デザインの小骨话
筆者はデザイナーとして、また大学の研究者としての活動を通して、人と技术の関わり方について模索してきた。本書はその活動を通して培った思考方法とデザインのルールをベースに、最先端の科学技术との付き合い方、昆虫など生物の形と機能の関わり、日用品に潜む科学、フリーランスとしての生き方、製造技术とデザインなど、非常に幅の広い話題を、繊細なタッチで描かれたたくさんのスケッチとともに親しみやすい語り口で伝えるデザイン?エッセイである。
以下、本书まえがきより
私がを始めたのは2011年の春だった。教え子の结婚式で卒业生たちが盛り上がっているのを见て、うらやましかったからに过ぎない。しかしいつの间にかつぶやきの数は3万を超えた。他の厂狈厂にはあまり深入りしていないので、ツイッター常习者と言える。
多くの厂狈厂と同様に、このメディアもやがては消えてしまう刹那的なものだ。最初は私も、その时々の気持ちや、共有したい情报などをだらだらと缀っていた。しかしある顷から、一つの役割をこのメディアに委ねることにした。それは「学生たちに语ったこと」の记録である。
ツイッターを始める少し前から私は、庆应义塾大学の教员となり研究室を持つようになった。フリーのデザイナーとして、そこそこ知られるようになっていた私の元に集まった学生たちからは、否応无しに「この先生のようになりたい」という思いが伝わってきた。それに応えられるのかどうかはわからないが、ともかく私は、自分の思考方法や仕事の流仪を彼らに伝えようとした。いつも何を见ているのか、何を面白いと思うのか、どう観察し、何をもって発见したとみなすのか。さらには、アイデアの出し方や造形のスキル、いつ仕事をし、どう休みをとるのか、なぜその仕事に価値があると思うのか。そんなことを全部伝えてみようと思った。それは、かつて私自身が欲しかった「先生」だったからである。
漫画を描くことに明け暮れていた学生だったある日、私は工业デザインという仕事を知った。それは自分が大学で学んだ机械工学と漫画の両方を活かせる仕事のような気がした。しかし东京大学にはそれがどのような仕事なのかを教えてくれる先生はほとんどいなかった。たったひとつ「工业意匠」という授业を见つけ、その先生に教えてもらった本や技法书読み渔った。ともかくほとんど独学で、结局本当にデザインとデザイナーを学べたのは、运良く自动车会社のデザイン部に职を得てからだった。だから私は过去の自分への赠り物のつもりで、学生たちに语りかける。
ある時からツイッターは、その記録になった。授業や研究会、学生たちとの食事、立ち話などで伝えた内容を簡潔にまとめて、空いた時間に呟く。時には絵や写真も添える。やがて、伝え足りなかったことや、これから伝えたいことなども呟くようになった。そうした私の言葉は思ったよりも多くの人の共感を得たようだった、7年が経った今ではフォロワーも7万 (2020年には96,000) を超えている。
この书籍の大部分は、そうやって缀ってきた私のつぶやきからいくつかを拾い上げ、より详しくより丁寧に语り直したものである。
(紹介文執筆者: 生産技术研究所 教授 山中 俊治 / 2020)
本の目次
第二章 日常の観察
第叁章 つくる人の视界
第四章 スケッチの役目
第五章 仕事の作法
第六章 空へ
関连情报
デザインの小骨话 (日経クロストレンド 2018年4月25日~)
著者インタビュー :
[音とデザイン 第3回] 美しさにはデザイナーの「生命観」が問われるコンセプター坂井直樹さん×デザインエンジニア山中俊治さん (わたしのオト 2020年5月1日)
メディアアーティスト?市原えつこさんが、東京大学 生産技术研究所?山中俊治さんに聞く、「生命というテーマとの向き合い方」 (Qonversations.net 2018年11月2日)
着者プロフィール:
山中 俊治 (やまなか?しゅんじ)
東京大学生産技术研究所?東京大学大学院情報学環?教授。
1982年東京大学工学部产业機械工学科卒業後、日産自動車デザインセンター勤務。
1987年よりフリーのデザイナーとして独立。1991词94年まで东京大学客员助教授を务める。
1994年にリーディング?エッジ?デザインを设立。
2008~12年庆应义塾大学制作?メディア研究科教授。2013年4月より东京大学教授。
デザイナーとして腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、技术者としてロボティクスや通信技术に関わる。詳細なユーザビリティテストを通じてSuicaをはじめとする日本全国のICカード改札機の標準UIをデザインした。大学では義足や感覚に訴えるロボットなど、人とものの新しい関係を研究している。
2004年毎日デザイン賞受賞、ドイツIF Good Design Award、グッドデザイン賞受賞多数。2010年「Tagtype Garage Kit」がニューヨーク近代美術館パーマネントコレクションに選定。近著に『デザインの骨格』(日経叠笔社、2011年)、『カーボン?アスリート 美しい義足に描く夢』(白水社、2012年) がある。