Routledge Research in International Law Nationalization, Natural Resources and International Investment Law Contractual Relationship as a Dynamic Bargaining Process
本書は、筆者が1987年9月に東京大学大学院法学政治学研究科に提出した博士学位請求論文 (「資源国有化紛争の法過程」、1988年3月東京大学法学博士学位授与) に改訂を加えた単著『資源国有化紛争の法過程』(国際書院、1990年) の内容をアップデートし、英訳したものである。
本書において、筆者は、発展途上国の鉱物資源?石油資源の開発に多国籍企業が従事する場合 (「国境を超える資源開発」) に、当該多国籍企業と受入国政府や受入国国営企業との間で形成される長期にわたる法律関係に着目し、これを「国境を超える資源開発の法過程 (legal process of natural resource development)」と名付けた。国境を超える資源開発の法過程の中核となるのは多国籍企業と受入国政府?国営企業が締結する資源開発合意である。国境を超える資源開発の法過程は、資源開発合意の締結から終了まで数十年にわたる資源開発事業を通じて、合意の解釈適用や改訂、さらには一方的破棄?終了に至る当事者間の関係と、そこにおいて動員される各種の法 (受入国国内法、国際法、他の資源開発合意、国際機関の策定するソフトロー等) によって構成される。従来の国際法学は、資源開発合意が受入国によって一方的に破棄され、多国籍企業の資産が国有化される場合の国際法上の合法性に関心を集中させてきた。しかし、筆者によれば、これは国境を超える資源開発の法過程における例外的な事例でしかない。国境を超える資源開発において、多くの場合、資源開発合意は状況の変化に応じて柔軟に改訂され、当事者間の利益配分や権利義務関係が見直される。本書で筆者は、国境を超える資源開発が本格化した19世紀末以降、1980年代初頭までの国境を超える資源開発の法過程を構成する多数の資源開発合意や、受入国の国内法、国際法や国際機関?資源産出国の国際組織や国連等が策定するソフトローを渉猟して分析し、国境を超える資源開発の伝統的な法過程が現代的な法過程へと発展を遂げたこと、その過程で合意の改訂を規律するソフトローが重要な役割を果たしたことを明らかにした。
资源开発合意の一方的破弃?国有化を规律する国际法をめぐる议论は今日も続いているが、合意改订を规律するソフトローの重要性を指摘した研究は今日においても本书以外に存在しない。その点を评価して、搁辞耻迟濒别诲驳别社は、原着の出版からほぼ30年を経た2017年に本书の刊行を引き受けた。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 中川 淳司 / 2018)
本の目次
第2章 資源開発合意
第3章 合意準拠法
第4章 国有化規律法
第5章 合意改訂規律法
第6章 国境を超える資源開発の法過程: 結論
終わりに 原著刊行から30年を経て変化したこと、変化しなかったこと
付録1: 資源開発合意一覧
付録2: 資源開発合意一覧の参考文献
参考文献
索引
判例索引
Chapter 2 Agreements for the development of natural resources
Chapter 3 Governing law of agreements
Chapter 4 Governing law for nationalization
Chapter 5 Governing law for revising agreements
Chapter 6 Legal process of natural resource nationalization disputes: concluding remarks
Postscript
Appendix 1: List of agreements for the development of natural resource
Appendix 2: References for the list of agreements for the development of natural resources
References
Index
Index of cases