脱炭素化入门シリーズ 都市の脱炭素化
気候変動対策において都市や地区における取り組みが重要である。都市における社会経済活動に起因すると考えられる家庭、業務、運輸の3部門の二酸化炭素排出量は日本全体の約5割を占める。また、都市人口の増加が見込まれている。多くの人が暮らし、?酸化炭素排出量の多い都市における気候変動対策の重要性は増すばかりといっていい。さらに、2021年から2022年にかけて公表された気候変動に関する政府間パネル (Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC) の第6次評価報告書において、第5次評価報告書の章構成から「都市」の単語を含むように章題の?部が修正されたことは、その重要性を強調するものともいえよう。
本書は21名の専門家と実務家がそれぞれの視点から都市の脱炭素化に向けた知見を提供する。構成は5部からなる。「第1部 都市生活の脱炭素化」は、都市生活の中で?酸化炭素がどのように排出され、どのように脱炭素化が進められているかを解説している。「第2部 再生可能エネルギーの活用」は、太陽光、バイオ、風力、地熱などの再生可能エネルギーをどのように都市の脱炭素化につなげていくかを提示している。「第3部 公平で速やかな都市の脱炭素化に向けた課題」は、脱炭素化を進める上での経済的、制度的、法的な課題を整理している。「第4部 地方自治体の脱炭素化に向けた役割と取り組み」は、官庁、自治体における脱炭素化政策担当者の課題と期待する役割、そしてどのように脱炭素化への道筋を進めるかの手法とその実践例を紹介している。「第5部 自動車の電動化からSolarEVシティー構築に向けて」は、電気自動車と太陽光発電を組み合わせることで経済性の高い脱炭素化を実現するSolarEVシティー構想を提案している。
筆者が連名で担当した「第1部 第5章 都市地域炭素マッピング:時空間詳細なCO2排出量の可視化」では、近年進展著しい情報通信技术が一見して無関係にも思える気候変動対策にどのように貢献しうるのかという問題提起とその検討を紹介している。章題に掲げる「都市地域炭素マッピング」は、建物と道路の物的基礎情報、統計調査によって公表されている排出量原単位に加えて、近年利用可能になってきた携帯端末位置情報に代表されるビッグデータを活動量情報として利用して、個別の建物?道路単位、1時間単位で?酸化炭素排出量を評価、可視化する手法である。従来の自治体単位、年単位の評価ではなく、時空間粒度を細かくすることで、人が身近に把握しやすい単位 (human scale) で評価し、効果的な脱炭素化政策の立案、取り組み状況の把握、ホットスポットの検出、行動変容の喚起などを目指すものである。
本书は幅広い分野、様々な视点、最先端の知见を?册でカバーしており、脱炭素に向けた动きが急加速し始めた现在においてぴったりの入门书である。ユニークな试みとして、编着者と执笔者による各章20分程度の解説动画が驰辞耻罢耻产别で公开されている。动画から脱炭素化に向けた各着者のモチベーションや思いもぜひ感じてほしい。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 特任助教、空间情报科学研究センター 助教 吉田 崇紘 / 2022)
本の目次
第1章 家庭での脱炭素化
住環境計画研究所?鶴崎 敬
第2章 家庭生活に伴う直接?間接CO2 排出と脱炭素型ライフスタイル
国立環境研究所?平野勇二郎、東京大学?井原智彦
第3章 食システムの脱炭素化に向けた食行动
電力中央研究所?木村 宰
第4章 电化とデジタル化が进む都市の脱炭素化を担う送电网
地球環境戦略研究機関?栗山昭久、劉 憲兵
第5章 都市地域炭素マッピング:时空间详细な颁翱2排出量の可视化
慶應義塾大学?山形与志樹、東京大学?
