EBPM エビデンスに基づく政策形成の导入と実践
昨今、政策形成の現場やメディア、国会論戦などにおいて「エビデンス」という言葉を耳にすることが多くなったと思われる。そもそも、エビデンスに基づいた政策形成 (evidence-based policy-making, 以下EBPMとする) とは何か。なぜそれは必要とされるのか。
従来の政策形成においては、経済学をはじめとした社会科学に基づく分析は必ずしも重视されてこなかった。ともすれば政策立案者の「直感」に頼ったり、関係者の要求に応えたりする形で政策が形成されてきた面もある。
しかし、急速な少子高齢化や人口减少、财政逼迫といった前例のない课题に直面している中、政策资源はできうる限り有効に利用する必要がある。したがって、実証実験などの科学的な手法に基づき政策オプションの効果を比较検讨したり、政府が保有する公的统计を活用して政策の影响を予测したりするなど、より费用対効果の高い政策を実现する姿势が求められる。すなわち、适切な手法を活用した政策の评価により质の高いエビデンスを创出した上で、そうしたエビデンスに基づいて政策立案を行うことが不可欠なのである。
このような状况の中、幅広い人々に贰叠笔惭を理解してもらうためのスタンダード?テキストとして本书が企画?出版された。本书では、贰叠笔惭の基本的な概念や手法について解説したうえで、米国?英国といった海外の事例や国内における実践例について具体的に解説している。そもそもエビデンスとは何か、贰叠笔惭はどのような手顺で进めればよいのか、モデルとなるような事例にはどのようなものがあるのか、といった点について手がかりを提供したつもりである。以下简単に内容を绍介する。
第滨部では贰叠笔惭の基本的な考え方を説明している。例えば第1章「贰叠笔惭とは何か」は、エビデンスや因果推论といった贰叠笔惭の基本的概念やその具体的な手顺を説明した上で、全体的な政策プロセスの中で贰叠笔惭がどのように位置づけられるかを説明している。
第II部では海外におけるEBPMの事例を扱っている。例えば第6章「英国におけるEBPM」は、英国政府におけるEBPMの実際について事前評価と事後評価の両面から説明した上で、政府エコノミストなどの専門職や予算責任局やWWC (What Works Centre) といった独立的機関がEBPMに大きな役割を果たしていることを示している。
第III部では、教育、環境?エネルギー、経済产业等の政策分野における日本国内のEBPMの事例を扱っている。例えば第8章「教育におけるEBPM」は、尼崎市における教育分野のEBPMについて、同市の「学びと育ち研究所」の取り組みを中心に解説している。
第IV部では、EBPMとの親和性が高いとされるナッジ (省エネ、災害時の避難など特定の行動を促進する仕組み?工夫) を扱っている。例えば第14章「豪雨災害時の早期避難促進メッセージの作成と効果検証」は、豪雨災害時の早期避難を促進するためのメッセージとしてどのようなものが有効かという点について、広島県における調査に基づき行動経済学の観点から効果検証を行った結果を紹介している。
本书の执笔者は、研究者と実务家の両者からなる。基础的なところからわかりやすく、具体的に解説したつもりなので、政策のあり方について関心を持つ方々に広く読んでいただけると幸いである。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 内山 融 / 2023)
本の目次
はじめに|大竹文雄、内山 融、小林庸平
第滨部 贰叠笔惭の基础:概念整理と日本における现状分析
第1章 EBPMとは何か|大竹文雄、内山 融、小林庸平
第2章 「真価志向」の政策形成――因果推論と効果検証の考え方|近藤清太郎
第3章 医療におけるEBMからEBPMが学べること|関沢洋一
第4章 EBPMに死を!|成田悠輔
第滨滨部 海外における贰叠笔惭
第5章 米国におけるEBPM|津田広和、岡崎康平
第6章 英国におけるEBPMと日本への示唆|内山 融、小林庸平、田口壮輔、小池孝英
第7章 国際開発分野におけるエビデンスに基づく実践の進展|青柳恵太郎、西野 宏
第III部 EBPMの国内事例[1]:教育?環境エネルギー?経済产业政策
第8章 教育におけるEBPM|能島裕介、江上 昇
第9章 環境?エネルギーにおけるEBPM|横尾英史
第10章 経済产业政策におけるEBPM|角谷和彦、橋本由紀、牧岡亮
第11章 広島県におけるEBPM推進の歩み|石田直人
第滨痴部 贰叠笔惭の国内事例摆2闭:ナッジの政策活用
第12章 ナッジとは何か?―基本的な考え方と日本版ナッジ?ユニットBESTの取り組み|池本忠弘
第13章 地方自治体におけるナッジ|高橋勇太、津田広和
第14章 豪雨災害時の早期避難促進メッセージの作成と効果検証|大竹文雄
終わりに――EBPM定着のための条件とは|大竹文雄、内山 融、小林庸平
関连情报
前田裕之 評「証拠に基づく政策形成「EBPM」をどう導入するかが分かる本」 (日経BOOKプラス 2023年7月6日)
杉谷和哉 評「決定版的テキストの登場: 概念整理から実践に至るまで幅広い論点を網羅」 (『RIETI Highlight』Vol. 96 p. 42 2023年7月6日)
小峰隆夫 評「エビデンスに基づく政策形成の充実へ理論、手法、実践例解説」 (『エコノミスト』 2023年3月17日)
书籍绍介:
「2023年「ベスト経済書」、選ばれた「日経の本」は?」 (日経BOOKプラス 2023年12月18日)
はじめに『EBPM エビデンスに基づく政策形成の导入と実践』 (日経BOOKプラス 2023年12月15日)
関连记事:
内山融「EBPMの海外情勢――米国と英国を中心として」 (RIETI|独立行政法人経済产业研究所 2023年10月31日)
内山融「総合的社会科学としてのEBPM」 (RIETI|独立行政法人経済产业研究所 2023年1月5日)
関连イベント:
シンポジウム「政策にEBPMは必要なのか?」 (主催: 独立行政法人経済产业研究所 2023年9月8日)
シンポジウム「EBPM――ビデンスに基づく政策形成の導入と実践」 (主催: 独立行政法人経済产业研究所 2023年3月22日)
関连动画:
シンポジウム「政策にEBPMは必要なのか?」 (rietichannel|YouTube 2023年9月8日)