総长メッセージ ー「未来构想ビヨンド2020」の策定に向けてー
「未来构想ビヨンド2020」の策定に向けて
ご存じのように、现在、东京大学は长期债券を発行する準备を进めており、债券の购入を検讨している投资家やこれまで支援を顶いている寄付者など、社会に拡がる多様なステークホルダーの方々に対し、债券発行の目的と意义を説明しているところです。この説明は学内の构成员の皆さんとも共有すべきものであり、またこれから东京大学が作成する「未来构想ビヨンド2020」のとりまとめとも深く関わっています。そこで、いま私の考えをお伝えしておくことにしました。これからまとめる「未来构想ビヨンド2020」の主要な柱としては、「グローバルな公共性を豊かにする大学の机能の拡张」「社会の変革を駆动する人材育成と卓越した研究」及び「场としての大学の充実と拡张」の3つを立てる方向を考えています。具体的な构想の策定は、近く决定する次期総长予定者とともに、全学の皆さんとの议论をふまえて行っていく予定です。
大学による长期债券の発行は东京大学だけでなく、日本の社会が未来への新しい第一歩を踏み出す契机になると感じています。债券発行に际し今、东京大学はいかなる未来を目指すべきなのでしょうか。この提案は、长期债券発行によって得られる偿还期限の2060年までの时间を活用し、未来の大学と社会の変革の望ましい方向性をともに考え、新たな行动计画を协创し共有するためのものです。
振りかえれば私が総长に就任してからのこの5年余りの间、われわれはさまざまな局面で予测していなかった大きな変化を経験しました。世界では国际纷争の复雑化、资源问题?环境问题の深刻化、格差や不平等の拡大、さらには国民や世界の分断等の进行が日々语られるなど、人类の理想に逆行する动きに満ちています。さらに颁翱痴滨顿-19の拡大は、人と人との触れあいや対面的なコミュニケーションそれ自体にまで制限を及ぼすような状况を强いています。大学もその苛烈な影响を受け、キャンパス内外での活动を规制せざるをえない事态に直面しています。しかし、こうした苦境は、既存のシステムの危机であると同时に、そこに潜む问题点を自覚し、より良い形での解决を探り、乗りこえていく変革のチャンスでもあります。
私は総长就任に际し、「変革を駆动する大学」という理念を中心に据え、「东京大学ビジョン2020」を行动指针に掲げました。このビジョンの実现には、まず大学が主体的能动的に社会に働きかける、自立した経営体とならなければなりません。そのための改革を进め、「知の协创の世界拠点」の构筑と「知のプロフェッショナルの育成」に取り组んできました。今回の东京大学贵厂滨债と名付けた债券の発行は、この取り组みを一层充実させていくための手段であると同时に、东京大学の未来に向けた决意表明でもあります。
そこで、「自立」と「経営」が大学において持つべき真の意味について、対外的にも学内的にも今あらためて再確認し、明確に定義しておく必要があると感じています。というのも、ここでいう自立も経営も、既存の営利法人や公共団体を前提とした市場メカニズムの理解によって、かなり狭められていると感じるからです。そのことばの持つ本来の可能性がうまく伝わらず、大学に固有の課題を明確に指し示すものとなっていないのです。まさに、この基本において、「ビヨンド 2020」に向けたパラダイムシフトが必要なのです。
「未来构想ビヨンド2020」では、东京大学を支える「自立」と「経営」の真の意味を、再定义する必要があります。大学が、知识にせよ技术にせよ、无の状态から有を生みだすイノベーティブな场であり、その创造を支える组织であるという本质は変わりません。この原点を确认した上で、あるべき方向性を构想する必要があります。
第1に、すでに述べたような现代社会と地球环境の大きな変动への対処には、过去の教材には书かれていない、新しい知恵が必要です。その知恵の协创を力强く担う知のプロフェッショナルの育成こそが、大学が担うべき公共财としての本分であり、ますます重要になっています。
