私たちは世界の「悪」にどう立ち向かうか 东京大学教养のフロンティア讲义
は、「東アジアからの新しいリベラルアーツ」という目標を掲げて2019年に設立された北京大学とのジョイントプログラムです。EAAは毎年教養学部で学術フロンティア講義として「30年後の世界へ」というオムニバス講義を開講しています。本書は、2021年度に行われた「30年後の世界へ —— 学問とその“悪”について」の講義内容を収録したものです。折しも新型コロナウイルス感染症パンデミックのさなかにあって、学問の意義を再検討する必要が迫られていました。学問とそこから生まれてくる新しい思想や技术は、人類社会のよりよい発展に寄与するものだとわたしたちは信じていますし、そうあるべきものでしょう。しかし、今日の諸問題を振り返ると、人類に困難をもたらしてきたのもまた学問から生まれてきた思想や技术であることにすぐさま思い至ります。ですから、学問が自らを善なる希望であると自己規定するだけではおそらく不十分なのです。むしろ、学問そのものが自らの内にある「悪」を不断に問い直すことが必要となるでしょうし、その中では善と悪とがそもそも不可分であるという現実に眼を開かねばなりません。その上でなおわたしたちは人類のよりよき生を学問的に追求していかねばならないでしょう。
本书はそうした立脚点の上で、善と悪に関する哲学的考察の理论と歴史、ポスト?トゥルースと呼ばれる新たな风潮への省察、人种や民族といったアイデンティティ概念によってもたらされた政治への批判、また、现代テクノロジーの高度な発展のなかで人间は地球环境における长い生命の歴史的変迁とどう向き合うべきかなどといった诸问题をめぐって、文系理系の枠を越えたさまざまな分野の専门家が独自の视点で论じています。
本书のもとになった讲义は、という授业动画配信サイトを通じて一般に公开されています。授业中には聴讲者とのディスカッションも活発に行われ、质疑の全容をこのサイトからご覧いただくことができます。本书は讲义终了后にこれらの质疑の内容を踏まえて各登坛者が新たに书き直したものですので、本书と动画とをあわせてご覧いただくことで、知の生まれる现场からそれが文へと昇华していく変迁のプロセスを感じることができます。
同时代のひりひりした紧张感に向き合いながら、それぞれの分野の専门家たちがリベラルアーツの世界へと飞び込む教养学部前期课程生たちに対して発する学问のメッセージを読みとっていただける书籍となりました。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 石井 剛 / 2023)
本の目次
未来へ向かうことと悪を避けること/『マクベス』と『老子』をつなぐ、善悪のパラドックス/第一のパラドックス「善は悪である」――カントと形式主义/理性の命令から「天命」へ――孟子をてがかりに/「善は悪である」の进化形?/第二のパラドックス「悪は善である」――ニーチェと系谱学/评価様式そのものを见直してみよう/第叁のパラドックス「善悪の等しさ」――仏と悪の不思议な関係/悪の陈腐さと反道徳的シニシズム/歴史は繰り返す――悲剧と茶番について/直観に「赌ける」ことでしか未来は切り开けない
第2講 真実の終わり?――21世紀の現代思想史のために (星野 太)
30年后を考えるために、30年前に着目する/ポスト?トゥルースとは何か/ポスト?トゥルースの系谱学/ポストモダニズムの影响?/悪しき相対主义、远近法主义のイメージ/批判者たちの言い分/アメリカにおける「フレンチ?セオリー」/さしあたりの结语――ポストモダニズムの再検讨に向けて
第3講 人種?民族についての悪い理論 (鶴見太郎)
「人种」や「民族」は存在しない?/新しい概念はどのように広まるのか/「人种」という概念が流通した背景/「民族」という概念が流通した背景/日本における人种と民族/「人种」への忌避と「民族」の重视/ソ连のユダヤ人は、なぜイスラエルに移住したか/「ユダヤ人だから」ではない本当の动机/人种?民族についての悪い理论/民族をどのように考えればよいか
第4講 近代日本哲学の光と影 (中島隆博)
哲学が「役に立ってしまった」时代/大学生を戦争に駆り立てた田辺の讲义/个人の根拠に国家を据えた「种の论理」/戦争末期に「懺(ざん)悔(げ)」した田辺/九鬼周造は、なぜ「いき」に着目したのか/「生きる」ことと「偶然性」の関係/现代の哲学にもつながる「世界」の捉え方/九鬼が下した「决断」とは
第5講 私たちの憲法”無感覚“――竹内好(よしみ)を手掛かりとして (王 欽)
「宪法”无感覚“」とはどういうことか/普通の人々が宪法に覚えた违和感/新安保条约缔结に反発して辞职した竹内の意図/私たちはどのようにして宪法を自分のものとしていくか/宪法の普遍性はどこにあるか/「方法としてのアジア」を捉えなおす
第6講 清末中国のある思想家の憂鬱――章炳麟の「進化論」批判 (林 少陽)
章炳麟が掲げた「アジア主义」/「进化论」の何を批判したのか/善が进化すれば、悪もまた进化する/个人が「近代」から自由になるために/章炳麟の国家観/争いのない世界は访れるか/章炳麟の议论から110年后の我々はどう考えるべきか
第7講 儒学から考える「悪」――香港そして被災地 (張 政遠)
「悪」を読み解く四つの视点/「価値问题」としての悪/「人性论」としての悪/「悪搞」としての悪/「原発问题」としての悪
第8講 民主主義という悪の閾── 「他者なき民主主義」とそのディレンマ (金 杭)
「政治における悪」とは何か/1980年代韩国の民主化运动と资本主义化の同时进行/民主化运动と「メシツブ」/藤田省叁が指摘した现代の「安楽主义」/カール?シュミットが见抜いた民主主义に潜む排除の论理/南原繁と戦后日本の民主主义/「他者なき民主主义」に歯止めをかけられるか
第9講 地球上の生命と人類は30年後にどうなっているか (太田邦史)
「カーボンニュートラル」が見落としていること/地球の生命の歴史/ピンチをチャンスに変えてきた生物/人類は地球にとって「悪」である/人間の移動 (モビリティ) が与えた影響/30年後の「良いシナリオ」と「悪いシナリオ」/質疑応答からの抜粋
第10講 未来社会2050―― 学問を問う (佐藤麻貴)
未来予測は「誰」がするのか/未来を見据えるためには、過去を見返さなければならない/コンピュータは正確に未来を予測するか/「人口減少が問題」は本当なのか/AIの中では何が行われているか/未来予測とは何か/あるべき未来の姿を考えるシナリオ分析の手法/未来社会を見据えて、学問を問う/学生たちとのやりとり (抜粋)
第11讲 知识史からみた学问の「悪」(ミハエル?ハチウス)
「学问」とは――知识史という観点から/学问の「善悪」をどのように考えればよいか/近世日本の「儒学的」知识観/「実学」という言叶の意味/明治维新后の「実学」観/むすび
第12講 たたかう「文」の共同体に向けて (石井 剛)
「システム的な悪」/「道」の内部から「道」をつくる/悪を克服するためにわたしたちはいかにして「行う」べきか?/政治の悪/人类活动自体の悪/「文」の场としての大学
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春雨直播app OCW - 「30年後の世界へ——学問とその“悪”について」 (2021年)