酵素に頼らない化学触媒を开発 がんの新たな治疗技术などにつながると期待


今回开発した触媒系の概要
生体内では酵素によって促进されるヒストンのアセチル化修饰を、今回开発した人工化学触媒システム(厂测苍颁础肠システム)は酵素に依存せずに触媒とアセチル化剤の组み合わせで人工的に行うことができる。また、アセチル化修饰を受けたヒストンは転写が促进される性质があることが知られている。
© 2017 Motomu Kanai.
东京大学大学院薬学系研究科の金井求教授、川岛茂裕特任讲师、山次健叁助教らのグループは、染色体に対してアセチル化という化学修饰を选択的に行う人工化学触媒システムを开発しました。さらに、本触媒システムを用いてヌクレオソーム(染色体の最小単位)をアセチル化することにより、遗伝子の転写を人工的に促进できる可能性が示唆されました。
ヌクレオソームは、ヒストンと呼ばれるタンパク质と顿狈础の复合体から构成されています。ヒストンは生体内の酵素によって、アセチル化に代表される种々の化学修饰を受けます。これらの化学修饰は遗伝子の転写制御に深く関与しています。特に、ヒストンのアセチル化修饰は、がん抑制遗伝子などの遗伝子の転写を促进することが知られています。
本研究グループは、顿狈础を认识してヌクレオソームに结合する触媒とアセチル化剤の组み合わせから成る人工化学触媒システムを开発することで、生体内の酵素を介さずにヒストンを人工的にアセチル化修饰することに成功しました。さらに、この人工的な化学修饰がヌクレオソームの性质を変化させ、遗伝子の転写を促进する可能性を见出しました。また、人工化学触媒システムを适切に変えることで、アセチル化に限らずマロニル化反応も进行できたことから、広く他の化学修饰への応用が示唆されました。
今后、この人工化学触媒システムは、生体内反応の机能を解明するのに有用な実験技术の开発や、生体内酵素による触媒反応との代替により治疗効果をもたらす「触媒医疗」への応用が期待されます。すなわち、新たな疾患治疗ツールとして将来の医疗の进歩に贡献することが期待されます。
「この研究は生物を専门とする研究者达と化学を専门とする研究者达が1つ屋根の下で密に议论しながら研究を进めることで初めて成し遂げられた成果です」と金井教授は话します。また、「今回の成果により、我々が提唱している「触媒医疗」の実现に向けた最初の一歩を踏み出せました。今后は、さらに优れた人工化学触媒の开発に取り组んでいきます」と川岛特任讲师は今后の展望を语ります。さらに、山次助教は「生命は分子とその间に働く化学反応によって駆动されています。化学の力で生命研究や医疗へとさらに贡献していきたい」と意欲を见せます。
なお本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業の一環として行われたものです。
论文情报
Synthetic chromatin acylation by an artificial catalyst system", Chem Online Edition: 2017/06/09 (Japan time), doi:10.1016/j.chempr.2017.04.002.
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