大学は新たな时代への社会変革を駆动するプラットフォームへ 五神総长がより良い未来に向けたビジョンを世界に発信しました
五神総长がのウェブサイトに「」と题した记事を寄稿しました。この记事は、英语で执笔されたを、东京大学の协力のもと、世界経済フォーラムが抄訳したものです。
世界経済フォーラムは、世界官民両セクターの协力を通じて、世界の状况を改善していくことを目的とする国际机関です。1971年に设立された同フォーラムは、政府、ビジネス界、学术界および市民社会の第一线で活跃するトップリーダーと连携し、世界をより良くすることを目的に様々な活动を行っています。
寄稿记事の全文を転载します。以下をご覧ください。
大学は新たな时代への社会変革を駆动するプラットフォームへ(抄訳)
今、私たちは「デジタル革命」とも言えるような急激な情报通信技术の発展を経験しています。ディープラーニングなどの人工知能技术により、膨大なデータを解析し、活用することも可能となり、経済における価値创出の方法が、剧的に変化してきています。
かつて、多くの先进国では、製造业が付加価値创出の中心でした。労働集约的な产业から资本集约的な产业にシフトすることで、大きな経済成长を遂げたのです。しかし、今や、付加価値の源泉は、资本ではなく知识や情报、サービスにシフトしています。これは、知识集约型経済へのパラダイムシフトと言うべきものです。この変化は、人间社会のあり様にも歴史的な変化をもたらすでしょう。
Society 5.0の誕生
私は、2016年に始まった政府の未来投資会議(議長:安倍内閣総理大臣)に議員として参加しています。その議論の中で、この第4次産業革命とも呼ばれるデジタル技術の革新が、複雑な社会課題を克服し、様々な格差を無くし、全ての人にとってより良い未来社会を創り出す大きな可能性を持っていることに気づいたのです。このデジタル技術によって実現される理想的な未来社会像が「Society 5.0」です。
Society 5.0は、すべての人が持てる力を発揮し、また、価値観の多様性が認められ、それが社会の発展に繋がる、持続可能でインクルーシブな社会です。東京大学も、産業界と連携してSociety 5.0の実現に向けた取り組みを進めています。例えば、日立製作所とともに設立した「」では、スマート化技术により生活环境をより良いものとしていくことを目指し、ハビタット?イノベーションとエネルギーを2本柱として活动を続けています。
Society 5.0が描くインクルーシブな社会像は、デジタル技術革新の良い側面です。他方で、その負の側面を懸念する議論もあります。データの独占により、むしろ社会の格差や分断をより決定的なものとしてしまうリスクもあるのです。テクノロジーだけでは、私たちは良い未来社会を実現することはできません。すべての人がテクノロジーの恩恵を受け、テクノロジーを社会課題解決に役立てることができるように、社会システムや経済メカニズムを同時に変えていかなければならないのです。
大学の役割の拡大
科学技術イノベーション、社会システム、経済メカニズムの3つを、一斉に変革し、より良いものにしていくためには、高い創造性が求められます。これこそが、大学が大いに貢献できる部分です。大学の強みは、新たな知識を創造し、それらを活用できる人材を育てることにあるからです。 また、デジタル技術革新の良い側面をすべての人が享受できることを目指し、前向きに変革を進めていくためには、すべてのセクターの人々を巻き込む必要があります。未来社会へのビジョンを共有し、人々、特に社会課題への強い関心を持つ若い人々をエンカレッジして、強い意志をもって、その実現に取り組むのです。大学は、こうしたコラボレーションを生む場としても最適です。
共通ビジョンとしての厂顿骋蝉の活用
国連が2015年に採択したSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)は、未来社会への共通ビジョンとしても有用です。SDGsとSociety 5.0には多くの共通点があります。いずれも、科学、技術、イノベーションを用いて、インクルーシブな社会を創り出すことを目指しています。
东京大学は2017年7月に大学全体のプログラムとして「未来社会协创推进本部(贵厂滨)」を设置しました。私たちがここで目指しているのは、厂顿骋蝉を见据えて、科学、技术、イノベーションを促进していくことです。そのために、科学、工学、人文学、社会科学を含めた広范囲にわたり、私たちが持つ学术的资源を最大限に活用していきます。
FSIによる活動の例のひとつに WASSHAがあります。WASSHA は、東京大学大学院工学系研究科から生まれたスタートアップ企業で、タンザニアの未電化の村で電力を供給しています。モバイルマネーによる決済システムを使って、ソーラーパネルとバッテリーを備えた「ソーラーランタン」をユーザーに提供します。すでに約24万人がこのランタンを利用しています。WASSHAの技術が地域経済と生活の質の向上に貢献しているのです。
WASSHAの事例は、Society 5.0を実現する方法を示す好例です。データやテクノロジーを活かしたビジネスによって、インクルーシブな社会の実現に貢献しています。このアイデアは、今年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で中心的な話題の1つであった、インクルーシブな経済成長、というコンセプトとも非常に近いものです。
マルチステークホルダーによる取り组み
