人间の脳は仲间内を超えて、社会の分断を克服できるか。| UTOKYO VOICES 056


大学院人文社会系研究科 社会心理学講座 教授 亀田達也
人间の脳は仲间内を超えて、社会の分断を克服できるか。
中学の时には弁护士を目指して法学を学びたいと考えていたが、弁护士には向かないと考えて文学部に入学。当初つまらないと思いながら社会心理学を学んでいた亀田に転机が访れたのは、大学3年の时だった。様々な価値観を持った人がいる中で、社会的な合意はどのように形成されていくのだろうと考え始め、『「きめ方」の论理―社会的决定理论への招待』(佐伯胖、东大出版会)を読んだ。
「本の中で、佐伯先生は社会の中で决めることのメカニズムと伦理的な意味について语っていて、问いがとても深いと感じました。それは人间の知的机能の仕组みを実験や计测で调べていく认知科学が背景にあったからです」
それを起点として、现在、亀田が取り组んでいるのは「実験社会科学」という、世界のどこにも存在していない新しい统合的学问だ。
「共感性や利他性、モラルなど、『人の社会』を支える人间の本性について、『ヒトの心』に関する自然科学の先端知识や実験と、长い歴史の中で积み重ねられてきた人文社会科学の知恵をつなぐことで理解しようとする试みです」
例えば、「共感」という言叶は「人の不幸に同情する」といった感情の动きについて述べる时に使われる。しかし、人间の脳は150人程度の仲间内(内集団)を相手にするように设计されていて、共感が及ぶ范囲は血縁など狭い范囲に限定される。
そうすると、それをはるかに超える贫困や格差などの现代社会が抱える问题は解决できない。そのため、感情による共感とは别に、様々な人との関係を认识した上で适切な判断をするための认知的な共感が求められる。
「私たちの研究チームでは、ストロボの强い光刺激を受け続けている人の映像を见た実験参加者がどんな反応をするのか、生理反応を用いて调べました。その结果、他者に対する利他性は认知的共感によって生まれる可能性が明らかになりました」
社会のモラルや规范、富の分配を考える际に、最も重要な着作と言えるのがジョン?ロールズの『正义论』である。ロールズはその中で、人は最も不遇な立场にある人々に対して自然と手厚い施策を施すようになるし、そうすべきだと论じている。
「その结论は『きめ方の论理』で学びましたが、私は机上の空论だと信用していませんでした。しかし、その问题はずっと头の中にあって、人间がそう考える心的な装置があるのではないかとも考えていました。それを探し続けて、数年前に脳まで调べる実験を行い、やはり心的な装置があることがわかったのです」
その结果から、最终的な行动や意见は多様でも、认知过程で见ると、人は谁でも不遇の状态に対して敏感に反応することがわかった。认知的な共感回路を通じて、不遇を考えていくのだ。それは生物的な特性で、不遇状态のリスクが脳の奥深い部分に刻み込まれているのかもしれない。人が生きていく上に欠かせないもので、社会的に合意を形成していく上で共通の土台になる。
「社会の分断が深まっている中で、その状态を解决するにはどうしたらよいのか。人间が持っている本性の中に、それを変えていく可能性があるかもしれません。その土台は何かを考え続けていきたいと思います」
パリのノートルダム大圣堂の屋根に载っている魔除け。シカゴ大学のブックストアで売っていたのを友人が买ってくれた。考えているような姿が気に入っている。
寺山修司の有名な言叶だが、自分ではひとつの学问领域だけでなく、いろいろな人、いろいろなところを见ようと置き换えている。オープンマインドであれと、学生たちに常に言っていることでもある。

Profile
亀田达也(かめだ?たつや)
1960年生まれ。东京大学大学院社会学研究科修了。イリノイ大学大学院心理学研究科博士课程修了。笔丑.顿(心理学)。1989年东京大学文学部助手、1994年北海道大学文学部助教授、2000年北海道大学大学院文学研究科教授、2014年东京大学大学院人文社会系研究科教授。着书に『モラルの起源―実験社会科学からの问い』(岩波新书)、共着に『合议の知を求めて―グループの意志决定』(共立出版)など。
取材日: 2019年1月22日
取材?文/菊地原 博、撮影/今村拓馬