北斎の青とセルロースナノファイバーで被灾地除染へ 放射性セシウムを吸着する除染スポンジの作製に成功


今回新しく开発した除染スポンジ
この除染スポンジには、セルロースナノファイバー/プルシアンブルーがスポンジの形を基にした小部屋(セル)の中に恒久的に取り込まれています。そのため、放射性セシウムだけを除去できる强力な吸着材となっています。
© 2017 坂田?森研究室
东京大学政策ビジョン研究センターナノテクノロジーイノベーション研究ユニットの坂田一郎教授、古月文志特任教授?同大学院工学系研究科のアダヴァン?キリヤンキルビピン特任研究员らの研究チームは、葛饰北斎も使っていた人工颜料プルシアンブルーと纸の基であるセルロースナノファイバーを利用して、放射性セシウムを选択吸着する有机?无机复合型粒子の合成に成功しました。さらにそこから吸着スポンジを开発したところ、水?土の両方について、非常に高い除染効果があることが実験で実証されました。
汚染されている海水や土壌などからセシウム134、セシウム137等の放射性物質を除去するのは容易ではありません。まず、周囲に大量にある類似物質を取り除かなければなりませんが、これは大変困難な作業です。 ジャングルジムのようなコロイド構造をしたプルシアンブルー(ヘキサシアノ鉄)は、その小部屋の大きさがセシウムの分子の大きさとぴったり合い、放射性セシウムだけを吸着するので、以前から製剤として被ばく患者に処方されていました。しかし、水との相性がよく、環境へ溶け出してしまうと回収が困難なため、野外での放射性セシウム除染への適用は制限されていました。
そこで今回、研究チームは葛饰北斎の絵で使われたプルシアンブルーが雨に濡れても落ちていないことをヒントに、水に溶けないセルロース/プルシアンブルー复合型ナノ材料を开発しました。北斎は、プルシアンブルーと纸、つまりセルロースとを化学结合処理していたのです。
研究チームは、罢贰惭笔翱酸化というプロセスを経てナノ化したセルロースナノファイバーの上に、鉄(滨滨滨)イオンを固定し、そのうちのある程度の量のヘキサシアノ鉄酸塩が直径5~10ナノメートル范囲のプルシアンブルーナノ粒子に固着されるという方法でセルロースプルシアンブルー复合型ナノ材料を作製しました。このように作製したナノ材料は、きわめて耐水性が高いうえ、1グラムにつき139ミリグラムの放射性セシウムイオンを吸着することができました。
昨年から行っている福岛の土壌の除染実験では、この材料を含むスポンジに植物の种を蒔いて発芽させて、植物の根に土壌中からセシウムイオンをスポンジまで吸い上げさせる方法で、高い効果が确认されました。また、水の场合は、まずセシウムを溶出させる必要がある土と比べ、はるかに短い时间で除染が可能です。
福岛での放射性物质の漏洩事故から6年?セシウムだけを捉えることのできるセルロースナノファイバー/プルシアンブルー复合体による除染方法は、特に、既存の手法では除染が难しかった汚染の问题について新しい解决策となることが期待されます。
古月教授は语ります。「プルシアンブルーがすぐに水に溶けだしてしまいどうしようか考えている时、年月を経てもにじまない北斎の浮世絵で、和纸に蓝色が刷り込んであったのを见て、ヒントを得ました。」
「チェルノブイリ原発事故以降、セシウム除染の研究は増えましたが、学术的な内容が多く、福岛での実用には适さないものが多かった」とビピン特任研究员。「今回の研究は福岛だけではなく、セシウム除染が必要な他の场所でも、実用?产业适用できる可能性があります」と话します。
论文情报
Cellulose nanofiber backboned Prussian blue nanoparticles as powerful adsorbents for the selective elimination of radioactive cesium", Scientific Reports Online Edition: 2016/11/15 (Japan time), doi:10.1038/srep37009.
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