この大きな変动の背后には、资本集约型社会から知识集约型社会への転换があり、同时に资源?エネルギーの大量消费を前提とした产业社会から、持続可能な开発目标(厂顿骋蝉)を意识した新しい社会への転辙があります。また地域间の格差や孤立を看过することで中央集権が强まっていく倾向は、国内的にもグローバルにも克服されなければなりません。そうした変革を、市场原理に依存した経済メカニズムの见えざる调整や、开発独裁のような强権的なトップダウンに委ねるのは、危うい选択です。その危険を座视することは、「世界の公共性への奉仕」と「大学と社会の双方向的な连携」を宪章に掲げる大学の、自立した行动ではありません。物理空间とサイバー空间が高度に融合するなかで、地球规模のエコシステムを作りあげてコモンズを守り育て、国籍?民族?出自?地域?宗教?职业?ジェンダー?年齢?财产?障碍等による差别のない、多様性と包摂性とを尊重する社会をいかに生み出すか。そうした难しい问题に対して、大学自らが行动し、提案していくことが求められているのです。
第2に、国立大学法人に求められることになった「経営」に関しても、现代にふさわしい意味を创り出していく必要があります。既存の公司でも、知识集约型社会における経営とは何かについて真剣な议论が始まっています。知を创出する大学は、时代や国を超えて幅広い「公共」を担う责务を负っており、その责任に见合う主张をしていく必要があります。
国から毎年与えられる运営费交付金等の资金を消费するだけの受动的な「运営」からの脱却はもちろんですが、目指すべき「経営」は、知识や技术をただ商品にして稼ぐことではありません。予测不能な変动の时代で、短期?长期の时间枠それ自体も揺らぐなかで、大学の研究が有する多様で多元的な时间轴の活用は重要で、その価値を最大化する経営でなければなりません。それは疲弊した现行の货币システムでは表すことが困难な価値なのです。环境や生命や権利や知的资产などの社会的価値を测るための新たなモデルの构筑や、次世代の人的资本の创出にむけた未来投资への评価が必要です。こうした経営の再定义それ自体が、先行事例が存在しない、目标の大きな変革です。その一方で、この能动的な「経営」を支える価値の源泉は、大学の辉かしき伝统である知的好奇心や自由な発想そのものなのです。
一方で、新たな経営においては、大学が保有する多様な资产を総合的に活用する必要があります。既存の资源配分は、长年の伝统を引き継いだ结果であり、大学の机能を拡张するために修正が必要な点が多々存在します。大学债が开いた未来投资への可能性を活用し、不适切なところを修正し、组织と人材をより良い未来への駆动力として活性化させる、新たな理念と仕组みとを作りださなければなりません。
第3に、今回の债券発行に至るさまざまな努力の中で、大学が有する変革の駆动力への期待が大きく拡がってきています。この拡大する多様なステークホルダーと、ソーシャルボンドとしての新たな価値を共有することが一层重要になってきています。闭塞感が拡がる现在の経済システムを変革する新しい资金循环は、公共财を生み出す活动を担うすべての机関を取り込むシステムへの駆动力です。もちろんステークホルダーの含意にも拡张が必要でしょう。その拡がりは、より良い未来社会づくりに向けて、大学を起点に资金を动かし循环させる仕组みづくりにつながるとともに、大学の机能拡张を支える财政基盘を强化し、柔软で力强い経営を実现するうえで不可欠となるでしょう。
「大学债」は、その実行の第一歩です。大学が构筑すべき自立は、かつての政府施策の「民営化」や「法人化」の想定とはまったく异なるものです。过去や现在の観点に缚られた合理化ではなく、大学が本来どうあるべきかの望ましさから测られるべきものでなければなりません。そのために、まず大学の未来构想を明确化する必要があるのです。
この构想をめぐる熟议が、大学が真に自立した経営体となる道筋を明示するとともに、研究教育の多様性と卓越性を担う本学各部局に新たな活动の自由をひらき、东京大学の未来を照らす指针となりうることを期待しています。
东京大学総长
五神 真