新しいアイデアで、地球温暖化のメカニズムを探究。 | UTOKYO VOICES 029
大気海洋研究所 気候システム研究系 教授 渡部雅浩
新しいアイデアで、地球温暖化のメカニズムを探究。
地球温暖化で人类社会はどの程度のリスクを抱えるのか&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。「人间活动による温暖化の进行は事実です。それだけに、気候科学者として、ハイエイタス现象(地球全体の気温上昇の停滞)がなぜ起こったのかを解明しなければなりませんでした」と、渡部は话す。
2000年顷から最近まで、温室効果ガス浓度は上昇しているのに気温は上がっていなかった。滨笔颁颁(気候変动に関する政府间パネル)が唱える温暖化の颁翱2主犯説は间违っているのではないか、といった懐疑论も息を吹き返していた。
ハイエイタスの原因を探る世界最前線の科学者の中に渡部のグループもあった。最新の全球気候モデルを用いたシミュレーションによって、熱帯域の自然の10年規模変動が温暖化を停滞させていたことを解明し、論文が2014年『Nature Climate Change』誌に掲載された。
高校时代、世界をフィールドにするような、文明発生の谜に迫る考古学と人类の起源を探る生物进化学に兴味があった。しかし大学进学の际、「理系の进化论か文系の考古学か、あいまいなまま理系に进んだため」一种のアパシーに陥り、「1年间、世界を旅していて、结果として留年しました」。
「3年のときたまたま、东大から来た若い先生について、世界中の気象データを地図上にプロットすることで、干ばつや洪水などの异常気象现象が见えてくることを知りました。それまで気象や気候には関心はありませんでしたが、新鲜で面白かったのです」
それ以来、地球の気候変动メカニズム解明に取り组んでいる。博士论文では、大気海洋系の10年规模変动のメカニズムに関する数値的研究を行い、10~20年で海面水温が変动する现象をシミュレーションによって解明した。
东大に戻った2007年顷から、地球温暖化と异常気象の研究を本格的に开始。特に、频繁に起こるようになった异常気象にどこまで温暖化が影响していたかを、イベントアトリビューション(个々の异常気象の要因分析)という新しい数値モデリング手法で明らかにすることを目指した。
その结果、「イベントアトリビューションによって、特定の异常気象が温暖化で何%起こりやすくなったか、という定量评価が可能になりました。例えば2017年は世界各地で热波や高温イベントが続出しましたが、これらは温暖化していなければ100%起こらなかったという结论が得られました。100%というのは初めての数字で、我々の结果は米国発の同様の研究成果とともに『狈补迟耻谤别』に最近の话题として取り上げられました」。
「今では全球気候モデルやスパコンは谁でも使えます。観测データも使いやすく编集されて、すぐに可视化できるようになりました。大事なのは、谁でも使えるモデルやデータから何を见つけるかであり、アイデアこそが问题解决の键です。使える道具をすべて使って、自分のアイデアが正しかったとわかったときに最も兴奋を覚えます」
「今は、今后20~30年の间に気候と気象がどう変わるかをより的确に予测することに関心があります」と话す渡部らの取り组みに、変化する気候の中で安定した社会を持続する方策の一端がかかっている。
取材?文/佐原 勉、撮影/今村拓馬
10年以上前、横浜の中华街でたまたま目にして面白いと买い求めた、异なる色の石をはめ込んだ地球仪。渡部はモザイクの石の地球仪を见ながら、社会の行方を左右する気候の変化に思いをはせているのだろう
ほとんどのアイデアはゴミだが、アイデアがないと始まらない。电车や风吕の中、寝ているときなどにアイデアが闪くこともある。「昔はメモしていましたが、最近はメモは取らない。忘れたとしたらたいしたことはないアイデアなんです」
渡部雅浩(わたなべ?まさひろ)
2000年東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。2001~2002年米国ハワイ大学客員研究員、2002~2007年北海道大学 准教授、2007年東京大学気候システム研究センター 准教授、2016年東京大学大気海洋研究所 教授(現職)。地球温暖化の科学的知見を深化するための研究プロジェクトを主宰し、2021年出版予定のIPCC第6次評価報告書の著者にも選出されている。
取材日: 2018年1月23日