普遍的な「保育の质」を求めて。 | UTOKYO VOICES 021
大学院教育学研究科 発達保育実践政策学センター 准教授 野澤祥子
普遍的な「保育の质」を求めて。
待机児童问题が话题になる中、子どもの発达や保育、教育をどのように政策に反映させていくか、という研究を行っているのが、発达保育実践政策学センター(颁贰顿贰笔)だ。野泽はこの颁贰顿贰笔で2016年から准教授を务めている。
「いたって普通の子どもだった」と自らを语る野泽だが、『大草原の小さな家』『赤毛のアン』など、人の一生を追ったストーリーに梦中になった记忆があり、「今、思えば、その顷から人格形成というものに兴味があったのかもしれない」と笑う。
「先生になりたかったけど、向いている気はしなかった」という野泽は、东大教育学部在学中、教育にもいろいろなアプローチがあることに気づき、発达心理学を専攻。游びや喧哗を通して他者との葛藤やコミュニケーションを経験し、社会的な调整力を获得していくこの时期は、言叶も含め重要な発达段阶に当たる。野泽は保育园に週1回のペースで1年间通い、ビデオを回しながら园児を観察、子どもたちが互いに与え合う影响を记録した。まだ过渡期にあるジャンルで消化不良が続く中、博士课程に进むも博士论文は出さず、复数の大学で非常勤讲师を务めながら出口を探した。
そんな折、アメリカの大学に留学する夫に同行したことが、思いがけない転机となる。现地で出产し、勤めを持たず子育てに注力できたことで、「1歳児クラス(2歳前后)における子ども同士のやり取りの発达过程」というテーマで博士论文を执笔した。
この博士论文が评価され、帰国后は东京家政学院大学准教授となり、ほどなく颁贰顿贰笔への参加が决まった。
「アメリカで子育てしたことにより、主体性?自発性を第一に重んじるアメリカとは异なり、周囲との和を大切にし『空気を読む』のが日本の特徴だということを身をもって実感しました。こういう日本的な価値観も生かしながら、変化の激しい世界で日本人が力を発挥できるよう、発达のメカニズムを理解した上で効果的な保育?幼児教育を构筑し、政策に还元していかなければなりません」
现状、日本ならではのデータは乏しく、颁贰顿贰笔がそれらを蓄积し、エビデンスをつくっていく必要がある。颁贰顿贰笔では情报理工学とのコラボにより、滨辞罢カメラと础滨技术で自动的に子どもの动きや表情を认识/データ化するとともに、温度や明るさなどの环境をセンシングし子どもに与える影响を分析する取り组みも进行中だ。
一方で、亲や保育者の主観も重要だと野泽は强调する。人の目や主観を通して「质」を、テクノロジーを通して「量」を把握し、多面的に评価していくことにより、保育の质がより良くなるよう、子どもや保育者が「その人らしくあることのできる在り方」の条件を探している。
何が成果や成功なのか、国や时代によっても异なるが、それでも子どもが梦中になる游びや心地よいと感じる环境など、「普遍的な保育の质」というものはあるはず。そういうものを抽出することで、「ちゃんと働いて、ちゃんと休んで、ちゃんと子育てができる社会になってほしい」、それが野泽の究极の愿いだ。そのためにも颁贰顿贰笔の存在意义を世の中にアピールし、长く存続させていくことが肝要だと考えている。
取材?文/加藤由纪子、撮影/今村拓马
现场で子どもの行动を见るのが何より好きだという野泽。デジカメは日々のフィールドワークに必携のアイテム。研究の键を握る大事なパートナーだ
保育には学际的な研究が必要であり、皆で保育のことを考えなくてはならない、という意味合いから。センターから出ている书籍『あらゆる学问は保育につながる―発达保育実践政策学の挑戦』(东京大学出版会)からの引用
野泽祥子(のざわ?さちこ)
2010年东京大学大学院教育学研究科博士课程単位取得退学。13年博士(教育学、东京大学)。东京家政学院大学准教授を経て、16年より东京大学大学院教育学研究科附属発达保育実践政策学センター准教授。専攻は発达心理学?保育学。着书に『家庭支援论』(ミネルヴァ书房、2016年、共着)、『歩行开始期の仲间関係における自己主张の発达过程に関する研究』(风间书房、2017年)など。
取材日: 2017年12月4日