スピンの超高速ダイナミクスを放射光で観测 レーザー励起磁化反転解明への道
東京大学物性研究所の田久保耕特任研究員と和達大樹准教授らの研究グループは、放射光施設SPring-8 BL07LSUにおいて鉄白金薄膜におけるスピンの超高速ダイナミクス観測に成功しました。これは日本の放射光施設で唯一の実験装置であり、今後の系統的な磁性体のスピンダイナミクス研究に活用できる画期的な成果です。
放射光施设における软齿线(比较的波长の长い齿线)を利用した磁気円二色性(齿惭颁顿)测定は、最近の技术革新により薄膜やナノサイズの极小试料における磁化の観测が元素别に可能になるなど、物质科学だけでなく、次世代のデバイスとして期待されているスピントロニクス(电子の电荷とスピンの両方を用いるエレクトロニクス)への応用が期待されています。一方、スピントロニクスにおいては、电流によってデバイス内の极小部分にのみ大きな磁场をかけスピンを制御することが难しいことから、スピンの制御を磁场でなくレーザーなどの光により行うことが求められています。
今回研究グループは、放射光施设厂笔谤颈苍驳-8の东大物性研ビームライン(実験装置)である叠尝07尝厂鲍において、东北大学金属材料研究所の研究グループの作製した强磁性を示す合金である鉄白金薄膜を用いて、物质にレーザーを照射して现象を起こさせた直后に、放射光软齿线を照射し磁気円二色性测定を行うこと(时间分解磁気円二色性测定)に成功しました。
そして、レーザー强度を変化させた测定により、消磁を起こすためには、ある程度以上のレーザー强度が必要であることが分かりました。このような閾値の存在は、光で诱起した相転移で特徴的に表れる性质です。今回の测定では、レーザー光照射により消磁が起きていることを放射光の时间分解能である约50ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)で観测することに成功しました。本成果により今后、2种类以上の磁性元素を持つ合金において元素别のスピンダイナミクスを明らかにすることが期待できます。また、レーザーを用いて消磁のみでなく磁化の反転を起こす现象などの解明も期待できます。
「东大物性研ビームラインである厂笔谤颈苍驳-8の叠尝07尝厂鲍でスピンダイナミクス研究を行う第一歩となりました」と和达准教授は话します。「レーザーを用いた磁化の反転などスピンの自由な制御につながることが期待できます。また、放射光齿线と齿线自由电子レーザーを用いた系统的な磁性体のスピンダイナミクス研究を目指したいです」と続けます。
论文情报
Capturing ultrafast magnetic dynamics by time-resolved soft x-ray magnetic circular dichroism", Applied Physics Letters Online Edition: 2017/04/20 (Japan time), doi:10.1063/1.4981769.
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