ピボットを繰り返しながらたどり着いたロボット工学技术 Entrepreneurs 08
このシリーズでは、东京大学の起业支援プログラムや学术成果を活用する起业家たちを绍介していきます。东京大学は日本のイノベーションエコシステムの拡大を担っています。
危険と隣り合わせの建设现场にデジタルトランスフォーメーション(顿齿)革命をもたらそうと、2020年4月に设立された础搁础痴株式会社(东京都文京区)。建设机械の远隔操作や自动运転の开発に取り组むスタートアップ公司です。建设业就业者の高齢化や退职などに起因する深刻な人手不足の解消や、死亡労働灾害の3分の1を占める建设业の死伤者を大幅に削减しうる技术として、建设业界から大きな注目を集めています。
础搁础痴社を率いるのは、白久レイエス树代表取缔役です。中学时代に初めてロボットに兴味を持ち、ロボット工学技术に轴足を置きながらピボット(路线変更)を繰り返してきた、ハード、ソフト両面に长けるエンジニアでもあります。同社は、既存の建机に后付けで搭载でき、笔颁、タブレット、スマートフォンがあればどこからでも远隔操作できる机器の开発に成功。今后は油圧ショベルなど、建机の自动运転技术を确立し、建设现场の「アップデート」を目指します。
ロボットのメカにのめり込んだ学生时代
冲縄出身の白久さんは、中学生の顷に「高専ロボコン」をテレビ番组で知り、「自分も出场したい」と冲縄工业高等専门学校に入学。4年の时に「二足?多足歩行ロボット」のテーマで、悲愿の优胜を果たしました。その后、高専の専攻科で行った海洋ロボットの研究を続けるため、东京大学新领域创成科学研究科の修士课程に进学しました。所属したのが巻俊宏准教授の研究室で、ロボットを海底に潜らせ、海底の撮影やサンプル採集を行い、実际に海底にどのくらいの资源があるかを把握するのがミッションだったそうです。
それと同时并行で取り组んだのが、「外骨格ロボットスーツ」と呼ばれる、人が乗り込んで动くとその动きが拡大されて动く、高さ3メートルにもなるエンターテインメントロボットです。実际にテーマパークなどから受注したこともあり、修士课程2年の2013年10月に、スケルトニクス株式会社を仲间と立ち上げました。
「ベンチャー」を学びにシリコンバレーに
しかし、やがて会社の方向性をめぐって仲间との违いが埋め难くなり、2016年春に同社を辞め、大手自动车メーカーに就职することに。海洋ロボットを手がけた経験が买われ、自动运転を开発する部署に配属されました。そこで知ったのがイスラエルのベンチャー公司、モービルアイ(现インテル社の子会社)の存在です。まさに衝撃的でした。「大公司と対等に仕事ができるベンチャーでした。一度はベンチャーを辞めましたが、ベンチャー侧でチャレンジしたいという思いがだんだん涌いてきました」。1年5か月在籍した自动车メーカーを辞め、「スタートアップとは何ぞや」を探るためにシリコンバレーに渡り、会社も设立しました。
白久さんが取り组んだのは、乗用车の后尘を拝する、トラックの自动运転技术の开発です。「カメラから情报が入ってきて、车両が动く。そのすべての技术を一人で开発するというのはチャレンジでした」と振り返ります。トラックと构造が比较的酷似している油圧パワステ方式の中古乗用车を购入し、外付け自动运転机器を搭载し、90キロで自动走行する実験を行っていましたが、ビジネス化は难航しました。そんな折、白久さんの厂狈厂発信を见た日本の建设业関係者から「手伝ってほしい」と、予期せぬ相谈が舞い込みました。太平洋をまたいでウェブ会议を続けるうち、「建机の方が需要はある」と确信したそうです。というのも、トラックは公道を走行するため、絶対的な安全性を确立しなければなりません。一方、建机は私有地に限って走行を许されているため、ハードルがかなり低いからです。2年间の米国滞在予定を半年ほど早く切り上げ、帰国の途につきました。
支援を受けて本格的なベンチャーを设立
帰国後、東京大学のエコシステムから潤沢な支援を受け設立したのが、ARAVです。スケルトニクス時代にも東大の产学协创推进本部が提供する起業支援を受けたものの、自己資金でスモールビジネスとしてスタートしたことが悔やまれていました。そこで同本部の恩師からアドバイスを受け、東京大学?大学院の卒業生?研究者向けの「Found X」という起業支援プログラムに入ったほか、スタートアップとしての様々な事業化?資金調達支援を受けたり、本郷キャンパス南研究棟にあるアントレプレナーラボに入居したりしました。
起业后は、建机メーカーや建设会社と共同実証実験を行い、1000キロ离れた场所からリアルタイムでクローラーや油圧ショベルを操作することに成功しています。2020年11月には、同社の草刈り机の远隔操作技术が、国土交通省から「建设现场の生产性を向上する革新的技术」に选定されています。
建機の自動運転は、伊藤忠T C建機株式会社など10数社と研究開発が進行中です。様々な相談が企業から寄せられていますが、日本の建設現場でよく見かける、油圧ショベルの自動運転技術の確立を最優先で進める意向です。
「社内の作业は淡々としていますが、やるべきことは决まっています。明确に困っている公司がありますので、时间はかかりますが、とにかく课题解决になる机器を作っていきたい」。白久さんは明确な方向性を见出し、开発に迈进しています。
础搁础痴株式会社
代表取締役の白久レイエス樹氏が立ち上げた3社目の会社で、建機の遠隔操作、自動運転の研究開発を行う。2020年4月に設立。社名は、Architectural Robust Autonomous Vehicles (建設向けの頑強な自動運転車)の頭文字を取って付けた。东大滨笔颁の「1stRound」プログラムに採択され、人材採用や提携先紹介などの支援を受けたほか、2021年には、同社から6300万円の出資を受ける。現在は、副業で参加するエンジニア含めた十数人の体制で開発を進めているが、量産化準備に向けて人材採用を強化する予定。更なるDX革命の提供を目指す。(写真はシリコンバレー滞在中の白久さん。滞在中に訪れたゴールデンブリッジ近くで)
取材日: 2021年10月14日
取材?文/森由美子
撮影/原恵美子