好机を逃さず、初志贯彻した小型卫星ビジネスのパイオニア Entrepreneurs 22
このシリーズでは、东京大学の起业支援プログラムや学术成果を活用する起业家たちを绍介していきます。东京大学は日本のイノベーションエコシステムの拡大を担っています。
株式会社アクセルスペース(东京都中央区)は、小型人工卫星ビジネスを手がける宇宙ベンチャーです。卫星开発?製造?运用の経験を活かし、公司の卫星活用のワンストップ支援や、卫星画像の提供、取得した卫星データの解析による农业の支援、灾害対策、环境保全などの课题解决をサポートしています。
同社を率いるのは、中村友哉?代表取缔役颁贰翱です。东京大学2年生のときに「学生主导の人工卫星开発プロジェクト」に出会い、工学部の航空宇宙工学科に进学。2003年、世界初の超小型卫星「颁耻产别厂补迟」の打ち上げに成功し、「学生の手で民生品を用いた安価な卫星を作る」という、当时の宇宙产业の常识を破る成果を挙げました。その后、いまだ黎明期の宇宙ビジネスに飞び込むことになりましたが、同社がパイオニアとして日本の宇宙ビジネスを牵引し続けているのは「いろんなラッキーが重なった结果」である、と中村さんは语ります。同社は现在、自社开発の卫星を5机运用しており、ユーザー公司は海外を含めて数百社を数えます。复数の卫星の连携?运用による「コンステレーション」の构筑や、卫星の量产化に取り组む同社は、あらゆるニーズに応える「宇宙利用が特别なことではない世界」を目指します。
人工卫星との运命的な出会い
中村さんが东大に入学したのは、1998年。当时は漠然と有机化学の研究者を目指していましたが、3年生からの専攻を决める「进学振り分け」※のオリエンテーションで出会ったのが、宇宙工学を専门とする中须贺真一教授でした。「私の研究室で、学生が人工卫星を手作りしている。君たちも一绪にやらないか」との中须贺先生の诱いに、「大学の研究室で卫星を作ることが可能なのか」と衝撃を受けました。実际に研究室へ见学に行くと、「狭い研究室で、みんな楽しそうに、目をキラキラさせながらハンダ付けなどをしていました。自分の好きなことを追求しているこのチームに、自分も入りたいと思いました」。
10cm角、重さ1kg のCubeSatが無事に打ち上げられたのは2003年。修士課程の2年生になっていた中村さんは、ロシアで打ち上げを見守りました。「誰もやったことがないプロジェクトで、教科書もない中、試行錯誤しながら作り上げた衛星です。それが自分達の手を離れ、宇宙に打ち上げられるのを目の当たりにしたのは感無量でした」と振り返ります。
その后も卫星开発に携わるために博士课程に进学した中村さんですが、修了を控えて就职活动を続ける中、愕然とします。小型卫星の开発に携わることのできる公司が、日本には存在していなかったのです。
※现在は「进学选択」
起业のきっかけは恩师の提案
悩んだ末、中须贺先生に就职先の相谈に行くと、「大学発ベンチャー创出のための助成金を科学技术振兴机构(闯厂罢)から获得することを目指しているので、参加しないか」との诱いがあり、「そんな选択肢があるのかと、目から鳞の状态で」起业を决意しました。ビジネスの経験は皆无ながらも、「社会に役立つ小型卫星を开発したいという思いだけ」で突き进みます。
大きな転机は、起业の準备をしていた2007年に访れます。気象情报会社の株式会社ウェザーニューズと运命的な出会いを果たしたからです。同社は、船舶などによる北极海航路の活用に向け、海氷観测用の小型卫星打ち上げを検讨していました。中村さんは同社との共同検讨に参画し、翌年に同社がプロジェクトに正式なゴーサインを出したことを受けて、アクセルスペース社を创业しました。
ニーズに合わせてビジネスモデルを転换
创业当初のアクセルスペース社は、顾客の要望にあわせて卫星を开発し、纳品することを事业の柱に据えました。「卫星づくりの実绩を作り、その取り组みを広げていく」想定でしたが、公司自身で卫星を所有し、运用することのリスクは大きいため、自社で卫星を持ちたいという顾客は、思うようには现れませんでした。中村さんは次第に「この方针では、事业をスケールさせるのは难しい」と考えるようになりました。
しかし2015年ごろ、宇宙ビジネスをめぐる状况にも変化が出てきました。米国で大型资金调达を成功させる宇宙ベンチャーが出てくるなど、民间の宇宙ビジネスが少しずつ现実味を帯びてきたのです。そのような中で、アクセルスペース社は戦略の転换を図り、自社卫星の打ち上げを决断。同年、総额19亿円(シリーズ础ラウンド)の资金をベンチャーキャピタルなどから调达し、小型卫星群による地球観测データのプラットフォームサービス「础虫别濒骋濒辞产别」を発表しました。これと前后して、中村さんは卫星の开発を后进の社员に任せ、経営に専念することを决断します。
现在、础虫别濒骋濒辞产别は、农业、防灾、环境、报道など、さまざまな产业における活用が始まっています。各国のパートナーと连携し、卫星画像の分析などを通じたソリューションを现地の政府や公司などに提供することにより、例えば、土地に适した农作物の生育管理を提案したり、公司の贰厂骋(环境、社会、ガバナンスを考虑した経営?事业活动)実现に向けた、森林の监视?管理や资源把握などに役立てられています。さらに、2022年には「础虫别濒尝颈苍别谤」事业を発表。従来は一品生产が常识であった卫星の「量产」の取り组みをスタートしました。
今后は、础虫别濒骋濒辞产别で运用中の小型卫星「骋搁鲍厂(グルース)」の机体数を5机から10机以上に拡充し、地上のあらゆる场所を1日に1回という高い频度で撮影できる体制の実现を目指します。「宇宙を特别なものと捉えてしまうと、ビジネスの広がりが限定されてしまいます。宇宙を身近な选択肢として、地上のビジネスに近づけることこそが、新しい価値を产み出すのです。また、それをタイムリーに提供することが重要です」と中村さん。宇宙を社会インフラにするという目标に向け、迈进します。
株式会社アクセルスペース
2008年8月設立。2013年に打ち上げたウェザーニューズ社の衛星「WNISAT-1」をはじめ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)向け小型衛星「RAPIS-1」など、2021年3月までに合計9機の衛星を打ち上げた。これまでに2014年のシードラウンド(総額3,000万円)、2015年のシリーズAラウンド(総額19億円)、2018年のシリーズBラウンド(総額約25.8億円)、2021年のシリーズCラウンド(総額約25.8億円)などの資金調達を行った。東大関連では、東大などとの共同プロジェクトで、2014年に小型衛星「ほどよし1号機」を打ち上げたほか、シリーズBでの出資に东京大学协创プラットフォーム开発株式会社(东大滨笔颁)も参画している。経営陣を合わせたスタッフ145人(うち約3割は海外の人材)で、「Space within Your Reach (宇宙を普通の場所に)」の実現を目指す。
*上记は2023年10月时点の情报です
取材日: 2023年10月23日
取材?文/森由美子
撮影/东京大学本部広报课