国际主义との格闘 日本、国际连盟、イギリス帝国
国際主義 (internationalism) とは、ナショナリズムと対になる概念で、異なった国々の協力や相互理解に基づく国際社会を考えることを言う。第一次世界大戦後に設立された国際連盟は、国際主義を基盤とする機関であった。
ところが、国际连盟は设立の际の第一の目的であった平和の维持に失败したため、あまり関心を持たれてこなかった。连盟に関して、日本が満洲事変をきっかけとして脱退した国际组织という以上の认识を持っていない人は多いのではないだろうか。しかし、近年、保健卫生、アヘンなどの麻薬や人身売买の取り缔まり、难民の救済、ユネスコにつながる知的国际协力などの社会人道面では连盟がかなりの业绩を上げていたことに目が向けられるようになってきた。
この側面における連盟の活動は東アジアにまで及んでいた。本書は、国際連盟が保健衛生分野をはじめとする専門的、技术的側面で中華民国の国家建設に協力したことに注目し、このような活動が当時の東アジアの国際関係にどのような影響を及ぼしたかについて検討している。
「协力によって东アジアには平和友好の时代が到来した」と书ければ良いのだが、事态はそのようには展开しなかった。第一に、东アジアの状况は第一次世界大戦前とあまり変化してはいなかった。本书第一部で検讨するように、日本は、帝国秩序の残存する中で自らの権益を维持拡大することを望み、国际主义の东アジアへの到来、その理想主义的な、现状を変革しようとする动きに反発を强めていった。では、协力を受ける中国は、国际主义を全面的に歓迎していたのであろうか。第二部では、主として国际连盟およびイギリスの外交史料を用いて、国民政府の中には协力が国内への介入につながると危惧する人々も存在したことに光を当てる。
第叁部では、まず、第二次世界大戦を経て、国际连盟の社会人道面での活动が国际连合、とくにその経済社会理事会に引き継がれていったことを示す。次いでアヘンの取り缔まりを事例として、国际机関を生み出し支える侧にあったイギリスですら、帝国という侧面においては国际主义と格闘せざるを得ず、最终的に帝国秩序は変容を迫られていったことを描く。
以上のように、本书では、国际连盟が国际主义を体现するアクターとして、戦间期东アジアで意外にも活発に活动していたことを示す。そしてその活动は、必ずしも平和友好、协调のみをもたらすものではなく、日本、中华民国、イギリス帝国のすべてが対処のため苦闘していたのである。国际连合は连盟期の経験を踏まえ、経済社会的活动を切り分ける构造を採用した。最后に、本书での検讨から何か教训をくみ取るとすれば、国际主义やその担い手が完全无欠ではないからといって、それを全面否定するのではなく、あくまでも国际社会の中に踏みとどまり、全体にとっても自分たちにとってもより良いルールを生み出せるよう、力ではなく言叶を用いて交渉すべきということではないかと考える。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 後藤 春美 / 2016)
本の目次
第一章 国际主义と帝国
第一部 国际主义と日本の格闘
第二章 国际连盟の思惑と中国の引力
第叁章 満洲事変期の连盟、イギリス、日本
第四章 日本の连盟脱退通告と天羽声明
第五章 中国にとって连盟とは
第二部 国际主义と介入
第六章 日中戦争勃発后の连盟と中国
第七章 ビルマロードとイギリス帝国
第叁部 戦后への継承と帝国の変容
第八章 国際連盟から国際連合へ -- イギリスの演じるべき役割
第九章 国際社会の要請とアヘン問題 -- 桎梏としての帝国
终章
関连情报
西山喬貴 評 (『西洋史学』264巻、p.243-245 2017年)
2016年8月28日『読売新闻』12面に掲载
(インターネットでは2016年9月5日付けで下记に掲载)
2016年11月16日『东京财団』に掲载