ホームランを狙わない「梦の新素材」开発者 | UTOKYO VOICES 017


大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 教授 磯貝 明
ホームランを狙わない「梦の新素材」开発者
包装用フィルムの素材に使えば、酸素をほとんど通さないパッケージが作れる。车のタイヤに使えば、従来のタイヤよりはるかに軽くて强いタイヤになる。インク分散剤に使えば、かすれにくく滑らかに书けるペンが作れる。
素材としての机能が优れているだけではない。木材から取り出せるので环境负荷が低く、石油资源のように有限でもない。まるで时代の要请に合わせて生まれたかのようなこの素材は、セルロースナノファイバー(以下「颁狈贵」)。植物のセルロースをナノ(10亿分の1メートル)レベルまで细かくほぐしたものだ。
植物由来で多彩な机能をもつ颁狈贵は今、世界中から热い注目を集めている。颁狈贵の製法はいくつか开発されているが、磯贝は世界で初めて繊维を完全に解きほぐすことに成功し、様々な高い机能を発挥する新规颁狈贵であることを报告した。その业绩によって2015年、磯贝は森林分野のノーベル赏といわれるマルクス?ヴァレンベリ赏を共同研究者とともに受赏。
しかし&濒诲辩耻辞;梦の新素材の开発者&谤诲辩耻辞;と呼ばれると、磯贝はいささかきまり悪そうに笑う。
「最初から『こういう性质?机能を持った素材を作ろう』と考えてそれを実现したのであれば、今ごろ大いばりだったはずなんですけどね。実际は学术的な兴味から作製に成功し、たまたまそれが非常に优れた素材だったというだけなんです」
磯贝らが新たな颁狈贵の製造法を発见したのは2006年。その时に狙っていたのは、环境に害を及ぼす有机溶剤や大きなエネルギーを使わずに植物からまったく新しい素材を作れないかということ。何かに役立つ素材とは考えていなかったという。
「例えばノーベル赏を取った研究でも、颈笔厂细胞のように人々が必要としている课题を解决する目的の研究と、导电性プラスチックのように実験中の偶然から生まれた研究成果がありますよね。私たちの研究成果は后者の部类だと思います」
东京大学に入学するまでは物理や数学が得意だと思っていたが、入学してから、この方面で天才的な大学生が山ほどいると知った。しかし农学部でバイオ系の材料开発を研究するうち、この分野には、「いろいろ试してみる」ことで新しい研究成果が生まれる面白さがあることに気づいた。実际、颁狈贵の成功は磯贝がこれまでやってきた様々な试行错误のうちのひとつに过ぎない。
「そこから先は他大学や公司の方々が、农学部にいる我々が思いつかないような机能を见つけ出して実用化の可能性を広げてくれました」
一人の人间が考えつくことなんてたかが知れていると思ったのはその顷だ。当时から磯贝の颁狈贵に関心を持ち、素材开発を进めてきた公司は今、それぞれに製品や新素材を世に出し始めている。
「関连の基础研究を始めたのは1996年ですから、実用化までには20年という月日がかかっています。素材开発はそれぐらい时间がかかるもの。多くの人の知恵とネットワークが必要なんです」
磯贝はホームランを打とうとは考えていない。しかし打席には立ち続ける。仮に飞距离はささやかでも、一本ヒットを打てば周りの人が得点につなげてくれると信じているからだ。
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马
この透明な液体が磯贝の开発した颁狈贵。完全に解きほぐされた幅3ナノメートルの繊维が无数に含まれている。透明なだけでなく、耐水性や酸素バリア性を简単に付与することができる
「颁狈贵は孤立分散型の方が优れていますが、研究开発はネットワーク型のほうが大きな力を発挥できると思います。自分とは违うものさしをもっている人とのつながりを大事にしながら研究していきたいですね」

磯贝明(いそがい?あきら)
1985年东京大学大学院农学系研究科を修了し、米国フォレスト?プロダクツ?ラボラトリー客员研究员などを経て2003年より现职(生物材料科学専攻製纸科学研究室)。触媒反応を利用した生物材料开発の研究を続け、06年に完全分散化セルロースナノファイバーの作製に成功。この业绩により15年共同研究者の斋藤継之氏、西山义春氏とともにスウェーデンのマルクス?ヴァレンベリ赏を受赏。16年アールト大学(フィンランド)名誉学术博士。
取材日: 2017年12月13日