Education and Social Stratification in South Korea
この本は、东京大学の英文翻訳出版刊行助成を受け、私の着书『韩国の教育と社会阶层―「学歴社会」への実証的アプローチ』() (2006年、東京大学出版会)を加筆?修正の上、翻訳し、出版したものです。マスコミなどを通じてしばしば報じられるように、韓国ではひとびとの学歴志向が強く、より良い大学への入学機会をめぐって激しい受験競争が繰り広げられています。同時に韓国社会では、教育機会の平等性に関して特徴的な議論がなされており、それらを受けつつ、非常にユニークな教育制度?入試制度が築かれてきました。
この本では、このような现象が生じている韩国社会の理解を目的として、「韩国では高い学歴を取得することによってどのような社会経済的効用が得られるのか」、そして主な「教育を通じた社会的上昇はどの程度可能なのか」を社会调査や政府统计のデータ分析を通じて明らかにし、それと共に、「そもそも韩国社会では教育机会、あるいは教育を通じた地位达成机会の平等とはどのようなものと考えられているのか」というひとびとの持つ想定や规范意识に関わる问题を、具体的な教育制度?选抜制度のあり方と结びつけながら考察しようとしています。これにより、日本社会との比较の视点から、韩国では「教育」という営みがどのような社会的机能を负っているのか、あるいはさらに大きく、教育という视点から见た场合、韩国社会とはいかなる社会であるのか、という问いに答えようとしています。
この本は主に1990年代までの韩国社会を主な分析対象としています。一方、韩国はこの时期以降大きな変化を経ており、当时はそれなりに楽観的な认识が持たれていた「教育を通じた社会的上昇の可能性」に対しても、强い批判の眼が向けられるようになりました。亲の社会経済的地位に応じて子どもの人生が大きく决まってしまう、という认识が広がっており、それを比喩的に表す「金のスプーンを持って生まれてきたか、土のスプーンを持って生まれてきたか」というフレーズも大いに流行しました。このようにその后の変化には顕着なものがありますが、今日の韩国社会で生じているこれらの批判は、本书がカバーする时期に形成された「理想的な社会のあり方」のイメージを基準として、それと社会の现状とのズレこそを问题视しているとも考えられます。その意味で、现在の韩国社会を理解する上でも、そのプロトタイプとも呼ぶべき20世纪后半の韩国社会を対象とした本书には一定の意义があるのではないか、と着者としては考えています。
このような内容を持つ本書は、社会階層論の本であると同時に、地域研究、比較社会学の本でもあります。世界の国々の中で、日本と韓国は互いに類似点の多い社会ではありますが、細かく見ればもちろん多くの相違も存在しています。日本との比較の視点からみた韓国社会論である本書が、このたび英语で刊行され、海外でも読者を得ることによって、東アジアの社会に対する理解がより一層進んでいくことを願っています。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 有田 伸 / 2020)
本の目次
Chapter 1 Theoretical Consideration of Academic Credential and Distribution of Position/Remuneration
Chapter 2 Social Hierarchical Structure and Industrialization in South Korea
Chapter 3 School Education Systems and Selection Systems of South Korea
Chapter 4 Effect of Academic Credentials on Wage Level and Its Change
Chapter 5 Effect of Academic Credentials on Determination of Occupational Positions and Its Change: Analyzing the job engagement process of new graduates
Chapter 6 Educational Achievement, and Social Stratification / Stratification Mobility
Epilogue, Impression of Academic Credential based Society and the South Korean Society: The Academic credential effect, Education system, and Distribution issue
関连情报
新刊著者訪問 第36回 (東京大学社会科学研究所ホームページ 2020年8月14日)