大容量化の一途を辿る地震ビッグデータの解析アルゴリズム开発プロジェクトを牵引。| UTOKYO VOICES 057
地震研究所 巨大地震津波災害予測研究センター / 大学院情报理工学系研究科 数理情報学専攻 准教授 長尾大道
大容量化の一途を辿る地震ビッグデータの解析アルゴリズム开発プロジェクトを牵引。
「小さい顷から、宇宙や地球に非常に强い兴味がありました。また、算数や数学は絶対に谁にも负けたくなかった。それが、地球科学と数理科学の融合という今の研究につながっています。理学部に行くと决めたのは中学生の时で、その顷から研究者になると决めていました」
京都大学大学院理学研究科の修士?博士课程に进んだ长尾は、データ解析のための数学的手法に兴味があったが、「これといったデータ解析手法がなかなか见つからず、大した结果を出せずに悩んでいました」。転机は博士课程のときに访れた。
「统计数理研究所の樋口知之先生が京大で行った集中讲义で、まったく知らないデータ解析手法に出会ったのです。まさしく、目から鳞でした」
その后、长尾は统计数理研究所在职时に、モデルに実际の観测値を入力して现実に近いシミュレーション结果を得る「データ同化」の手ほどきを樋口から受け、东京大学に异动后、シミュレーションとデータが大规模な场合にも适用可能なデータ同化アルゴリズムの开発に取り组んだ。例えば、长尾らは天気予报でおなじみの台风の进路予测で表示される予报円の精度と求めるまでの计算时间を、剧的に改善する新しい4次元変分法を2年前に开発した。
「天気予报で使われている従来の4次元変分法は、予测结果の不确実性を评価できませんでしたが、それを可能にする新しい4次元変分法の开発に成功しました」
「通常、シミュレーションモデルの规模が大きくなると、そのままでは计算コストが几何级数的に増大します。たとえば、モデルの规模が10倍になると、计算时间は100倍といった具合に。しかし、やはりデータ同化の计算时间も10倍であってほしい。これが可能となるような4次元変分法データ同化のアルゴリズムを作りました」
现在、さらに大规模なデータを解析できるアルゴリズムの开発に取り组んでいる。それが、长尾らが牵引している科学技术振兴机构の大型プロジェクト颁搁贰厂罢で、最先端のベイズ推论に基づくデータ同化手法の深化や、大容量化の一途を辿る地震ビッグデータの解析に役立つベイズ统计学的手法の开発を実施している。
公的な研究机関が运営する国内1,000カ所以上の地震観测点に加え、近い将来、民间会社が所有する数千カ所にのぼる地震计や、スマホに搭载されている振动计のデータの利活用が実现すると、一挙に何千万カ所もの地震観测点ができることになる。しかし、「このような地震ビッグデータを効率よく処理するアルゴリズムは、まだありません。その解析手法は今から作る必要があるため、颁搁贰厂罢プロジェクトを発足させました」。
「私は、基础研究を実施している地震研の中でも、特に基础中の基础の研究を担当しています。论文は数式だらけで、见た目に派手な図もありませんが、数理科学的に一切の误魔化しや曖昧さを残さないことを最も大切にしています。固体地球科学と数理科学の融合に賛同してくれる若手研究者が、徐々に集まってくれています。引退后はもちろん、死ぬ间际まで、そのような人たちが集まって议论してくれる、そんな研究者になりたいですね」
1年くらい前に买ったデジタルペーパー。「メモを书いたり论文を読んだりすることはもちろん、学生や研究员の论文原稿チェックなど、本当に手放せません。これを买うまでは、海外出张の际に大量の印刷物を持参していたのですが、それからも解放されました」。
任期付き研究职を渡り歩く苦しい时期、研究者をこれ以上は続けられないと諦めかけていた时に、父から言われた言叶。「まだ决まってもいない先のことを、あれこれ考えてもわからない。目先の小さな损得を考えず、ただひたすら目の前のことを一生悬命やれ、アホになれ、と言われ、生き返りました」。
Profile
长尾大道(ながお?ひろみち)
1997年京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻修士課程修了、2002年同専攻で博士号取得、その後、日本原子力研究開発機構、海洋研究開発機構、統計数理研究所での研究生活を経たのち、2013年より地震研究所と東京大学大学院情报理工学系研究科数理情報学専攻の准教授を兼務。専門は数値シミュレーションと観測?実験データをベイズ統計学で融合する「データ同化」のアルゴリズム開発および様々な科学分野への応用展開。地震学者と統計学者の橋渡し役として、地震ビッグデータ解析アルゴリズム開発のプロジェクトを牽引している。
取材日: 2019年1月18日
取材?文/佐原 勉、撮影/今村拓馬