「自分とは何か?」という难问に生命科学から迫る| UTOKYO VOICES 002


大学院医学系研究科?機能生物学専攻?システムズ薬理学教室 教授 上田 泰己
「自分とは何か?」という难问に生命科学から迫る
まるでゼリーで作ったかのように全身が透けて见えるマウス。単に透明なだけでなく、臓器の细胞一つ一つを観察することができる。上田の研究チームが开発したマウス全身透明化技术は、世界中の医学研究者を惊かせた。
「この技术はがん细胞が転移していく様子を解析するのに役立つと期待を集めています。&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;でも、本筋の研究から偶然出てきた副产物なんですけどね」
実はこの技术、そもそもは脳を透明化するために开発したものだった。上田は脳内の时计细胞を観察し、睡眠と覚醒のタイミングがどう决まるかを探ろうとしていたのだ。
生物の睡眠や体温、血圧などの生理现象をほぼ24时间周期で制御する体内时计については、多くの科学者が様々な方向から研究を进めている。なぜ、上田は睡眠と覚醒にフォーカスしたのか。
「人间は起きている时には意识があり、寝ている时は意识がない。睡眠と覚醒を研究すると、意识とは何か、自我とは何かがわかってくるんじゃないかと」
ではそもそも意识や自我を理解したい理由は?と寻ねると、「小学生のころに抱いた疑问が出発点」という答えが戻ってきた。
ごく幼いころは谁も、自分という存在を、自分をとりかこむ世界や人々と区别してとらえたりはしない。しかしいつしか、自分が世界とは别个に存在していることに気づく。
「その时から、あれ、自分ってどこから来たんだろう、自分って何だろうと考えるようになったんです」
谁でも若い时にちらりと心をよぎる疑问かもしれない。しかしその问いはあまりにも深く果てしなく、その后もずっと真正面から追求し続けようとする人はそう多くない。
もちろん、哲学や文学、あるいはアートを通じて模索しようとする人はいるだろう。ところが上田はこの曖昧模糊とした问いに、サイエンスという道具を使って迫ろうとしている。
学生时代に物理学を背景にして生命の「时间」を调べようと思い立ち、医学部で体内时计の研究を始めた。その后、コンピュータサイエンスの研究所や製薬会社に飞び込んで大学の研究室では得难い知见と技术を身につけ、27歳の若さで理化学研究所の研究チームを率いる立场に。体内时计をめぐる长年の谜をいくつも解き明かし、つい最近もこれまでの常识を覆す画期的な発见を発表したばかりである。
「でもまだやっと、自分とは何かを问うスタートラインに立てたかな、ぐらいのところなんです」
たしかに、そもそものゴールも见定めにくく、雾の中をさまようかのような道のりにも见える。先の见えなさに不安は感じないのだろうか。
「生命科学では、先人が积み重ねた知见の上に自分たちの発见を积み重ねていけますから。求めている答えからはまだだいぶ远い地点にいるけれど、一つ一つ梯子をかけることで、わずかずつながらも近づいていっている実感はあるように思いますね」
旅路の果てしなさと同时に足元の确かさに目を向け、上田は根源的な问いに科学で迫ろうとしている。梯子は、意外に早く雾の晴れ间に到达するかもしれない。
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马
「これと言ってお気に入りのグッズと呼べるものはないんですよね&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。常に持ち歩いているものといえばノートパソコンぐらいで」と、荷物の詰まったバッグから淡いシャンパンゴールドの笔颁を取り出した
「高校生の顷はとりわけ物理学に魅かれていました。物理学は时间を扱う学问ですから、ならば『生物の时间』を切り口にして、自分とは何か、生命とは何かという疑问に迫ってみようと思いついたんです」

上田 泰己(うえだ?ひろき)
1994年に东京大学に入学し医学部へ。学部生の时からソニーコンピュータサイエンス研究所と山之内製薬で研究に従事。大学院医学系研究科在学中に理化学研究所のシステムバイオロジー研究チームリーダーに就任。以降、体内时计の研究グループを率いて、システム生物学?合成生物学の分野で世界をリードする成果を挙げ続けている。2013年より东京大学医学系研究科机能生物学専攻システム薬理学教室教授。
取材日: 2017年11月9日