表面での爆発から星の死への旅立ち 超新星爆発の点火のしくみの発见
東京大学大学院理学系研究科の姜継安大学院生、土居守教授、茂山俊和准教授らの研究グループは、アメリカ?ハワイにある口径8.2 メートルのすばる望遠鏡を用いてIa型超新星と呼ばれる星の爆発の直後に特異な現象を発見しました。さらに、解析の結果、この現象はIa型超新星爆発を起こす機構として提案されていた説の一つに対する最初の確たる証拠であることがわかりました。本研究はこの爆発機構を解明する第一歩であり、Ia型超新星を宇宙論的距離測定の標準光源として用いる精度を高めることにも役立つと期待されます。
星の中には最后に爆発して终わるものもあります。白色矮星と呼ばれる高密度の星は连星をなしているとき相手の星(伴星)から物质を得て质量を増やし自重を支える限界に达するか、あるいは伴星と合体した后に滨补型超新星爆発を起こすと考えられています。滨补型超新星は非常に明るくどれも似たような最大光度を持つことから宇宙论的な距离指标として使用されています。2011年にノーペル物理学赏が授与された宇宙の加速膨张の発见も、滨补型超新星の光度の観测によって得られた成果の有名な例です。しかし、そのような超新星爆発がどのように始まるかはわかっていません。过去数十年にわたり、いろいろな説が提案されてきましたが、観测によって検証されたものはまだありませんでした。
研究グループは、そのような検証を可能にするために爆発後数日以内のIa型超新星を捉えるべく、すばる望遠鏡に搭載された世界で最も優れた広視野カメラHyper-Suprime Cam を用いた観測を2016年に開始しました。
同年4月に超新星爆発直後のかすかな光を捉えることに成功し、観測されたIa型超新星の光度は最大光度の1%以下でした。その後、世界各地にある8つの望遠鏡の観測結果から、この超新星はIa型であるにもかかわらず、特に最初の数日間、過去に観測されたIa型超新星とは違う明るさと色の変化を示したことがわかりました。この特異な振る舞いの原因を探るために様々な理論モデルに基づいて多くの数値計算を行い、この超新星の特徴は、白色矮星表面に積もったヘリウム層でヘリウム核融合反応がまず暴走し、次にその暴走によって生じた衝撃波が星の内部に伝わり中心付近で炭素の核融合反応に点火して星全体が爆発するというシナリオ (多くの白色矮星は炭素と酸素でできている) で説明できることがわかりました。つまり、1980年代初頭に提唱されたIa型超新星の爆発機構に関する一つのシナリオが現実に宇宙で起こっていることを初めて示した確かな証拠を掴んだことになります。
「この超新星を出现直后に见つけたことにより、滨补型超新星はどのように爆発を始めるかが初めてわかり、爆発机构の解明につながると期待されます」と土居教授は话します。「さらに、滨补型超新星を用いた宇宙论的な観测の精度を高めるためにも役に立つと期待されます」と続けます。
なお、本成果は京都大学理学研究科の前田启一准教授、及び国立天文台と诸外国の研究者との共同研究により得られたものです。
论文情报
A hybrid type Ia supernova with an early flash triggered by helium-shell detonation", Nature Online Edition: 2017/10/05 (Japan time), doi:10.1038/nature23908.
论文へのリンク()