バイオテクノロジーの法规整 交差する公法と知的财产法
ヒト受精卵に対してゲノム編集が実施された事件の衝撃や、遺伝子組み換え作物 (GMO) の拡大による伝統的作物ひいては生物多様性への危惧など、バイオテクノロジーの急激な進歩は、分野を超え、国を超えた議論を呼んでいる。
本书は、そのようなバイオテクノロジーに対する法规整の问题について、公法と知的财产法が交差する场面を中心に考察をおこなう论文集である。
ここでいう「法規整」は、(1) 知的財産権の設定や政府による補助のような、バイオテクノロジーの法による振興?助成、(2) ヒトクローンの作出禁止のような、バイオテクノロジーに対する抑止?規制、(3) 振興と規制の関係の調整、及び (放任も含めた)「法的枠組み」の在り方、という広い内容を含む。
バイオテクノロジーに対する法学分野からの研究は、まだまだ開拓の途上にあり、しかも従来の研究においては、(1) は知的財産法学が、(2) については憲法学?行政法という公法学が、それぞれ縦割りでアプローチし、相互の参照や対話に欠ける面も大きかった。そのような状況のなかで、私は、本書第2部にとりまとめた研究において、公法と知的財産法の議論を繋ぐものとして、特許法における公序良俗条項の役割に着目し、地道に「分野横断的」研究を行ってきた。
第1部「法規整の概観と基層」においては、バイオテクノロジーと法の関わりを、日本の憲法?行政法を中心に概観し (第1章)、次いで、バイオテクノロジーの進展が公法理論の基層に及ぼす影響を管見し (第2章)、当該基層との関係で、日本における「自然と人の調和」的発想の実相につき、書評という形で考察を加えた (第2章補論)。
第1章は、1998年の日独シンポジウムの报告にもとづくもので、データは旧にすぎるかもしれないが、笔者の基本的问题意识と法的枠组みの概観を示しているので、冒头に採録した。その后の実定法制やガイドラインの进展、学説の动向については、ゲノム编集に対する法律による规制の动きも含め、补注で补っている。
第2部「公序条項による規整」は、本書の考察の中心をなす。バイオテクノロジーの法规整において、公法と知的財産法、それぞれの思考?制度が交わる大きな交差路が、特許法制における公序良俗条項 (論) であり、当該問題を軸に、EUのバイオテクノロジー発明法的保護指令の制定過程、ドイツ及びEUの判例?学説を分析し、日本法の立法?解釈論を模索している。
第3部には、植物バイオテクノロジーを対象に、行政法と知的財産法が、手続法?争訟法の場面で交差する問題とともに、実体法上の論点も含めて、特許法と種苗法、それぞれによる保護の要件?効果、及び両者の調整に関する概説 (第1章) と、種苗登録にかかる具体的事例について検討を行った論考 (第2章) を収録した。種苗法改正の動向や、それと連動して大きな社会問題にもなった種子法の廃止については第1章の補注で言及している。
前着『现代地方自治の法的基层』(2012年) と比較すると、この本に編んだ研究については、対象の特殊性?辺境性?から、私自身、行政法講義や演習で取り上げる機会があまりなかった。興味関心は様々ではあれ、まずは本書を手に取って、法学にもこんな問題領域があるんだなと考え、議論していただければ幸いである。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 教授 斎藤 誠 / 2021)
本の目次
第1章 日本におけるバイオテクノロジーと法──現状と展望 (1998年)
第2章 環境法?科学技术法の公法理論への影響──人間観?社会観をめぐって
第2章补论 自然と人の调和の実相──『环境の日本史4』を読む
第2部 公序条项による规整
第1章 私権の付与と公法上の規制──「バイオテクノロジーと法」に関する覚書 (1992年)
第2章 行政規制と公序良俗──バイオテクノロジー特許を素材として (2000年)
第3章 ヒト遺伝子技术に対する法的規律の交錯 (2001年)
第4章 ヒト胚バイオテクノロジー特许の限界线──ブリュストル対グリーンピース诉讼をめぐって
第5章 欧州におけるヒト関連バイオ発明と公序良俗規定 (2017年) ──ブリュストル判決からISCO事件へ
第3部 植物バイオの法规整
第1章 植物新品种の种苗法による保护と特许法による保护
第2章 品种登録の无効确认──芸北の晩秋事件
関连情报
平嶋竜太 (南山大学法学部) 評 (『書斎の窓』677号25頁 2021年9月)
书籍绍介:
田村達久+磯部 哲+児玉弘+福永 実「特集?学界回顧2020 – 行政法」 (『法律時報』92巻13号28頁 2020年12月)