人口问题の正义论
人口问题は、古くて新しい问题である。古くはマルサスの时代から、等比级数的な人口増加を悬念しての人口抑制にかんする议论がある。20世纪后半以降、地球规模の人口変动や移动を伴う地球环境问题や移民?难民问题が、喫紧に解决しなければならない问题として取り上げられてきた。
本書『人口问题の正义论』は、こうした問題に対し、規範理論の側から応じようという気運が高まっていることを背景に編まれたものである。その端緒となるのは、デレク?パーフィットの『理由と人格』(1984) である。パーフィットは、構成員もその数も異なる人口集団を伴う事態を比較評価するにあたって、功利主義や契約論といった既存の規範理論ではわれわれの直観に適う原理的診断を下すことができないとし、「理論X」の探究こそが規範理論上の根本課題であると唱えた。
その課題に取り組むのが、第I部の二論考である。第1章の鈴木真論文は、功利主義のいくつかのヴァージョンを福利水準ゼロの地点を基軸にして使い分ける「正負場合分け功利主義」を提案する。第2章の井上彰論文は、近年有力視されている分配的正義論上の考え方である充分主義が、理論Xの要件を充たないことを示す論考である。将来世代の正義論に切り込む第V部の二論考 (第9章の宇佐美誠論文、第10章の森村進論文) と併せて読むと、人口正義論の最先端の議論を知ることができる。
もちろん、本书は古くからの问题である最适人口规模や人口抑制にかんする问题に向き合う论考も収録されている。第3章の釜贺浩平论文は、最适人口规模を适正に示しうる功利主义的评価方法を探る论考である。第4章の松元雅和论文は、人口抑制策が直面する基本的人権の问题に応答しうる理论を探る论考である。両者とも、世代间にも适用しうる最适人口规模の経路および自由に抵触しない人口抑制策を探る点で、积极的な提言を伴う理论の构筑を目指したものとなっている。
こうした最适人口规模や人口抑制といったマクロな问题は、子どもをもつ権利といった生殖の正义の问题にもつながっている。第5章の野崎亜纪子论文は、日本における生殖にかんする社会政策を题材に、子どもをつくることが有する公私にまつわる复合的侧面に迫る论考である。第6章の鹤田尚美论文は、近年注目されている「反出生主义」が重んじる苦痛に焦点を当てると、个别の痛みや苦しみがより豊かな人生につながりうることを指摘する论考である。いずれの论考も、ミクロな问题が哲学的な根本问题とつながっていることを知るうえで有益である。
本书のもう一つの柱とも言うべき、人口の水平的な移动に起因する移民?难民问题を扱った第滨痴部も必読のパートである。第7章の福原正人论文は移动の自由と国家主権の紧张関係に、第8章の岸见太一论文は外国人家事労働者问题という先进国が抱える実践的问题に、それぞれ切り込む论考である。いずれの论考も、同様の问题に直面している日本の移民?难民问题を根本的に考えるうえで极めて有益な论考である。
いずれの论考も力のこもった论考である。人口问题という古くて新しい问题に规范的観点から真挚に向き合うためにも、多くの人に本书を手に取ってもらいたい。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 井上 彰 / 2019)
本の目次
第滨部 人口问题の哲学的基础
第1章 いとわしさと嗜虐のあいだ――「正負場合分け功利主義」の挑戦 鈴木 真
第2章 充分主義の検討――人口倫理学の観点から 井上 彰
第滨滨部 人口规模の问题
第3章 人口問題と功利主義――最適人口規模と世代間評価への拡張 釜賀 浩平
第4章 人口抑制の道徳的是非 松元 雅和
第滨滨滨部 生殖と家族计画の问题
第5章 子どもをもつ権利――生殖とリベラルな社会の接続を考えるために 野崎 亜紀子
第6章 生殖の正義と人口問題 鶴田 尚美
第滨痴部 人口移动の问题
第7章 人の移動と国境管理――参入、離脱、受容可能性 福原 正人
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;第8章 人口减少时代への対応としての外国人家事労働者の受け入れ
――相互行為と構造という二つの観点からの規範的考察 岸見 太一
第痴部 世代间正义の问题
第9章 人口問題における世代間公正 宇佐美 誠
第10章 互恵性は世代間正義の問題を解決するか? 森村 進
あとがき 井上 彰
引用?参考文献
索引