学歴――素直に教育の意义を问い続ける异色の研究者 | UTOKYO VOICES 004
高大接続研究开発センター 入試企画部門 教授 濱中 淳子
学歴――素直に教育の意义を问い続ける异色の研究者
教育社会学の研究者にとって、素直さは美徳にならない。最も重视されるのは现代社会と教育の问题をあぶり出す「批评的思考」だ。その点で、教育や学歴の効用を素直に肯定する滨中淳子は自身を、「研究者としては物足りないと思われる方も多いかもしれません」と语る。
大学进学率が5割を超える今、大学不要论は至るところで幅をきかせている。いわく、「この时代に学歴なんて役に立たない」。いわく、「大学で学べることなんてたかが知れている」&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。
「世间では、声の大きい人が自分の経験や自分が见た范囲の印象で言ったことがイメージとして确立してしまいます。でも、自分の进路や国の教育制度を『なんとなく』のイメージで考えるのは危ういことですよね」
滨中の研究の出発点にあるのは、社会工学者である矢野眞知が着书で记していたこと。矢野は、人の所得に影响を与える要因はさまざまあるが、そのなかで个人の努力でコントロールできるのは教育训练ぐらいしかないと指摘していた。
「その通りだ」と滨中は思った。个人がなんとかできるのは自分への教育しかない。
しかし滨中が大学院に进んだ顷すでに、世间では教育全般に対する批判の声が大きく、その内容や方法も时代遅れとされ、変革を迫られていた。しかし、そんなに今の教育はダメなものだろうか?世间の批判と自分の感覚とが一致しない。そこで滨中は教育社会学を専攻するなかで身につけた社会调査という手法を武器に、実态を调べ始めた。
「今の教育システムや学歴の欠点ばかりを见て根こそぎ変えてしまえば、良い部分も失ってしまいます。だから私は、语られていない良い部分にも光を当てたい」
批评的视点から切れ味鋭く问题を指摘する研究はたくさんある。その中で、自分が研究者として生み出せる新しいものは何か。
「教育や社会を斜めから见るのではなく、まっさらなところから议论を始める材料を提示したいですね。それには、良いところは良いと素直に评価することも大事だと思うんです」
滨中は、今の高卒と大卒の生涯赁金格差が40年前よりはるかに开いていることを指摘し、大学で意欲的に学んだ学生はその経験が卒业后のキャリア向上に寄与するという调査と分析の结果を発表。着书は教育関係者からもマスコミでも大きな注目を集めた。
「ここで言う学习経験とは知识の蓄积ではなく、问いを立て、调べ、分析し、他者に提示する活动のこと。実は私自身も学生时代は社会に対する问题意识に乏しくて、问いを立てるところでつまずいていました。でもそれを大学で学ばせてもらったんです」
民間の研究所と大学入試センターを経て、高大接続研究开発センターの入試企画部門へ。東大入試もまた、イメージで語られやすいトピックだ。
「教育のあらゆる侧面で『なんとなく』で语られるものと现実との距离をうめたい」。そう语る滨中は今、学びの価値とは何か、学歴はどのような意味を持つか、着着だけでなく讲演を通じて人々に直接语りかけ始めている。
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马
2006年、论文执笔で长时间座り続けたためにヘルニアを発症して入院。勤务先の研究所から退院祝いに何がほしいかと闻かれてこの椅子を选んだ。「その前の职场で会议用に使われていた椅子なんですが、座り心地が完璧で(笑)」
「特に目标もやりたいこともなく东大に入ったんですが、さまざまな先生に出会い、学问のしかたを教えてもらったことで今、研究者として独り立ちできている。先生方と东大と、そして『教育』に感谢しています」
滨中淳子(はまなか?じゅんこ)
東京大学大学院教育学研究科修了後、基礎学力研究開発センター特任研究員を経て、企業の現場を知る必要性を感じ、2006年リクルートワークス研究所へ。07年大学入試センターに助教として着任し17年4月より現職。単著に『検証?学歴の効用』(労働関係図書優秀賞受賞)、『「超」進学校 開成?灘の卒業生-その教育は仕事に活きるか』、共著に『教育劣位社会-教育費をめぐる世論の社会学』など。
取材日: 2017年11月14日