デジタル化する新兴国 先进国を超えるか、监视社会の到来か
本书は発展途上国で急速に进むデジタル化の影响を、正负の両面から整理したものです。情报通信端末の普及やプラットフォーム公司の台头は、先进国のみならず、多くの人口を抱える発展途上国でも进んでいます。それによって次のような変化が生じています。
第1に、デジタル化は新兴国の可能性を拡げています。アリババやテンセントといった巨大プラットフォーム公司を生み出した中国にとどまらず、电子生体认証を导入したインド、宅配?ライドシェアの広がりが见られる东南アジアにも目を向ける必要があります。アフリカでもベンチャー公司が生まれ、コワーキングスペースが开设され、留学帰りの起业家がビジネスチャンスを探っています。
第2にデジタル化は、新興国の脆弱性を顕在化させる懸念もあります。自動化技术の普及は、社会保障の枠外に置かれた雇用を拡大させることによって労働市場への負荷を高めるかもしれません。また情報通信端末と人工知能を利用した監視技术は、権威主義体制を強化させるかもしれません。残酷なことですが、紛争地域ではドローンを利用して、空爆がより「安価」なものになりつつあります。
新興国社会で生じつつある変化の大きさを考えて、本書で筆者は「デジタル新興国」(Digital Emerging Economies) との概念を提案しています。これは工業化が発展途上国を大きく変えた時代に登場した「新興工業国」(Newly Industrializing Countries) という概念を念頭に置いたものです。工業化との対比では、デジタル化は一国経済のなかでの所得格差を縮小させず、むしろ拡大させるかもしれません。製造業が多くのフォーマルな社会保障を完備した雇用をもたらしたのに比べると、デジタル経済が生み出す雇用の量は限定的で、フードデリバリーの配達員に代表されるように、社会保障制度の枠外に置かれている雇用が目立ちます。また地理空間の観点からは、デジタル化ではより幅広い地域にまで視野を向けるべきです。製造業では東アジア地域に生産拠点が集中し、「東アジア生産ネットワーク」(East Asian Production Network) が注目を集めてきました。しかしデジタル経済では、インド、ブラジル、そしてアフリカからも有力なスタートアップ企業が生まれ、またユニークなサービスが提案されています。
考えねばならないもう一つの論点は、日本に何ができるのかです。1980年代以降の工業化の時代には、日本は自動車产业、電子产业を代表として「先進工業国としての日本」という立脚点がありました。また2000年代以降は、環境対策や少子高齢化の面でのノウハウを生かして、「課題先進国としての日本」という役割を果たしてきました。では「新興国がデジタル化する時代」を想定した場合に、日本はどのような役割を果たすことができるでしょうか。残念ながら日本は先進工業国であったのと同等水準では、先進デジタル化国ではないようです。世界的有力企業は限られ、日本国内での社会実装も立ち遅れています。新興国で日本に蓄積されてきたノウハウを生かしつつ、同時に新興国からも多いに学ぶことが求められているのではないでしょうか。本書では「共創パートナーとしての日本」という役割を提案しています。これはひとつのたたき台の議論にすぎません。どのような役割を果たしうるのか、検証していくことが求められています。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 准教授 伊藤 亜聖 / 2021)
本の目次
第1章 デジタル化と新兴国の现在
第2章 课题解决の地殻変动
第3章 飞び越え型発展の论理
第4章 新兴国リスクの虚実
第5章 デジタル権威主义とポスト?トゥルース
第6章 共创パートナーとしての日本へ
関连情报
第22回 読売?吉野作造賞 (2021年7月)
デジタルの樹林を切り開く 伊藤亜聖 <第22回読売?吉野作造賞> 受賞のことば (中央公論.JP 2021年6月10日)
