気候変动は社会を不安定化させるか 水资源をめぐる国际政治の力学
洪水、干ばつ、台风、热波などの异常気象が人々の生活を胁かす规模と频度が増加している。それにともない、気候変动による自然の衝撃が社会を不安定化させて武力纷争に発展させるのではないかと悬念されている。しかし、自然环境の悪化は必ずしも人々の対立の直接的な要因になるわけではない。资源获得竞争や异常気象への対応を利用しようとする政治の思惑が、社会の不安定化を招き寄せる。他方、国家や草の根社会による缓和と适応が自然の衝撃を和らげ、社会の安定を取り戻すこともある。それでは、気候変动による自然の衝撃は社会と政治にどのようなストレスをもたらし、いかなる过程を経て社会の不安定化、资源获得竞争、国家の动揺、武力纷争、难民?移民の流出などの现象を引き起こす原因となるのだろうか。
本书は、科研费および叁菱财団の研究助成を受けて実施した3年间の研究プロジェクト「気候変动と水资源をめぐる国际政治のネクサス―安全保障と厂顿骋蝉の视角から」の成果である。国际政治学者の藤原帰一と竹中千春を中心に14名の研究者が気候変动をめぐる政治力学をとらえる议论に挑んだ。
第1部では、気候変動という課題に取り組むために必要な国家と国際社会における政治の議論を提示すると同時に (第1章、第3章)、気候変動対応をめぐって各国政府、NGO、専門家グループ、民間企業等を含む多くのアクターが関与する多中心的アプローチを描き出した (第2章)。さらに、英国やシンガポールでは未来構想の一環として気候変動のリスク評価が行われたり (第4章)、気候工学では技术的に地球の表面温度を下げる太陽放射改変の適用が議論されるなど (第5章)、先進的な気候変動対応が模索されていることを示した。
第2部では、水をめぐる紛争に関するデータベースの比較によって地理的分布を探ったうえで (第6章)、イスラエルとパレスチナ (第7章)、アフリカ?サヘル地域 (第8章)、インドのジャンムー?カシミール (第10章)、中印国境 (第11章) において、気候変動による水資源管理の変化が既存の対立や不平等を助長するプロセスを描いた。また、水不足に直面したフィリピンのマニラ首都圏 (第9章) や洪水に見舞われたインドのビハール州 (第12章) において水資源確保や災害対応が政治化されるプロセスを描いた。最後に、干ばつに見舞われるアフガニスタンで人々に寄り添い続けた中村哲医師の活動を事例として、気候変動の影響を緩和する開発援助と平和構築のあり方を示した (第13章)。
本书の特徴は、国际政治や国际行政论の研究者およびアジア、アフリカ、中南米の地域研究者が执笔している点にある。各研究分野において気候変动がどのような现象や议论を起こしているかをとらえると同时に、地域に根差した観点から気候変动の影响を议论する重要性を提示した。执笔者に共通する问题意识は、気候変动と政治の関係を明らかにしたいと望む点にある。特に第2部では、気候変动による自然环境の変化が人々の対立につながる政治的プロセスを具体的な事例から描き出すことに挑んだ。世界各地を网罗する事例を読み通すことで、地域を超えた共通性と地域的特殊性の両方が描き出されていることを読み取ってもらえれば嬉しい。そして本书が、気候変动政治をめぐる国内外での议论の活性化に贡献することを愿う。
(紹介文執筆者: 未来ビジョン研究センター 特任講師 華井 和代 / 2023)
本の目次
第1部 気候変动政治をめぐる理论分析
第1章 21世纪のパンデミック政治と気候変动政治のネクサス【竹中千春】
第2章 気候変动対応をめぐる多国间主义のレジリエンス【】
第3章 エコロジー的近代化とその限界【】
第4章 気候変动と纷争のネクサスおよび英国とシンガポールのリスク评価体系【】
第5章 気候変动および太阳放射改変の纷争リスク【】
第2部 グローバル?サウスにおける気候変动政治の実态
第6章 水をめぐる纷争はどこで起きているのか:各种データベースの比较検讨を通じて【和田毅】
第7章 技术発展および気候変動がもたらす影響:イスラエル?パレスチナの水紛争【錦田愛子】
第8章 気候変动から纷争への経路:アフリカ?サヘルを事例に【华井和代】
第9章 豊かな时代の「欠乏」:マニラ首都圏における水、统治、日々の政治【ナジア?フサイン】
第10章 纷争地域における気候リスクと政治変动:インド、ジャンムー?カシミール州の事例から
【永野和茂】
第11章 気候変动がもたらす中印水纷争への影响:ヤルンツァンポ-ブラマプトラ川の事例から
【ヴィンドゥ?マイ?チョタニ】
第12章 気候変动と民主主义:インド?ビハール州における洪水とその政治的含意【中沟和弥】
第13章 干ばつと戦禍のアフガニスタンから国際政治を見る:中村哲?「命の水」灌漑プロジェクトが照らす人道支援の方途【清水 展】
関连情报
関连シンポジウム:
『気候変动は社会を不安定化させるか』出版記念シンポジウム (東京大学未来ビジョン研究センター (IFI) SDGs協創研究ユニット 2022年12月14日)