ネオリベラリズム都市と社会格差 インクルーシブな都市への転换をめざして
本书は、グローバルに进展する社会格差の问题について、日本ではじめて都市政策?国土政策の観点から体系的に论じた书物である。近年、世界中で社会格差が大きな问题となっている。社会格差问题を空间的観点からみると、大都市と地方间の地域格差问题、とりわけ巨大都市圏への集中问题という国土スケールでの问题と、巨大都市圏内部での都市内格差问题という都市スケールでの问题から构成される异なるスケールでの社会格差问题が同时に起きていることが指摘できる。このような背景のもとで、近年、各国?都市が共通してネオリベラリズム都市政策のもとで社会的格差の拡大と都市内の空间的格差、国土スケール地域格差の深刻化を経験しており、このような空间分断に対抗するための新たな国土?都市?住宅政策论の构筑が必须の课题となっている。一般に、ネオリベラリズム政策とは、それまでのケインジアン的福祉国家政策に代わって、规制缓和のもとでのマーケット重视の経済政策、社会住宅を含む福祉セクターへの政府支出の削减、减税と地方分権のもとでの国の所得再分配机能の削减等を基调とする政策として理解することができる。従来、开発主义体制として规定されてきた日本においても、特に、2000年代以降、ネオリベラリズム政策が主流化したことが指摘されている。日本では、かつての地域政策が地方交付税交付金や补助金、公共投资、工场栋の大都市への立地规制等を通じて、政府による所得再分配政策のもとで大都市の过密抑制、地域格差の平準化を目指した。これに対し、1980年代の中曽根政権の民活政策にはじまり、とりわけ2000年代の小泉政権において広范に展开されたネオリベラリズム的な地域政策のもとでは、政府の所得再配分机能が弱められると同时に、いわゆる「选択と集中」の掛け声のもとで、特区制度等、市场条件のよい地域での选択的规制缓和と竞争的补助金の选択的投入が强められる结果、市场条件のもっともよい大都市への一极集中と全般的な地方の衰退に加えて、大都市内部での空间格差が拡大すると同时に、地方圏内においても発展する地方と衰退する地方への二极分化が进行することになった。
拡大する社会格差の问题に対して都市政策、国土政策はどのように応え、社会的に公正な都市と国土へと転换していくことができるだろうか。その键はインクルーシブな都市をつくることにある。インクルーシブな都市とは、社会的公正の観点から社会的格差とそこから生まれる空间的格差を解消するとともに、多様な人々を受け入れる寛容性をもった都市のことである。この基本的问题意识のもとで、本书は、ますます深刻化する国土と都市の空间的格差の実态とそのような格差を生み出す要因を解明するとともに、インクルーシブな都市へと転换していくための道筋を示す。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 城所 哲夫 / 2022)
本の目次
第滨部 理论篇
第1章 ネオリベラリズム都市の誕生(城所哲夫?福田 崚)
第2章 现代の国土政策とネオリベラリズム(瀬田史彦)
第3章 日本における社会格差と住宅政策の歴史的展开(大月敏雄)
第4章 社会的排除と包摂型地域再生(全 泓奎)
第滨滨部 事例篇
第5章 ネオリベラリズム的地域政策からインクルーシブな地域政策へ(菅 正史)
第6章 大都市インナーシティの再生:大阪市西成区に着目して(蕭 閎偉?城所哲夫)
第7章 移民大国になりつつある日本の多文化共生への道筋(藤井さやか)
第8章 東京圏郊外住宅地の再生(後藤 純)
第滨滨滨部 海外事例篇
第9章 欧州における都市の社会的?空间的不均衡と都市政策(片山健介)
第10章 米国のブラウンフィールド再生は何を目指すのか(黒瀬武史)
第11章 韓国:開発主義に基づいたネオリベラリズム空間政策と社会格差(林 和眞)
第12章 タイ:国土构造と地域格差の固定化(瀬田史彦)
関连情报
出版記念シンポジウム (東京大学 国際都市計画 地域計画 城所?瀬田研究室 2021年3月15日、25日)
第一回 日本と世界の社会格差问题
第二回 社会格差の実态と対策