Traité du Corail (A Treatise on Coral)
『Traité du Corail (訳:サンゴについての概論)』は、科学者ジャン=アンドレ?ペイソネル (Jean-André Peyssonnel) の1744年の発見「『石のような植物』と呼ばれていたサンゴが実は動物である」を起点としている。しかしながら本書は、科学史から忘れ去られたペイソネルの博物学者としての業績を回復させようとするものではない。彼の人生におけるいくつかの主要な出来事に基づいて、人間とその研究対象との魅惑的な関係を、サンゴの3側面 (ミネラル、植物、動物) の神秘を通して探索する口実である。この科学的精神と古代生物との遭遇は、演劇、詩、科学的論文、哲学的対話が混合したテクストと、大部分を占めるサンゴ自身による語りによって編成されている。
岩礁 (サンゴ) は複合生物であり、多頭ヒドラでもあり、一種の超個体でもある。よって、ペイソネルの地球での運命と科学的冒険が、支配的でも超越的でもないこの新種の語り手によって語られることには意味がある。このスーパーナレーターは複数の声を持ち、ポリフォニーで多弁で尽きることはないのだ。したがって『Traité du Corail』は、その研究対象物であるサンゴの様な生命体のごとく増殖するテクストとして构想されている。人间という主体は全く个人的なスケールを超えて、数えきれないほどの要素、种、物质、エネルギー、物理法则に圧倒され、语りはいわゆるヒト中心的でなくなる。人类は何よりも优れた存在ではもうなくて、数ある现象のうちのひとつに过ぎない。もはやヒトが世界を征服しながら横断するのではなく、出来事、生き物、环境がヒトを横切っていくのだ。
最终的にヒトは、始まりと终わりの絶え间ない流れと、地质学的宇宙的时代の大きな変动のもとで元の场所に戻される。この意味で『Traité du Corail』が皮肉にも帰する先は「ホモ?サピエンスの出现と拡大、そして消灭」だろう。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 フランソワ?ビゼ / 2021)
関连情报
Traité du corail de François Bizet par François Huglo (sitaudis.fr August, 2021)
Florence Trocmé (Anthologie permanente July, 2021)