新潮文库 シェイクスピアの正体
ウィリアム?シェイクスピアの戯曲は今日でも频繁に上演され、シェイクスピアは英国を代表する重要な作家として高く评価されてきた。だが、大学へも行かなかったストラットフォード?アポン?エイヴォン出身の田舎者にあんなすばらしい作品が书けたのかという疑问が浮かび、シェイクスピア作品を书いたのは谁か别の知识人であって、田舎出の役者の名前を借りて作品を発表したのではないかと囁かれるようになった。シェイクスピア别人説である。
いわく、シェイクスピア作品を手掛けたのは、当时最大の知识人?哲学者にして政治家でもあったフランシス?ベーコンではないか。いや、自ら诗作も行ったオックスフォード伯爵だ。いやいや、シェイクスピアと同い年で谜の死を遂げたとされていた剧作家クリストファー?マーロウが実は死んでいなかったのだ&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。本书で绍介する主要候补者は七人だが、さらにはそうした人たちが协力し合って书いたとか、そのグループにはエリザベス女王も加わっていたとか想像は広がっていく。そうした诸説に耳を倾けると、エリザベス朝时代にどんな人たちがいてどんな时代だったのかがわかってくる。
本書は謎解きの様相を示し、推理小説風に “真犯人” は誰かと検証を加えていく。だが、この作業は決しておもしろ半分に進めるわけにはいかない。別人説を信じている人たちは真剣で、学会を作っているほどだからだ。たとえば、シェイクスピア俳優デレク?ジャコビでさえ、「シェイクスピアはオックスフォード伯爵だ」と公言しており、BBCが2019年にShakespeare Uncoveredというシェイクスピア作品绍介の顿痴顿を作成した际も、ジャコビは「田舎者のシャクスペアは蔵书も遗していない。本も持っていなかった男があんな作品を书けたわけがない」と述べている。确かに「シャクスペア」は手纸も遗しておらず、自分の痕跡を消そうとしていた様子がある。なぜなのか。本书は当时の时代が抱えていた大きな闇も明らかにする。
本书はさらにもう一つ大きな谜を明らかにする。当时の剧作家ロバート?グリーンがその小册子『叁文の知恵』のなかで、シェイクスピアを「成り上がり者のカラス」と揶揄しているとされ、シェイクスピア学者たちの常识のように扱われてきた。しかし、揶揄されているのは、シェイクスピアではなく、どうやらグリーンが金の无心をした当时の花形役者エドワード?アレンらしい。それがどうしてシェイクスピアだと决めつけられ、信じられてしまったのか。
シェイクスピア别人説を信じる人たちの思い込みと、シェイクスピア学者たちの思い込み。検証を加えていくと、どちらも似ていることがわかる。そう认识できると、我々が学问の根拠としている「事実」は果たして我々が「信じている」ほど确かなものなのかという疑念が涌いてくる。疑うところから学问は始まる、少なくともそう信じることはまちがっていないだろう。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 河合 祥一郎 / 2019)
本の目次
第一章 シェイクスピア別人説
第一節 田舎者シャクスペアがシェイクスピアであるはずがない!
第二節 七人のシェイクスピア候補たち
第二章 その時代に何が起こっていたのか
第一節 恐ろしいカトリック弾圧
第二節 正体を隠せ
第三章 「成り上がり者のカラス」の正体は?
第四章&苍产蝉辫; シェイクスピアとはだれか――结论
注
関连年表
あとがき――谜解きは続く
文库版あとがき
関连情报
若村麻由美さんと『シェイクスピアの正体』出版記念トークショー (La kaguにて 2016年5月27日)
书评:
『しんぶん赤旗』2016年6月5日
『週刊ポスト』2016年6月17日号 (鴻巣友季子)