自动运転と法
人工知能 (AI) を利用した自動運転技术の進展が著しい。自動運転技术の進展によって、自動車の運行にかかる既存の法制の見直しが迫られることになる。道路交通法のような行政法規はもとより、刑事責任や民事責任に関するルールについても検討が必要となる。しかし技术の進展のめざましさに比べ、自動運転に対応した法整備の検討は、まだ始まったばかりである。研究者?実務家による検討の成果である本書は、自動運転にかかる法制度のあり方について、さまざまな角度から分析を試みるものである。
自動運転の現況について検討?紹介する第1部「自動運転の現況」と、自動運転に関する法制度について解釈論?立法論的な検討を行う第2部「自动运転と法制度:事故と補償を中心に」に分かれる。第1部第1章「自動運転技术の現況」は、自動運転の基礎となる技术について説明すると同時に、その現状や発展の方向性について考察する。第2章「自動運転にかかる法制度の検討の現況」は、世界及びわが国において、自動運転に関する法制の検討がどのように進んでいるかを概観する。第3章「自動運転をめぐるドイツ法の状況」、近時、自動運転の進展を反映させる道路交通法を改正したドイツ法について、第4章「自動運転をめぐるアメリカ法の状況」は、自動運転車が起こした事故にかかる運転者及び自動車製造者の責任について、アメリカの立法動向を検討する。
本書第2部は、自動運転に関する法制度を扱う。第1章「自動運転をめぐる規制上の問題」は、自動運転が交通に関する行政的規制にどのような修正を要求することになるかにつき検討する。行政的規制が自動運転技术の発達に応じて適切に改正されないと、その実用化に対する大きな障害になるため、これらの検討は喫緊の課題である。
第2部第2章以下は、事故にかかる民事責任について扱う。まず第2章「自動運転と運行供用者の責任」が自動運転にかかる自動車損害賠償保障法上の責任について、第3章「自動運転と販売店?メーカーの責任」が、販売店やメーカーが負う可能性がある製造物責任法、民法上の責任について検討を行う。第4章「多当事者間の責任の負担のあり方」では、前2章を踏まえて、事故にかかわる複数の人間の分担 (過失相殺?求償等) を論じる。第5章「自動車のソフトウェア化と民事責任」は、自動運転にかかわるソフトウェアや情報の提供者や受領者の法的な立場を分析する。第6章「自動運転と保険」は、自動運転車の引き起こす事故にかかるリスクに対して、いかなる形で保険が対応しうるかが取り上げられる。最後に、第7章「自動運転をめぐる民事責任法制の将来像」では、本書のむすびとして、自動運転技术が相当程度進化した段階における立法論的な課題を論じる。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 教授 藤田 友敬 / 2019)
本の目次
第1章 自動運転技术の現況(杉浦孝明)
第2章 自动运転にかかる法制度の検讨の现况(池田裕辅)
第3章 自动运転をめぐるドイツ法の状况(金冈京子)
第4章 自動運転をめぐるアメリカ法の状況(後藤 元)
第2部 自动运転と法制度──事故と補償を中心に
第1章 自動運転をめぐる規制上の問題(緒方延泰?嶋寺 基)
第2章 自动运転と运行供用者の责任(藤田友敬)
第3章 自动运転と贩売店?メーカーの责任(洼田充见)
第4章 多当事者間の責任の負担のあり方(佐野 誠)
第5章 自动车のソフトウェア化と民事责任(小塚荘一郎)
第6章 自动运転と保険(池田裕辅)
第7章 自动运転をめぐる民事责任法制の将来像(藤田友敬)
関连情报
東京海上研究所、東京海上日動火災保険 シンポジウム「自动运転と法」 (2018年1月)
书籍绍介:
編集担当者によるBook Information (『法学教室』No. 449 2018年2月)
新刊绍介 (『日刊自动车新闻』 2018年2月17日付)
书评:
齊藤友紀 (株式会社メルカリ社長室弁護士) 評 法務のためのブックガイド2019「AI技术の社会実装に向けて法的課題を考える出発点」 (『ビジネス?ロー?ジャーナル』 2019年2月号)
榊素寛 評 BOOK REVIEW (『自由と正義』Vol.69 No.9 2018年9月号)
中山幸二 (明治大学自動運転社会総合研究所所長) 評「自動運転社会の衝撃 技术が変える法と人間観」 (日本経済新聞朝刊 2018年6月23日)