法から学ぶ文化政策
公共政策としての文化政策が、制度化されてから20年以上が経過しました。文化政策に関連するステークホルダーは文化振興、文化財保護を担当する国および地方の行政関係者はもとより、文化関連団体、芸术団体、中間支援的団体等多岐に亘ります。それらの人々が法律を正しく読んで、活用することを念頭において、執筆しました。執筆者が考えたのはそれぞれの法律関連分野が、文化の発展という大きな意味において、どこに位置づけられているかということを考えてもらうということを意図しています。
このような本を作成した背景には、日本の多様な文化を営利?非営利も含めて発展?展开していくにあたって、限られた资源を适切に配分しながら、ステークホルダーの潜在力を活かしながら、目标に向かっていくためには法律を活用するという视点が重要だと考えたからです。これを考えていく上で、文化に関する法律が担っている领域というものを考えてみました。文化が発展していくとは、谁かが「创る」ことをして、「送り出す」役割があり、「受け取る」人がいて、「遗す」役割を担うものがあるだろう。それが、遗ったものを见たり、体験することで刺激を受け、さらに新たな「创る」に繋がる。これらが滞ることなく循环していくことが、文化の発展に繋がるのではないかと私たちは考えました。现行の文化に関する法律がどこに位置づけられているか、その法律において行政が担わなければならない部分と、活动している人たちが担わなければならない部分というのが明らかになることを目指しています。
本书では文化を基轴に法律をみていくことになります。一般の人たちに驯染みがある法律といえば民法や刑法だと思います。ここで扱う多くの法律は行政法の分野に位置づけられ、あまり见たり闻いたりしたことがないかと思います。行政法研究の分野においては、行政権が违法に行使されることによって国民の権利や利益が损なわれることがあり、それを保护するための裁判规范という侧面から研究が行われてきており、そのような视点で文化政策を见ていくことも大事です。ただ社会の中で文化の担い手が様々な领域で活跃している上、公共政策には市场を开拓するという领域も含まれます。市场と书くと、営利的な公司が活跃する场に限定されるかもしれませんが、そうではありません。地方行政においては様々な领域での格差を是正するために文化行政に力を入れているところもあります。行政法は、行政组织を动かし、それを通じて社会をコントロールして、一定の目的を実现するための法と位置づける考え方があります。法律のイメージと并んで、政策も変化しています。政策とは、政治家の利益诱导だと考えているとしたらそれは古い考え方だといえます。よりよい文化环境をつくっていくために、行政や民间が一绪に考えなければならないことがあります。そのための第一歩になればと思いました。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 小林 真理 / 2023)
本の目次
第1部 文化政策の基础となる法
第1講 憲法?国際法――基本理念としての文化権 (中村美帆)
第2講 文化芸术基本法 (小林真理)
第3講 著作権法 (1) ――著作権法の「これまで」 (小島立)
第4講 著作権法 (2) ――著作権法の「これから」 (小島立)
第5講 文化財保護法 (1) ――教育法制上の位置づけ (土屋正臣)
第6講 文化財保護法 (2) ――空間を文化財指定する (土屋正臣)
第2部 文化政策の场?组织を支える法
第7講 文化芸术を支える組織の法規制 (小島立)
第8講 行政改革に関連する法律 (小林真理)
第9講 社会教育法?図書館法――教育法体系と文化政策 (中村美帆)
第10講 博物館法――直近の法改正と根本的な論点 (中村美帆)
第11講 美術品公開促進法?海外美術品公開促進法?美術品損害補償法?文化観光推進法 (小林真理)
第12講 劇場、音楽堂等の活性化に関する法律 (劇場法) (小林真理)
第3部 社会の多様性と向き合う法
第13講 障害者文化芸术活動推進法――アクセスをより確かなものにするために (中村美帆)
第14講 アイヌ施策推進法 (土屋正臣)
第15講 日本语教育推進法――日本语教育が創る多文化共生社会 (土屋正臣)
関连情报
『法から学ぶ文化政策』ウェブサポート 法令&补尘辫;図表データ集
着者座谈会:
「はじめてでもまるごとわかる、重要政策と関係法令――『法から学ぶ文化政策』著者が語り合う」 (『書斎の窓』 2022年3月号)
书评:
中川幾郎 評 (『文化経済学』19巻2号 pp. 35-36 2022年)
书籍绍介:
「BOOK REVIEW」 (『経済』 2022年4月号)