成年后见の社会学
これまで笔者がもっとも関心をもったのは、エリザベス?キューブラー=ロスの生と死に関する研究であった。ロスは自身の研究をこう位置づけている。死と死にゆく过程の研究は同时に生の研究であり、どう生きるかの研究であると。こうした生と死に向きあう研究への问题関心が根底にあり、成年后见をテーマとして选択するに至った。こうした笔者の修士?博士课程での成年后见に関する研究をまとめたものが本书である。
とはいえ、研究に取り组み始めた当初は、成年后见を、何からどのように论じたらよいか、非常に悩んだ。成年后见を扱う社会学分野での研究が、ほとんど存在しなかったからである。
そこで、成年后见制度が社会のどのような场面で必要とされているのか、谁が制度の利用を求めるかということを手探りで闻き取り、理解していくことから始めた。最初に调査したのは、生命保険会社である。保険金支払请求场面で、成年后见の必要性がどのように现场で立ちあがっていくか、その论理を明らかにすることに取り组んだ(4章1节)。同様に、信用金库などの地域金融机関、不动产取引の场面についても调査し、その理屈を确かめた。
つぎに問題となったのは、本研究が社会学全体に対し、いかなる理論的貢献を果たすものであるかという問いにどう答えることができるかであった。これについては、成年後見の社会化をキーワードにして、介護の社会化論を拡張、延伸させることが可能だと主張した。すなわち、民法学者が論じた「成年後見の社会化」論を整理し (2章1節)、それらが介護の社会化論を敷衍したものであることを指摘した (2章2節)。そうして、成年後見の社会化を論じることが、介護の社会化論の補完につながることを示した (2章3節)。これが社会学分野で成年後見を論じることの学術的意義となった。
具体的には、介護の社会化に関する研究で分節化されてきた、担い手と費用の社会化の議論を成年後見に転用して分析した (3章1節、3章2節)。この作業を通じ、社会化と一口に言っても、そこには制度の利用が引き起こすさまざまな現象があり、成年後見制度の普及が市民生活に及ぼす深く多様な困難を、既成の介護の社会化の用法では表現できないことに気づいた。成年後見の社会化という語を、既存の文脈から引き離し、より自由に、筆者独自の用法で用いていく必要があった。以降の4章5章の各節は、成年後見の社会化を再定義しようとする議論である。
たとえば、制度上の成年後見が社会化を理念として掲げながらも、その内実は法律家などの専門職に偏在した特異な社会化であったこと (4章2節)、また達成されたかにみえた社会化が、思わぬかたちで家計管理の個計化を強制するものとして運用され、それが想定されていなかったマネジメント負担を家族に押しつけるものであったことを論じた (4章3節)。これらは家族社会学の研究として位置づけられる。
さらに、本書には福祉社会学の研究としての要素もある。後見人の支援に関して、達成されうる射程範囲を示し (5章1節)、他方で、制度の利用が本人の生活にきわめて深刻な影響を及ぼす危険性について論じた (5章2節)。望ましい成年後見の支援の可能性を追求し、生活協同組合の事例研究を通して、本人の意思決定、財産管理、身上監護 (身上保護)、生活支援が共同体的価値観のなかで実現されることを真の社会化のあり方として提示した (5章3節)。
以上のように、本書は、成年後見の利用を通じてあらわれるさまざまな現象を分析対象とし、成年後見という法律上の概念を、調査にもとづき、社会学的に再構成した研究である。身上監護 (身上保護) をめぐって協議の場が設定されること、本人の居場所や最善の利益を多面的に捉えることが重要であること、専門家以外の諸アクターの実質的な関与が成年後見の社会化において重要な側面であることなどを、家族社会学や福祉社会学の知見として位置づけ、成年後見の社会化の用法にオリジナルな社会化概念を編み出している。この点に、既存研究にみられない本書の学術的な新奇性がある。
さいごに、冒头の笔者の问题関心に戻れば、本书は、ひとが住み惯れた地域で最期まで生き、限りある生を终え、旅立っていくこと、その过程をどう支えるか、共同体による支援のあり方を探求する研究であった。いまも研究は継続しており、とくにキリスト教や仏教といった伝统宗教における种々の共同体、地域の市民后见狈笔翱等が、成年后见を通じて、生と死、老いにどう向きあっていこうとするのかを明らかにしている最中である。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 助教 税所 真也 / 2022)
本の目次
序章 分析の视点と本书の构成
第1章 成年后见制度
第1节 成年后见制度の概要
第2节 成年后见の登场の背景
第3节 スローガンとしての「成年后见の社会化」
第2章 成年后见の社会化
第1节 「成年后见の社会化」の法学的理解
第2节 「介护の社会化」の社会学的理解
第3节 成年后见の社会化による「介护の社会化」の补完
第3章 成年后见制度と个人化
第1节 亲族后见人から第叁者后见人へ──家族の変化
第2节 市町村长申立制度の运用における中间集団の役割
第4章 成年后见による财产管理の社会化
第1节 生命保険の支払请求における成年后见制度の扱い──市场への包摂
第2节 家庭裁判所による后见人の选任基準の変化──士业専门职の主流化
第3节 成年后见による家计管理の社会化──家计の个计化と世帯分离
第5章 成年后见による身上监护の社会化
第1节 后见人による居住环境支援──本人の居场所の形成
第2节 身上监护と自己决定──协议の场の社会化
第3节 生活协同组合による成年后见──「身上监护」から生活支援へ
终章 本书における成年后见の社会化概念
1 成年后见の社会化概念の再评価
2 成年后见の社会化からみた个人?家族?市场?国家の関係
3 结び──成年后见制度のあらたな可能性に向けて
あとがき
文献
図表目次
初出一覧
助成一覧
事项索引
関连情报
サントリー文化财団2022年度海外出版助成 (2023年4月)
日本家族社会学会第2回奨励着书赏 (2021年9月)
第6回福祉社会学会 奨励著書賞 (2021年7月)
令和2年度三井住友海上福祉財団奨励賞 (高齢者福祉部門) (2021年11月)
中国语翻訳版:
税所真也着,胡澎ほか訳,『成年监护社会学』 (世界知识出版社,北京,370ページ 2024年2月22日)
书评:
藤崎宏子 評 (『比較家族史研究』36巻: pp.143-147 2022年3月)
大貫正男 評 (『生活協同組合研究』541号: pp.58-59 2021年2月)
中谷陽明 評 (『老年社会科学』42巻4号: p.377 2021年1月)
大風薫 (お茶の水女子大学) 評 (『家族関係学』39巻: pp.73-74 2020年12月)
天田城介 (中央大学) 評 (『家族社会学研究』32巻2号: pp.229-230 2020年10月)
本ヨミドク堂:医疗?健康?介护のコラム「増える第叁者の成年后见人、専门职が大半」 (测辞尘颈顿谤.ヨミドクター 2020年4月7日)
関连书籍:
税所真也,「地域福祉からみた成年后见――市民社会が支える看とり」上村泰裕?金成垣?米泽旦编『福祉社会学のフロンティア――福祉国家?社会政策?ケアをめぐる想像力』 (ミネルヴァ书房,辫辫.251-266 2021年11月)