ベスト経済書?ビジネス書大賞2021第3位『デジタル化する新兴国』
日本は何ができるか问われている (『週刊ダイヤモンド』 2021年12月25日?2022年1月1日号)
着者インタビュー:
伊藤亜聖氏に聞く デジタル化する新兴国 日本は「共創パートナー」目指せ (読売クオータリー2021夏号 2021年7月30日)
デジタル化で中国が迎えた転换 日本は后进国になるのか (朝日新闻顿滨骋滨罢础尝 2021年3月24日)
デジタル化で、日本がインドや中国に敗北した理由。新型コロナで露呈したその違いとは (HuffPost News 2021年3月23日)
新刊著者訪問 第37回: デジタル化する新兴国 先进国を超えるか、监视社会の到来か (東京大学社会科学研究所 2020年11月17日)
着者コラム:
执笔ノート (叁田评论翱狈尝滨狈贰 2021年1月16日)
日本がアジア新兴国のデジタル化に学ぶべき事
普及した分野とそうでない领域で差も出ている (东洋経済翱狈尝滨狈贰 2020年11月10日)
中国痴厂インド?デジタル超大国?の胜者の行方
外资を规制するか开放するかで戦略が异なる (东洋経済翱狈尝滨狈贰 2020年11月4日)
南アジアでフリーランスがじわり増えている訳
エンジニアや主妇も英语や技能を駆使し活动 (东洋経済翱狈尝滨狈贰 2020年10月31日)
书评:
鈴木雄雅 (上智大学教授) 評 (『週刊読書人』 2021年12月17日号)
高口康太 (ジャーナリスト) 評 (『中国研究月報』第884号 2021年10月号)
藤井大輔 (大阪経済大学 経済学部講師) 評 (『中小企業季報』2021 No.3?4合併号 2021年10月)
(夕刊フジ 2021年10月15日)
岡本正明 (京都大学東南アジア地域研究研究所) 評 (『東南アジア研究』59巻1号 2021年7月31日)
中川 敬士 評 ワンポイント?ブックレビュー (『労働調査』 2021年3月号)
【この一冊】「デジタル化する新兴国」 (電波新聞 2021年1月29日)
叠翱翱碍厂コラム (日刊ゲンダイ顿滨骋滨罢础尝 2021年1月13日)
竹田いさみ (獨協大学教授) 評 (読売新聞夕刊 2021年1月9日)
高口康太 (ジャーナリスト) 評「日本は新興国から「デジタル化?DX」を学ぶべき時代になった」 (NEWSWEEK 2020年12月30日)
日本はデジタル后进国になってしまった! (闯-颁础厂罢ニュース 2020年12月14日)
アエラ読書部: 森永卓郎 (獨協大学教授?経済アナリスト) 評 (『AERA』 2020年12月7日号)
篠田英朗 (国際政治学者?東京外国語大学教授) 評「世界を変える可能性」 (読売新聞朝刊 2020年12月6日)
(『週刊文春』辫.113 2020年12月3日号)
佐々木実 (ジャーナリスト) 評 (信濃毎日新聞 2020年11月28日)
新鲜新选 一挙に进む社会変化 新兴国のデジタル化 (中部経済新闻 2020年11月28日)
中沢孝夫 (経営学者) 評「発展過程に位置付けて分析」 (日本経済新聞夕刊 2020年11月26日)
今週の本棚: 栗原裕一郎 (評論家) 評 (東京新聞?中日新聞朝刊 2020年11月21日)
橋爪大三郎 (社会学者) 評 (毎日新聞朝刊 2020年11月21日)
「発展过程に位置づけて分析」 (日本経済新闻朝刊 2020年11月21日)
関连记事:
日本は新兴国から「デジタル化?顿齿」を学ぶべき时代になった (狈别飞蝉飞别别办 2020年12月30日)
イベント:
第4回アジア?太平洋研究会「デジタル化する新兴国」 (科学技术振興機構アジア?太平洋総合研究センター 2021年9月13日)
グローバル?インテリジェンス?シリーズ:デジタル化する新兴国 ー 共創パートナーとしての日本の可能性 (RIETI独立行政法人経済产业研究所 2021年9月1日)
伊藤亜聖 東京大学准教授 「デジタル化する新兴国 先进国を超えるか、监视社会の到来か」 出版記念トーク (ニコ技深圳コミュニティ 2020年10月27日)