イヤな目に遭うことも面白い。 | UTOKYO VOICES 025
大学院経済学研究科 教授 城山智子
イヤな目に遭うことも面白い。
子どもの顷から本が大好きで、『ドリトル先生』や『くまのパディントン』シリーズなど、知らない世界、行ったことのない场所の冒険谭に心惹かれた。「こういう『知りたい、行ってみたい』という気持ちが、今の研究につながっている」と城山は语る。
东大文学部2年の春休み、母と二人で中国旅行に出かけた。飞行机でたった2~3时间の距离なのに、当时の中国はまったくの异世界で、「中国の『おかしなところ』を知りたい」と思うようになった。
①长い歴史、②共产主义、③発展途上という、「今につながる中国の3つの颜」を统合した研究ができたら面白いと、东洋史学を専攻するも、中国留学を目前に天安门事件が勃発し、急遽、ハーバード大学に行き先を変更。図らずも欧米の视点からアジア?中国史を学ぶと同时に、仮説を立てて検証し议论を行うという未知の手法を彻底的に叩き込まれることになる。
「本当に本当に大変でした」とこぼすが、ここで「研究するための筋肉」を培ったことが、资料の読み方、论文の书き方、议论の仕方に今も役立っている。
城山のユニークさは、基本は歴史学にありながら、アジア経済にフォーカスした比较研究で多くの成果を上げてきた点にある。歴史学はありのままを引き出す「耳を倾ける学问」、経済学は仮説を立てて「分析する学问」、城山の手掛ける経済史は双方に留意する必要があり、そのバランスが难しいという。
现在、城山は「近代アジアにおける水圏と社会経済」という共通テーマを比较検讨する大规模なプロジェクトにおいて、研究代表を务めている。
滨罢の进化によりさまざまなシミュレーションやデータ解析が可能になり、アジアならでは「横のつながり」や「多様性」を包括した比较研究もかなりやりやすくなってきた。アジア特有の时间の流れ、サイクル、経済発展といった「轴」を発见しながら、アジアの今と未来を见通す研究成果を学术的に発信していきたいという。
「今は私がリーダーを务めていますが、これからも多様な研究者たちとのオープンな相互理解を大事にしながら、若い世代につないでいきたいと思っています。いろいろな人材を引き込んで、一国史ではなく地域史のセンターとして、日本の果たす役割を大きくしていきたい」
巨大な官僚国家にして社会主义国である中国には、膨大な资料が保管されている反面、时期や政情によって情报开示や协力体制には波があり、翻弄されることも多い。
「こういう経験が私なりの『中国観』を得るきっかけにもなっていて、イヤな目に遭うことも面白いんですよ」と笑う。
食べたり饮んだり料理をすることが大好きな城山は、中国の云南省?四川省とチベット、ミャンマー、ネパール、インドをつなぐ茶の交易路として知られる「茶马古道」巡りなど、リタイア后はお茶と食の旅に出るのが梦らしい。
研究も含めて「好きなことをやるためには死ぬまで健康でいないとダメ」と、运动は大の苦手といいながら、最近はジム通いにもいそしんでいる。
取材?文/加藤由纪子、撮影/今村拓马
香港で手に入れた中国の伝统的な茶器「盖碗」(がいわん)。お茶好きを公言している城山の下にはさまざまな茶が集まってくるらしく、研究室にも馥郁とした茶の香りが漂っていた
精一杯やったら、运を天に任せて、その结果を待つ。戦前の中国に驻在した外交官や银行员を出した家に生まれ、経済学者でもあった母が大事にしていた言叶を、いつの间にか自らも受け継いでいる
城山智子(しろやま?ともこ)
東京大学文学部卒業(1988年)。ハーバード大学大学院歴史学部博士課程修了(Ph. D., History, 1999)。北海道大学文学部助教授、一橋大学大学院経済学研究科准教授、同教授を経て、2014年4月より現職。専門は、中国?アジア経済史。主著のChina during the Great Depression: Market, State, and the World Economy, 1929-1937は、中国语、日本语でも出版された。中国と世界経済との関係に関する个人研究と并行して、「近代アジアにおける水圏と社会経済-データベースと空间解析による新しい地域史の探求」というグループ?プロジェクトで、モンスーン気候下での水をめぐる问题の比较研究を行っている。
取材日: 2017年12月13日