思い、临床獣医师を諦めて応用の効く病理学教室に入る。すると5年生からの卒业研究が楽しくて気づいたら就职时期は过ぎてしまい、医学部研究室に移って大学院4年间をウイルス研究に费やした。
医学部の教授は「研究者たるもの必ず海外に行け」という考え方の持ち主だった。冈田はインターネットでアメリカの大学の求人広告を见つけ、幸运にも电话面接で採用され、ポスドクとしてノースカロライナ大学の研究室に留学。与えられたテーマはウイルスとまったく関係ないヒストンの研究だったが、必死に取り组んで论文をまとめた。「とても良いテーマで特许を取得でき、それを製薬会社が买って白血病の薬に応用されました。研究室もとんどん拡大して、ハッピーな6年间でした」。
その后、京都大学に移り生殖细胞の研究に取り组む。「アメリカでの研究素材はヒストンのある细胞だったので、今度はヒストンが抜けた精子の研究をしたいと思ったのです」。
成果が出始めたところで同じようなテーマの论文が别の研究者から発表され、また研究结果も冈田のチームのものと同じであったため大いにがっかり。ところが程なくして反証论文が出始め、精子のヒストンは何が正しいのか分からないまま、混沌とした状况がしばらく続いた。2012年に东大に来て、「この问题を解决できそうな技术を持っている研究者と知り合い、再度実験を行った结果、「いずれの结果も正しいということがわかりました」。
今后は、精子の中からヒストンが抜ける仕组みや、精子を介した顿狈础以外の物质が遗伝するメカニズムの解明、さらに不妊症治疗に役立つであろう研究に取り组む计画だ。「もうひとつ兴味があるのは、生殖细胞と神経细胞の遗伝子プロファイルとエピゲノムプロファイルがなぜ似ているのかを研究することです。脳科学者には、似てないって言われそうですけど」。
「今まで行き当たりばったりでやってきたので、今后も行き当たりばったりで取り组んでいくと思います(笑)。私は、どちらに行っても最善の选択をしたと思うタイプなので、结果がどうあれこれがベストだと思い込むと思います」
5円玉入りのスケルトン精子。「本来は商品(カエル型ライト)が入っていた&濒诲辩耻辞;容器&谤诲辩耻辞;ですが、ライトではなくこれが欲しくて」购入。当初はこの中にクロマチン(顿狈础とタンパク质の复合体)を模した色ゴムを作って入れていましたが、最近はいろいろな人とご縁ができるようにということで5円玉を入れています」。
生殖细胞で有名な研究者の言叶を代々引き継いだ「神経细胞はあなた自身を形作るものであり、一方、生殖细胞はあなたがどこから来たか、またあなたがどこへ向かうかである」。「神経や癌がやりたいという志の高い学生を、何とか生殖细胞の研究にリクルートする时の决めぜりふ」として使っている。

Profile
冈田由纪(おかだ?ゆき)
2002年北海道大学大学院 獣医学研究科 博士課程修了後、同年科学技術庁 CREST研究員、2003年日本学術振興会 特別研究員(PD)、2004年Postdoctral fellow(NIHグラント)、2005年日本学術振興会 海外特別研究員、2007年Postdoctral fellow(HHMI)、同年Research Specialist(HHMI)、2009年京都大学 生命科学系キャリアパス形成ユニット 特定助教、2012年東京大学 分子細胞生物学研究所 特任准教授、2016年東京大学 分子細胞生物学研究所 准教授、2018年東京大学 定量生命科学研究所 准教授、平成23年度文部科学大臣表彰 若手科学賞。
取材日: 2019年1月16日
取材?文/佐原 勉、撮影/今村拓馬