第2部 再生可能エネルギーの活用
第1章 进化を続ける営农型太阳光発电
環境エネルギー政策研究所?田島 誠
第2章 都市におけるバイオエネルギー利用の方向性
自然エネルギー財団?相川高信
第3章 デンマークの风力主力化モデル
デンマーク大使館?高橋 叶
第4章 地热エネルギーの活用
九州大学?分山達也
第3部 公平で速やかな都市の脱炭素化に向けた课题
第1章 都市の中の太阳光―导入拡大に向けた法的?制度的课题
自然エネルギー財団?工藤美香
第2章 公平なエネルギー転换:気候正义とエネルギー正义の観点から
京都大学?宇佐美誠、筑波大学?奥島真一郎
第3章 脱炭素都市?地域づくりに向けたNGO の取り組み
気候ネットワーク?豊田陽介
第4章 资源ネクサスと行政计画京都市のケースを中心として
兵庫県立大学?増原直樹
第4部 地方自治体の脱炭素化に向けた役割と取り组み
第1章 脱炭素社会に向けたフューチャー?デザイン
大阪大学?原圭史郎
第2章 1.5℃に向けた京都市の挑戦
京都市?藤田将行
第3章 小田原市におけるシェアリングEV を活用した脱炭素型地域交通モデル
小田原市?山口一哉
第4章 脱炭素社会の実现に向けた地方公共団体の取组について
環境省?澁谷 潤
第5部 自动车の电动化から厂辞濒补谤贰痴シティー构筑に向けて
第1章 自动车の电动化
京都大学?内藤克彦
第2章 痴2贬システムとエネルギーマネジメント
ニチコン?古矢勝彦
第3章 分散协调メカニズムの活用による都市の脱炭素化実现の可能性
東京大学?田中謙司、東京大学/TRENDE?武田泰弘
第4章 SolarEV シティー構想:新たな都市電力とモビリティーシステムの在り方
国立環境研究所?小端拓郎
関连情报
GIS学会賞 (研究奨励部門) (一般社団法人地理情報システム学会 2018年10月20日)
優秀研究発表賞 (東京大学空间情报科学研究センター 2018年11月3日)
执笔者による解説动画の配信:
【書籍『都市の脱炭素化』特別企画】はじめに-編著者による解説 (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年9月30日)
【CO2排出量の可視化】データを活用した都市の炭素管理 (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年10月29日)
【電化とデジタル化】都市の脱炭素化を担う電力と送電網 (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年11月5日)
【食システムの脱炭素化】削減の鍵となる“食行動変容”は? (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年11月10日)
【脱炭素型ライフスタイル】生活におけるCO2排出を考える (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年11月16日)
【デンマークの風力発電に学ぶ】再エネ拡大の鍵は? (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年12月1日)
【バイオエネルギー利用】都市における再エネの可能性 (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年12月8日)
【農業×太陽光発電】土地利用効率を上げる、新たな取り組み (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2021年12月21日)
【脱炭素社会へのNGOの貢献】市民協働の取り組み (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年1月12日)
【屋根置き太陽光発電】設置拡大への法的?制度的課題は? (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年1月20日)
【脱炭素型の行政計画】資源管理に関して、京都市を事例に (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年1月28日)
【気候正義とエネルギー正義】エネルギー転換を、“公平な視点”から考える (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年1月31日)
【地熱エネルギー】地熱発電の仕組みや歴史、今後の展望を考える (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年2月2日)
【EV活用の地域交通モデル】小田原市が取組む脱炭素型まちづくり (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年2月9日)
【京都市のCO2排出ゼロへの道筋】施策や脱炭素型ライフスタイルの構築 (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年2月10日)
【将来世代を考慮した意思決定】脱炭素社会の実現に向け、将来から現在を考察 (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年2月17日)
【国と自治体が協働】地域の脱炭素化に向けた制度や支援 (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年3月1日)
【データに基づく電力の共有と活用】効率的にエネルギーをシェア (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年3月8日)
【再エネを有効活用】EVを家庭電力につなぐV2Hとは? (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年3月11日)
【電気自動車のポテンシャル】普及拡大に向けた課題とこれから (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年3月16日)
【屋根を有効活用!】PV×EVの都市ならではの電力システム (国立環境研究所動画チャンネル | YouTube 2022年3月23日)
関连イベント:
书籍『都市の脱炭素化』関连イベント案内ページ (国立环境研究所 社会対话?协働推进オフィス)
関连情报:
IPCC第6次評価報告書 (第3作業部会)
IPCC, 2022: Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change. Contribution of Working Group III to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [P.R. Shukla, J. Skea, R. Slade, A. Al Khourdajie, R. van Diemen, D. McCollum, M. Pathak, S. Some, P. Vyas, R. Fradera, M. Belkacemi, A. Hasija, G. Lisboa, S. Luz, J. Malley, (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, UK and New York, NY, USA. doi: 10.1017/9781009157926
书评:
新刊本绍介 (『环境経済?政策学会ニュースレター』狈辞.54 2022年8月31日)