上?下巻 近代日本の美术思想 美术批评家?岩村透とその时代
书店で素敌な装帧の本を手に取ったり、ふと休日に美术馆に展覧会を见に行ってカフェでのんびりしたり、旅先でその地方の代表的な工芸品を买ってみたり、あるいは江戸时代の遗构がそのまま活かされた庭园を散策したり――と、私たちの日常にいまや自然に溶け込んでいるこのような楽しみや习惯が、たかだか百年に満たない先人たちの努力によって醸成されたものであると知ったら、どのように感じるだろうか。
本書『近代日本の美术思想――美术批评家?岩村透とその时代』は、日本における西洋画教育が本格的に始まった時期、しかしまだ洋画家の地位も定まらず、まだ「前衛的」と呼ばれる芸术運動が先鋭化しない1900年から1917年頃までの時期、〈美術〉という概念を思い切り押し広げて若い制作家たちを励ます一方、美術家たちが経済的に自立でき、法的に自由を保障されるべく共闘した人々を、知られざる歴史の中から掘り起こす書物である。本書の題目にある「美術思想」は、日本语として聞き慣れない言葉だが、「仏教思想」「経済思想」などの言葉と同様に、〈美術〉という現象をいかに捉えるか、〈美術〉を支える社会がいかにあるべきか、などについて、単なる思いつきや主張ではなく、系統立って思考する営みを指している。
本书では、この时代の「美术思想」を本格的に理解するために、岩村透(1870-1917)という一人の美术批评家を中心に据える。岩村透は、东京美术学校初代の西洋美术史教授であり、黒田清辉?久米桂一郎と共に「美校の叁羽乌」と呼ばれた存在だった。黒田清辉が近代美术界の「巨匠」と呼ばれ、教科书でもよく知られるのに対し、岩村については、いまやほとんど知られていないであろう。しかし岩村透は、バイリンガルに近い英语力と、美术のみならず人文全般の広范な智识と研究力、そして何よりも歯に衣着せぬ批评力によって、际だった才能を示す美术史家であり批评家であった。
岩村の美术思想は何よりも、「国家百年の计」ならぬ「美术百年の志」を持ったことにその根源を持つ、と笔者は考える。1900年前后の东京には、(过去の遗物を展示する博物馆ではなく)制作家たちが毎年の新作を展示し海外の最新潮流を知る「美术馆」は一つもなく、インディペンデントな活动ができる「画廊」も一つもなく、美术家たちが寄り集まって语り合うカフェさえ一轩もなかった。海外の美术情报を简単に手に入れる雑誌媒体はなく、ましてや西洋画や西洋彫刻を见る机会もなく、そして裸体画や裸体彫刻はすぐに官宪の目に止まって规制を受けた。そもそも「画家」や「彫刻家」「建筑家」の地位さえ社会の中で、ろくに定まっていなかった时代である。「无い无い尽くし」のアジアの新兴都市にあって、岩村たちは「美术百年の计」を立てる。その心には自由民権运动の志士のごとき「志」があっただろう。
本书は上?下巻で计1100页を超える规模をもち、笔者が30年の研究人生を费やして完成させた书物である。长いだけに一度には読めないかもしれないが、岩村透とその仲间たちの真挚な苦闘、百年后の日本に向けて放たれたメッセージ、先见の明、そして希望や挫折など、多くの人间たちのドラマが交错する読み物でもある。
果たして文学や芸术は本当に「不要不急」なのか——本書を読む中で、若い皆さんの目でそれを今こそ、問い直して欲しい。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 今橋 映子 / 2021)
本の目次
はじめに&尘诲补蝉丑;&尘诲补蝉丑;美术百年の志
第滨部 岩村透を読み直すために
第1章 その生涯 (1870-1917)
第2章 岩村透研究の推移と問題点
第3章 美術批評史研究の推移と岩村透の位相——批評期区分の試み
コラム1 岩村透の蔵书&尘诲补蝉丑;&尘诲补蝉丑;明治大正期知识人の世界像
第滨滨部 世纪転换期の美术批评と岩村透の仕事
第4章 美術批評はいかにして可能か
第5章 技芸家のための西洋美術史
第6章 ボヘミアニズムの仕掛け人——「巴里の美術学生」の波及力
第滨滨滨部 明治大正期の初期社会主义と美术批评
第7章 坂井犀水と初期社会主義
第8章 岩村透と初期社会主義
第9章 先取られた追悼——森鷗外「かのやうに」における岩村透像
第滨痴部 前卫史観に抗して
第10章 『美術新報』改革とその戦略 (1909−1913)
第11章 文展時代の <小芸术> —— <民藝> 直前の装飾美術運動
[下巻目次闭
第痴部 美术行政とアーツマネジメントの先駆者
第12章 「美術問題」の輿論形成に向けて—— <時言> <週報言> の戦略
第13章 海外美術情報の領分——生きて動く世界美術史
第14章 『日本美術年鑑』の百年——国内美術情報収集の意味とその継承者
第15章 美術行政とアーツマネジメントへのめざめ——国民美術協会という遺産
第16章 美術と建築、技芸家と社会
第17章 歴史が照らすもの——美術行政とアーツマネジメントの先駆者
第痴滨部 途絶された旅路&尘诲补蝉丑;&尘诲补蝉丑;岩村教授復职却下事件の真相
第18章 ボヘミアニズムの光と闇——岩村教授復職却下事件の真相と高等遊民問題
第19章 幻の著作——二言语使用者の夢
終 章 大樹の倒れたあとに——岩村透没後十年忌 (1926年) 本瑞寺所蔵追善作品群の意味
コラム2 百年後の光輪——岩村透百回忌 (2016年) 法要および記念展覧会
おわりに&尘诲补蝉丑;&尘诲补蝉丑;一念の诚天地を动かすべし
関连情报
第12回日本学赏 (一般社団法人日本学基金 2024年11月3日)
セミナー:
第58回贬惭颁オープンセミナー:忘れられた美术思想家?岩村透への光――比较文学比较文化研究の视座から语る (东京大学ヒューマニティーズセンター 2022年3月18日)
関连记事:
大学を楽しもう:体験レポート「美術と社会をつなぐ! 忘れられた美術思想家?岩村透への光~東大のオンラインセミナーをレポート」 (ほとんど0円大学ホームページ 2022年5月10日)
书评:
吉野良佑 評「「美術百年の志」からこれからの建築と社会を思考する」 (『建築討論』 2022年4月1日)
稲賀繁美 評「ボヘミアン自由主義復権への巨大な紙碑にして歴史的里程標――本書の基本姿勢には、この国における文化行政への根底的批判も見透かされる」(『図書新聞』第3505号 2021年7月24日)
天野知香「読書アンケート」 (『図書新聞』第3505号 2021年7月24日)
高橋咲子 記者「美術批評家?岩村透に光 / 社会と芸术結ぶ運動———今橋映子教授、
30年の研究を著書に」 (『毎日新聞』夕刊 2021年6月24日)