「认知科学のススメ」シリーズ ことばの育ちの认知科学
子どもは、周囲の人が話す言语を聞いて、自分でも話せるようになっていく。しかし、話す人が違えば声質は異なるし、嬉しいときと怒っているときでは声の調子も違ってくる。相手をからかったりするときは、わざわざふだんと違う話し方をしたりもする。このように言语を話す声の中では、同じ単語や文も、物理的な音としては多様なあらわれ方をする。
したがって、言语を身につけるには、話す声の中に、コアとなる言语の音—物理的な音として必ずしもぴったり同じでなくてもここが一致すれば同じ単語として聞くべきといった言语の音—を見つけ出し、声質の違いや話し方の違いに惑わされることなく言语を聞き取ることができるようにならなければならない。実際子どもたちもこのようなことができるようになる過程では苦労している。ゼロ歳後半に入っても、話す人が変わったり、話すときの調子が変わったりすると、単語を聞き取れなくなったりするのである。
それでもやがて子どもは、話し手が変わっても、話す調子が変わっても、話す声を聞いて言语を聞き取ることができるようになる。しかし、ここで今度は別の問題が立ち上がってくる。声の中に含まれる“言语以外の音”も、話し手に適切に応じるためには、すっかり切り捨ててしまうわけにはいかないからだ。たとえば、つらそうな調子で「大丈夫」と言う話し手の言葉を、私たちは言葉通りに受け取るわけにはいかない。相手に適切に応じるためには、“言语”と“それ以外”、その両方の音に目配りする必要がある。
このように、音として実現される言语は、その中の“言语”を“それ以外”から切り離し、言语として聞いて理解することを私たちに要求する。その一方で、実際のコミュニケーション場面においては、いったん切り分けた“言语”と“それ以外”を折り合わせて話し手の気持ちを汲むことも必要になる。
言语が話し声として実現されるがゆえのこのような問題に、子どもはどのように取り組み、言语の巧みな使い手となっていくのだろうか。また、周囲からの働きかけや、言语そのもののあり方は、その発達過程にどのような影響を及ぼしているのだろうか。本書は、この大きな問題に対して、「乳児向け発話」「単語アクセント」「オノマトペ」「言葉と話し方が裏腹な発言の真意の理解」といった切り口からアプローチした。心理学がこのような問題にどのような方法で取り組むことができるのか、その研究の記録ともなっている。本書の試みから、言语発達研究の広がりと、それに取り組む研究の面白さを感じていただければ幸いである。
(紹介文執筆者: 教育学研究科?教育学部 教授 針生 悦子 / 2022)
本の目次
1章 乳児向け発话の効用
小さな子どもに対する特徴的な话し方
子どもも好きな乳児向け発话(滨顿厂) 3
乳児向け発話は“言语の音”を破壊しているのか
子どもの言语学習への影響
どこがどのようにいいのか
育児语はどこから来たのか
いつ始めるのか,いつやめるのか
親の育児語使用と子どもの言语発達
子育ての知恵
まとめ
2章 ピッチの上げ下げ――言语なのか,言语でないのか
言语による違い
中国语环境で育つ子どもの场合
英语环境で育つ子どもの场合
“言语の音”はどのようにしてわかるのか
日本语の単語の区別におけるピッチパターン
日本语環境で育つ子どもの場合
补足実験
まとめ
3章 “言语の音”のイメージ
もともとそういう&濒诲辩耻辞;音&谤诲辩耻辞;なのか,経験から作られるのか
谁もが同じ&濒诲辩耻辞;音&谤诲辩耻辞;から思い浮かべる共通のイメージ?
日本语オノマトペのルール
オノマトペの理解を调べる実験
それは日本语母語話者ならではの感じ方だった
外国語として日本语を学習することの影響
日本语を学ぶと正答率が上がる理由
日本语学習の最初期に習う“何か”
日本语環境で育つ幼児のオノマトペ理解
浊音文字知识の影响
日本语の発音
子どもに话すときのオノマトペ音声
子どもの理解を助ける&濒诲辩耻辞;声の演技&谤诲辩耻辞;
まとめ
4章 话し手の気持ちを読み取る
言叶と话し方と気持ち
「口調か言语内容か」を調べる
幼児は「口調より言语内容」
乳児における「声からの気持ちの読み取り」
言语がわかるようになると
口调から感情を読み取るのは难しい
「注意の切り替え」も難しい
まとめ
残された问题
おわりに
文献一覧/索引
関连情报
赤ちゃんは言叶を自然に覚える? 努力して覚える? (叠别苍别蝉蝉别たまひよ 2020年6月14日)
讲义:
赤ちゃんの言语獲得: 支える仕組みと脳、環境
針生 悦子 (東京大学 大学院教育学研究科 教授) (応用脳科学アカデミー 2022年8月2日)
2015年度「東京大学公開講座「心」」- 子どものことばを育む心 (東大TV 2015年11月29日)