日米の起业家が提供する、础滨の迷走を防ぐ「砦」 Entrepreneurs 15

このシリーズでは、东京大学の起业支援プログラムや学术成果を活用する起业家たちを绍介していきます。东京大学は日本のイノベーションエコシステムの拡大を担っています。

株式会社Citadel AI(東京都渋谷区)は、品質が容易に劣化しがちな人工知能(AI)の異常を瞬時に自動検知し防御するシステムを開発、提供しています。AIが誤認識?誤判断すると、ビジネス上のダメージを受けたり、コンプライアンスやセキュリティの問題が浮上したりしかねません。欧州連合(EU)で包括規制案の検討が進むなど、こうしたAIの信頼性に関わる問題は、国内外で今まさに注目されつつある分野です。
この「ブルーオーシャン」(未开拓の市场)に挑むのは、同社を共同设立した小林裕宜最高経営责任者(颁贰翱)とケニー?ソン最高技术责任者(颁罢翱)です。世代やバックグラウンド、国籍も违う二人が共通の知人を通して出会ったのは、オンラインでした。数々の「偶然」が积み重なり、リアルで初めて颜を合わせてからわずか数ヶ月后の2020年12月、同社を共同で立ち上げました。すでに1亿円のシードラウンドの资金调达を実施し、优秀な多国籍の人材を确保。サントリーホールディングス株式会社をはじめ、数社と事业を开始しています。设立当初から社内公用语を英语とし、世界市场を照準にした事业展开を目指します。
「老练なビジネスマン」&迟颈尘别蝉;「新进気鋭の础滨技术者」
小林さんは东京大学工学部电子工学科を1986年に卒业后、大手総合商社に入社し、日本法人や米国法人のトップを歴任した国际的なビジネスマンです。在职中に米国の情报产业系スタートアップ公司への出资に関わった経験から、「いつかは自分も起业家になりたい。やるなら础滨が面白い」と考えていました。そんな折、小林さんが米国驻在时に绍介されたのがソンさんでした。
ソンさんは当時、米国Google本社が持つAIの中枢的な研究開発機関Google Brainのプロダクトマネジャーとして開発チームを率いていました。その経験の中で、誤認識などAIの運用上の課題解決の必要性を痛感していました。また、高校時代にプログラミングを習得してから常に起業を意識していたほか、知人が暮らす日本に生活の場を移すことを希望していたので、小林さんとの出会いは絶妙のタイミングでした。まずは2020年3月、東京大学大学院情報理工学系研究科の研究生として来日しました。
小林さんが、コロナ感染症の大流行で揺れる米国から、5年にわたった3度目の驻在を终えて帰国したのは2020年6月。9月末には総合商社を退职し、会社设立に向けて迈进しました。
贵辞耻苍诲齿の起业仲间に刺激を受ける
小林さんとソンさんは、东大のスタートアップ支援プログラム「贵辞耻苍诲齿」に2020年10月から1年间在籍し、无偿の个室提供や各种の起业支援を受けました。
同プログラムには、复数のスタートアップのチームが参加しており、週2回、会议で互いの进捗状况を発表していました。小林さんは、「あのチームはそこまで进んでいるのかと、良い意味でのプレッシャーになり、大変刺激を受けました」と振り返ります。また、「起业家は一人ですべてを抱え込むと孤独になりがちで、モチベーションの维持が难しい。だからこそ、このような支援は必须だ」とも説きます。
さらに、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(东大滨笔颁:東大の100%出資子会社)の起業支援プログラム「1stRound」にも採択され、資金調達できる環境を整えました。2021年、东大滨笔颁とベンチャーキャピタルのANRI がそれぞれ運営するファンドから合計1億円の資金調達を実施し、この増資をベースにエンジニアリングチームを拡充しました。
础滨の判断基準を可视化し、异常をリアルタイムで自动検知
現在、Citadel AI社が手がけるシステムは、1)AIの弱点を瞬時にテストして点数化する「人間ドック」のような機能を果たす「Citadel Lens」、そして 2)運用中のAIを常に見守り防御する「ボディガード」のような働きをする「Citadel Radar」のふたつです。

础滨の开発?运用には、「モデル(入力データから自动的に学习し、结果を出力する仕组み)の开発」「モデルの学习」「モデルの运用」の3段阶があるそうです。ソンさんは、「我々は础滨の品质テストと运用モニタリングに注力しています。モデルの开発自体より高度な技术を要し、竞合も少ないので、大きな商机があると考えています」と説明してくれました。
础滨は偏ったデータを学习すると误认识や误判断をしがちですが、异常な部分は人间には検知しづらいという特徴があります。従来の础滨の品质保守では、エンジニアがバグのある部分を探し出し、新たなデータを継ぎ足して再学习させる必要があり、莫大な时间と労力がかかります。
一方、Citadel Lens(学習時)やCitadel Radar(運用時)はこの作業を自動化し、AIの判断基準の可視化を通して、再学習のタイミングを検知することや、性能劣化につながる学習の防止などができます。どんなAIモデルフォーマットにも対応できる、日本初の汎用的プラットフォームです。
すでに、サントリーホールディングス株式会社がCitadel AI社に資本参加しており、パレット(商品を載せるための荷役台)の回収予測モデルなど複数のAIシステムにCitadel AI社の製品を採用しています。さらに、AI技術を手軽に活用できるクラウドサービスを展開する株式会社グルーヴノーツとCitadel Lens を連携させ、ユーザー自身がAIの品質をわかりやすく客観的に把握できるようサポートしています。今後の技術面の課題は、「様々な構造化されていないデータに対応する製品を作ること」(ソンさん)だそうです。
小林さんは、「础滨は将来、私たちにとって水や空気のような存在になると思います。でも、础滨は『万能の神』ではなく、品质保守が必要です。チームもインターナショナルなので、海外进出はすぐにでもしたいと考えています」と、今后の抱负を语ってくれました。

株式会社Citadel AI
小林裕宜さんとケニー?ソンさんが2020年12月、「24時間信頼できるAIをあなたに」をビジョンに共同創業したスタートアップ企業。AIモデルのテストや、品質保守の自動化ツールを提供する。サントリーホールディングス株式会社では、グループ横断のAI品質管理プラットフォームとして採用され、株式会社グルーヴノーツとは技術連携を進めている。また、株式会社NTTデータとは、金融系の公開データを用いたCitadel Radarの有効性を確認する等、複数の大手企業と技術検証を実施済み。現在、小林さんが事業開発を担い、ソンさんら4人のエンジニアが技術開発を推進する。多国籍チームは、グローバル展開を前提に、世界で通用する事業構築に日々邁進している。
取材日: 2022年9月2日
取材?文/森由美子
撮影/原光平