人生行动科学としての思春期学
本书は、人生行动科学という立场から「思春期」をどう理解すればよいかを、第一线の研究者とその事例と関わる人たちに论じていただいたものである。「人生行动科学」という言叶はあまり闻いたことがないかもしれない。行动科学は人间の行动を実証的に研究して法则やモデルを作っていこうとする学问の総称なのだが、厳密な実証性を担保しようとすると、比较的短期间で完结する客観的に観察可能な行动が対象にされることが多い。ただ、私たちが日々生きている実生活は人生と呼ばれる长い时间の流れのなかにあり、そうした流れのなかでこそ喜怒哀楽が生じ、梦や希望も生まれる。自分や周囲の他者も含めて人を理解するとは、そうした人生という文脉を考虑した视点が必要になるだろう。本书は、「人生」を前にしてそれをどう科学的な言叶で対象化できるのかという大きな问题に向かい合い、格闘している着者たちの中间报告とも言える。
テーマとなるのは「思春期」とその周辺の「础驰础世代」の理解である。まさにこの时代は自分の「人生」が意识され始め、それを展望しようとし始める时期である。ただ中にいる少年?少女にとっては、身体や社会环境など様々な変化のなかで心理的にも不安定になる时期であり、困难との出会い、不安、格闘、克服など様々なドラマがそこで生じる。これまで数え切れないほどの数の文学がこの时期を対象としてきたのは、この时代のそうした性格によると思われる。それに対して新たに科学的视线を向けたことの意义は、学の発展という意味で大きいことはもちろん、様々な问题を抱えがちな现代の思春期や础驰础世代の若者をサポートする実践上のヒントももたらすことにもなるだろう。
本书は大きく5つのセクションに分かれており、それぞれ3人から6人の着者が独自の切り口から思春期や础驰础世代について论じている。详しくは以下の「目次」を见ていただいた方がよいのだが、人生という视点からそうした时代をどのように検讨し分析すればよいのか理论的に検讨したセクションから、そこで生きる人たちの现状と困难、そしてそれをどう支援すればよいかを论じたセクションまで、内容的には非常に幅広く话题も多岐にわたっている。読者の方々は、まずは章のタイトルを见て関心のある章から読み、それから読みの范囲を広げていただければと思う。その过程で、思春期や础驰础世代にいる読者の方々は自己理解が深まり、これから生きていく上でのヒントが得られると、私たち笔者としてはうれしい。さらに、これをきっかけに「人生行动科学」に関心をもち、今后の研究の発展に贡献してもらえるような若い学生の皆さんが育ってくれるとしたら、私たちにとっては望外の喜びである。
(紹介文執筆者: 教育学研究科?教育学部 教授 能智 正博 / 2021)
本の目次
I 私たちはどう生きるかを脳?生活?人生から考える
1 人生行动科学――思春期/础驰础世代に培う主体性(笠井清登)
2 生活史戦略から考える人生(长谷川寿一)
3 言语の起源――思考かコミュニケーションか(岡ノ谷一夫)
4 主体性と生活の脳基盤(柳下 祥)
5 ライフストーリーから考える「いかに生きるか」(能智正博)
コラム1 インターネットと生活行动习惯(森田正哉)
II 础驰础世代の健康と発达を调べる
6 思春期保健への国际的取り组み(安藤俊太郎)
7 世界の出生コホート研究と东京ティーンコホート(山崎修道)
8 础驰础の脳科学(小池进介)
コラム2 セクシュアリティと主体性(正冈美麻)
III 精神的?身体的不调からの回復を支援する
9 人とのかかわりを通じて――発达障害と精神疗法(青木省叁)
10 言叶と内省にもとづいて――精神分析的心理疗法(笠井さつき)
11 行动を手がかりに――认知行动疗法と行动活性化(横山仁史?冈本泰昌)
12 主体性を大切に――求められる支援とは(山口创生)
13 心と身体の统合的支援(近藤伸介)
コラム3 学校改造计画――若者の当事者研究(向谷地生良)
コラム4 バリアフリーとコ?プロダクション(熊谷晋一郎)
IV 础驰础の人生行动を支援する
14 学校场面の心理発达と支援(市川絵梨子)
15 础驰础世代と居场所(中原睦美)
16 いじめ?ひきこもり支援(平野直己)
17 自杀予防?危机介入(大岛纪人)
18 加害少年の取り返せない过去に寄り添う(青岛多津子)
19 身体?知的?精神の重复障害のある人のトランジション(熊仓阳介)
コラム5 トラウマインフォームドケア(亀冈智美)
コラム6 ピアサポートとリカバリーカレッジ――経験者だからこそできること(宫本有纪)
V 生活の中で人生行动科学を体験する
20 精神障害の子どもの亲の立场から(岛本禎子)
21 医疗を必要とする子供の家族の立场から(叁ツ井幸子)
22 ユースメンタルサポート颁辞濒辞谤の活动を通して(田尾有树子)
コラム7 メディアを活用した础驰础の健康启発(中野彰夫)
関连情报
佐藤洋輔 氏 (『心と社会』183号 2021年)