サーキュラーエコノミー 循环経済がビジネスを変える
本書は、欧州連合 (EU) が2015年から始めた「サーキュラーエコノミー」政策について論じたものである。政策を中心に書かれているが、それは、環境問題?持続可能性問題、経済、技术、ものづくり、価値提供、そして、デジタル戦略と深く関わる話題であり、文系、理系を問わず手に取って欲しい。
サーキュラーエコノミーは、地球の資源枯渇を防ぎ、また、資源の採掘、消費、廃棄に関わる環境破壊を防ぎ、持続可能な社会を実現するために、作って、使って、捨てるリニアエコノミーから、資源を循環的に活用し、また、植物などの再生可能資源を使う経済社会に転換することを主張している。こう書くと日本では、循環型社会、3R (リデュース、リユース、リサイクル) の話でしょ、と考えがちであるが、それが欧州の雇用確保と产业競争力強化のための経済政策でもあるとしたところが、EUのサーキュラーエコノミー政策の新しさであった。本書は、このサーキュラーエコノミーが、単にリサイクルや3Rの話に留まらず、企業競争力の話であり、ものづくりや価値提供の在り方を変える話であると見破った所が画期的であった。実際、EUは、製品の設計のやり方、メーカからユーザへの情報提供のやり方、リサイクルの仕方に規制をかけ、大量生産?大量販売よりも、シェアリングやサブスクを推奨するなど様々な手を打ってきている。
地球温暖化対策に関して、日本政府や日本企業が世界の情勢について行くのがやっと (気候変動を話し合うCOP会議で日本は化石賞をよく貰う) という状況に見られるように、他に一歩先んじて強力な規制をかけ、それによって、持続可能性の問題解決を一歩進めると同時に产业振興を図るのはEUの常套手段である。本書は、この辺の事情にも切り込んでいる。他にも、プラスチックリサイクル問題、デジタル戦略、今後必要になるものづくり技术を論じており、さらには、欧州企業への現地調査、日本企業がこのサーキュラーエコノミーをどう捉えているかのインタビューなど盛り沢山の内容である。
本书は、サーキュラーエコノミーを论じた书籍としては比较的早く出版されたものであり、执笔阵が、资源循环やデジタルの専门家やマスコミ関係者と多彩であり、それが、21世纪政策研究所でじっくり议论を重ねた结果生み出されたものであるので、2021年の出版であるがその内容は未だ古びていない。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 梅田 靖 / 2023)
本の目次
序章 サーキュラーエコノミーが目指すもの [梅田 靖]
第1章 サーキュラーエコノミーとはなにか 摆赤穂启子闭
1 欧州の政策
2 欧州が颁贰に取り组む背景
3 颁贰に取り组む欧州公司
4 贰鲍における颁贰政策の进捗
5 「循環経済行動計画」
6 贰鲍加盟国の颁贰への取り组み
7 まとめ
补足 贰鲍「サーキュラーエコノミーパッケージ」の内容
EUの新たな循環経済行動計画 (Circular Economy Action Plan)
第2章 サーキュラーエコノミーは、いまどうなっているのか
――欧州の事例を中心に [喜多川和典?梅田 靖]
1 全体动向
2 标準化动向
3 プラスチックを巡る动向
4 欧州调査报告
第3章 サーキュラーエコノミーはデジタル戦略の重要な差别化要因 摆广瀬弥生闭
1 デジタルビジネスにおける环境変化
2 デジタルプラットフォーム戦略が国际标準化の覇権を握る键に
3 欧州企業のプラットフォーム戦略: CEXデジタル
4 プラットフォーム戦略がもたらす顾客接点强化
5 日本にとってのリスク
6 提言
7 さいごに: 日本型コミュニケーションの重要性
第4章 「ものづくり」視点からのサーキュラーエコノミー [梅田 靖]
1 ものづくりへの颁贰の影响
2 ものづくりの今后の姿
3 CEを実現するための技术
4 まとめ
第5章 日本公司とサーキュラーエコノミー 摆赤穂启子闭
1 「100年後を見据えた車作り」 本田技研工業株式会社
2 「お客様のライフサイクルに最適な価値を提供」 パナソニックETソリューションズ株式会社
3 「2030年の社会見据えCEに取り組む」 株式会社三菱ケミカルホールディングス
4 「素材の分別へ、設計と意識を改革」 大阪製鐵株式会社
5 「日本のメジャーリサイクラーを目指して」 大栄環境ホールディングス株式会社
6 「自動車 解体から利用へ」 株式会社永田プロダクツ
終章 今後予想される変化 [梅田 靖]
関连情报
あとがきたちよみ (けいそうビブリオフィル - 劲草书房編集部ウェブサイト 2021年2月2日)
インタビュー:
「所有から利用への転換が、資源循環の力に。競争優位へ導くサーキュラーエコノミーとは」 (『TIERRA+』Vol. 134 2021年6月号)
「サーキュラーエコノミーとデジタルの融合」 (『JECC NEWS』No. 562 pp.4-6 2019年秋号)
「欧州が打ち出した「サーキュラー?エコノミー」、裏にデジタル覇権争いあり」 (ニュースイッチ|日刊工業新聞 2019年8月15日)
「「デジタルとの融合が競争環境を変える」東大大学院梅田靖教授 サーキュラー?エコノミーの本質とは」 (METI Journal|経済产业省 2019年8月13日)
「東京大学大学院教授?梅田氏に聞く サーキュラーエコノミー、日本企業の対応」 (日刊工業新聞 2018年10月1日)
関连记事:
長島聡×梅田靖×石川彰吾「製造業注目! カーボンニュートラル/脱炭素社会に向けて~サーキュラーエコノミー:持続可能性とビジネス合理性、責任から前提へ~」 (株式会社オーツ―?パートナーズ 2023年3月3日)
「サーキュラー?エコノミーが経済の仕組みを変える」 (『月刊経団連』2023年2月号)
「サーキュラー?エコノミーへの取組の現状と今後の課題」 (サステナビリティ情報審議会ウェブサイト 2022年8月)
イベントレポート「東大大学院 梅田靖教授が語る サーキュラーエコノミーが変える、ビジネスの可能性」 (MTRL|株式会社ロフトワーク 2021年4月)
ベントレポート「ライオン?ブリヂストン?バンドー化学に学ぶ、サーキュラーエコノミー時代の生き残り戦略とは?」 (MTRL|株式会社ロフトワーク 2021年4月)
イベントレポート「サーキュラーエコノミー時代の事業戦略とは? ライオン?ブリヂストン?バンドー化学に学ぶ実践事例」 (Circular Economy Hub|ハーチ株式会社 2021年3月24日)
「ライフサイクル工学からみたCircular Economyへの取り組み」 (『経団連タイムス』No. 3376 2018年9月13日)
ポッドキャスト:
Circular Economy Hub Podcast 「循環対話」第6回「サーキュラーエコノミー移行で変わる、ものづくりの今後」
関连イベント:
サーキュラーエコノミー“生存戦略”セミナー~「ものづくり中部?における成長志向型の資源自律経済の実現に向けて~「循环経済がビジネスを変える ~ものづくり視点からのサーキュラーエコノミー~」 (オンライン|中部経済产业局 2023年1月17日)
「欧州に学ぶ 実装 サーキュラーエコノミー ~世界に飛躍するための、日本の「ものづくり」進化論~」 (オンライン |主催: 株式会社ビザスク 2022年11月24日)
第25回環境文化講演会「循環型社会からサーキュラー?エコノミーへ」 (航空会館|主催: 公益社団法人環境生活文化機構 2022年6月28日)
「ライフサイクル工学からみたサーキュラーエコノミーと社会的インパクト」 (オンライン|主催: 経営アカデミー、産学連携推進機構 2021年12月22日)
オンライン国際セミナー 「世界のグリーン公共調達と環境ラベルの最新動向」特別講演「サーキュラー?エコノミーとプラスチック資源循環」 (オンライン|主催: 日本環境協会 2021年11月25日)
「サーキュラーエコノミー時代の事業戦略とは? ――ライオン?ブリヂストン?バンドー化学に学ぶ実践事例」 (オンライン|主催:株式会社ロフトワーク 2021年2月19日)
すてるデザイン勉強会 vol.04「すてないためのライフサイクルのデザイン」 (オンライン|主催: 多摩美術大学 TUB 2021年11月25日)
くらしフェスタ2020「サーキュラー?エコノミー (循環経済)とは?~「ごみ」が「資源」になる未来~」 (オンライン|主催: 東京都消費者月間実行委員会 2020年10月23日~12月23日)
シンポジウム「CEが目指すもの~Circular Economyがビジネスを変える~」 (経団連会館|主催: 21世紀政策研究所 2019年5月15日)
セミナー「欧州CE政策により加速するビジネスモデルの転換」 (経団連会館|主催: 21世紀政策研究所 2018年7月27日)
関连书籍?报告书:
21世紀政策研究所新書78『シンポジウム (2019年5月15日開催)「CEが目指すもの~Circular Economyがビジネスを変える~」』 (21世紀政策研究所 2019年9月20日)
『欧州CEが目指すもの~Circular Economyがビジネスを変える~』 (21世紀政策研究所 2019年3月)
21世紀政策研究所新書72『セミナー (2018年7月27日) 欧州CE政策により加速するビジネスモデルの転換』 (21世紀政策研究所 2018年9月3日)