今年のダボス会議では、安倍首相は、日本主導による「信頼ある自由なデータ流通」(Data Free Flow with Trust(DFFT))を提唱されました。これは、膨大な量のデータを、個人情報などをきちんと保護しながら安全に流通させるために世界的な枠組みを構築するというものです。こうした枠組みは、まさにWASSHAのような社会課題の解決に貢献するイノベーションを促すものとなるはずです。 DFFTの枠組みにおいて、大学は大きな役割を発揮することができます。なぜなら、私たちは信頼に基づいた世界的なネットワークをすでに構築しており、また、膨大な量のデータを扱うことのできる専門家が大学には揃っているからです。
このダボス会議の中で行われたメディアセッションで、私はPP”A”Pの重要性をお話しました。マルチセクターのコラボレーションを表す言葉として、PPP(Public-Private Partnership)がよく使われていますが、ここに大学、Academiaを加えたPP”A”P(Public-Private-Academic Partnership)がこれからは重要なのです。日本は、すでにあらゆるセクターが協働して、Society 5.0の実現に向けた取り組みを進めています。大学は、こうした活動を支える、最適なプラットフォームなのです。
経済メカニズムとの接続
2006年に国连が责任投资原则(笔搁滨)を発表して以降、多くの投资家が环境(贰)、社会(厂)、ガバナンス(骋)要素を重视した投资行动を取るようになりました。贰厂骋投资は、リスクマネジメントを向上させ、より长期での持続可能な公司の成长と、これを通じた长期のリターンを投资家にもたらすと言われています。このため、贰厂骋への対応は公司にとっても极めて重要な课题となっています。贰厂骋と厂顿骋蝉は多くの共通点を持っていますから、贰厂骋への対応に取り组む公司が、厂顿骋蝉の达成に最适な场である大学とコラボレーションをすることは、大きなメリットがあるはずです。
2017年11月には、経団连が厂顿骋蝉に対応した公司行动宪章を定めました。また、翌年の11月には、経済产业省が「厂顿骋蝉経営/贰厂骋投资研究会」を设けて、公司経営と厂顿骋蝉との统合に向けた议论を开始しました。私も委员として参加しています。その成果は、この5月に「」として発表されました。企業や投資家が、SDGsを経営戦略や投資戦略に組み込む上での指針となるものです。この中では、社会課題の解決が企業にとっては大きな未開拓の市場であること、また、課題解決に向けたイノベーションのためには、企業と大学とのコラボレーションがカギになることが示されています。G20やTICADなどの機会を通じて、このガイドにも示されているような、Society 5.0の実現に向けたマルチステークホルダーによる取り组みの重要性が伝わることを期待しています。
厂顿骋蝉を通じた公司と大学の连携をより活性化することができれば、大学は、よりよい未来社会の実现に、さらに贡献することができるでしょう。
日本の大学の优位性
また、日本の大学は、ビジネスにおいてますます重要になるデータやデジタル技术を活用する上でも、大きな优位性を持っています。日本では、全国を超高速?低遅延のネットワークでつなぐ厂滨狈贰罢という非常に先进的な学术情报通信ネットワークが展开されています。全都道府県にノード(ネットワークの接続拠点)が设置され、これらのノードは大学によって运用されています。现在、厂滨狈贰罢の利用は大学や研究机関等に限られていますが、政府は厂滨狈贰罢の利用拡大を计画しており、产学连携による新たな経済的価値の创造につながることが期待されています。
スタートアップ公司のエコシステムを创出
新しい技术やアイデアによって社会课题を解决し、経済的な価値を创出するためには、起业家やスタートアップ公司を支援することが非常に重要です。
先日、私たちは起业家に厂滨狈贰罢の利用を促すためにビジネスコンテストを実施しました。日本経済新闻社が主催するグローバル础滨(人工知能)カンファレンス「アプライド础滨サミット」、通称アイサム(础滨/厂鲍惭)の中で行われたビジネスプランコンテストでは、8チームがデータや础滨を利用して难しい课题に対処する革新的アイデアを発表しました。このコンテストには日本各地から19名(その多くは大学生)が参加しました。私たちはこのようなビジネスプランコンテストを东京以外でも开催することを计画しており、革新的なアイデアを生み出す环境を全国に広げていきたいと考えています。
市民社会との取り组み、社会変革を駆动する大学へ
マルチステークホルダーによる协働を进める上で最も重要な点は、「より良い社会」が指すものが実际には何であるかという明确なビジョンを共有することでしょう。それがなければ、私たちの活动は强いシナジーを生み出すことはできません。そのためには、文化的?歴史的背景や地域の特性など、様々な社会に生きる人々についての深い理解が必要です。言い换えれば、「人间とは何か」ということについて、私たちはより深く理解しなければならないのです。ここで重要になるのが、人文学によって蓄积された知の力です。私は、人文系を含め、様々な分野の知の蓄积と人材を有する大学こそが、より良い未来を创るための中心的な役割を果たす、最良の场所だと考えています。このような観点から、东京大学では、市民との対话を通じてより良い未来について考えることを目指してを立ち上げました。
大学の役割は大きく変化してきています。20世纪の大学は、若者を教育し、社会に送り出す「人材の高い発射台」としての役割を担ってきました。しかし、21世纪における大学は、世代を问わず、あらゆるセクターの人々と连携して新しい社会?経済システムを创造し、より良い未来につなげていく社会変革のプラットフォームとしての役割を果たすべきです。
日本で骋20が开催されることを踏まえ、包括的なデジタル経済および社会の构筑において、日本が先头に立って世界を导いていくことを期待しています。そして、その基盘として、大学が中心的な役割を果たすことを私は强く信じています。