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东京大学教员の着作を着者自らが语る広场

近世の町のイラスト

书籍名

近世政治空间论 裁き?公?「日本」

着者名

判型など

394ページ、础5判

言语

日本语

発行年月日

2018年9月7日

ISBN コード

978-4-13-020155-1

出版社

东京大学出版会

出版社鲍搁尝

学内図书馆贷出状况(翱笔础颁)

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歴史は、通常时间轴のなかで语られる。しかし本书では、时间轴だけでなく、具体的な空间と、そのなかで生き?行动する主体としての人间の関係を视野に入れて歴史を论じた。序章を「空间と主体の近世政治史」と名付けたのは、本书のこの立场を示している。
 
また、副题には「裁き?公?『日本』」と记した。本书が问い直そうとしたのは、「裁き」の视点から问い直す権力の质、「公」の在り方があぶりだす社会のありよう、「日本」という思考の枠组みである。本书ではこのような视点から、近世后期社会の変容と、その変容の中から生まれ出た新たな世界の希求を描き出した。本书のめざす政治史とは、狭い意味での政治机构论?権力编成论にとどまらない。また、本书は、裁判史?情报论?出版史?芸能史?洋学史研究という枠组みを超えて横断的な视野から分析することをめざした。
 
以上の記述からも明らかなように、本書で目指したのは歴史の動態的把握であり、いわゆる地政学が陥りがちな、固定的な地理学的要因の提示や、国家主義的見方 (山崎孝「地政学の相貌についての覚書」『現代思想』9、2017、P.56-58) とは一線を画す。各時期における歴史的空間の特質の追求により、むしろ、その空間の変化の具体像を明らかにしようとした。そのことによって、それらの歴史的空間の上で展開された、歴史的主体の行為の意味を浮き彫りにすることを目指した。
 
第一部においては、政権の中心となる江戸城を分析の対象に据えた。ここでは、江戸城を外堀まで含む広大な空間としてとらえたうえで、それを <中核空間><境界空間> に分節化した。<境界空間> は、堀内にありながら開門時には諸身分が往来できるという、城と都市の両方の特質が重なり合う空間である。この空間の存在とその特質は、これまで、政治史研究と都市史研究のはざまに沈み込み、意識化されていなかった。
 
幕府は、天皇?朝廷以下に規範を示すなど諸大名のなかでは卓越した権能をもち、広大な所領と、直轄都市?鉱山を支配していた。しかし「幕藩体制」を克服した真に中央集権的な政治体制を構築することはついになかった。そのなかで、評定所は、幕府の中央政権的な公権力 (「天下の公儀」) 機能として重要な、個別の支配を超えた複数の支配に亘る紛争の裁きを担っていた。
 
本書では評定所が、江戸城の <境界空間> に置かれていたことに注目して、その裁きの特質を解き明かした。評定所は、<境界空間> のなかにあって、一方では <中核空間> の役所中枢と連携し、他方では都市の機能に依拠しながら裁きを行っていた。評定所は、幕府と諸大名の、複合的で複雑な権力編成と複数の裁判権併存状況の中で、どのような内容の裁きを下すのかという点だけでなく、どのような方式で裁きの結果を示すのかについての精緻な裁判手順を構築しようとしていた。しかし、18世紀末この手順の体系は崩壊していった。
 
第二部では、18-19世纪以降、国际的な情报共有と竞合の舞台としての海洋空间が姿を现わしたことに注目した。第一に、海上での経度测量が実用化され、海域をも経度纬度のグリッドで捉えることが可能になった。第二に、蒸気船による大洋航海が実现されたことにより、それまでより格段に迅速で、航行行程について予测可能な、航海が可能となった。第叁に、このような动きと并行して、こうしたデータを収载した近代的海図を国际的に共有する态势が英国主导で模索されていった。海をめぐる国际的情报共有体制ともいうべき状况が「日本」を取り巻き始めていた。「日本」における単一主権に基づいた近代的国土の形成は、このようなあらたな意味をもった海洋のなかで模索されはじめたのである。第二部では、新たな海洋の登场と陆上の社会?国家のありようを、连続したものとして捉えた。
 
日本列島内では、近世になって社会のなかに商業出版が広がっていた。歌舞伎などの身体的パフォーマンスが、この商業出版と結びついて、動きつつある世界を表現する強力な民間情報メディアとして発達していった。新鮮な出来事、これから起こるであろうで出来事を表現した簡易な印刷物が、店頭で、そして寺社境内や祭りの場や路上で口上とともに、販売された。この情報メディアは、最幕末を除いては、「情報公開」という発想を欠いていた近世社会にあって、「日本」の外の世界を日常世界の中に注ぎ込む、目に見えない、しかし大きな水路をかたちづくりはじめていた。本書では、これらを、「近世的公開メディア (近世的な意味での公開機能をもったメディア)」と総称した。
 
そして、このような社会にあって、為政者に先んじて、新たな海洋空间の登场の意味を理解したのは、兰学者?洋学者たちだった。彼らは、権力者にとっては、诸刃の剣であった。一方では、西欧诸国との外交のうえで欠くべからざる存在であると同时に、既存の将军中心の秩序を相対化する视野をもった危険な存在でもあった。洋学者たちは、経纬度情报で充填された海洋情报を共有する西欧诸国に対し、どこまでを「日本」として主张するのか、「日本」をどのように可视化するのかという问いを、幕府に対し提起していく。
 
彼らが対欧米诸国への公开を念头に作り上げた「日本」図は、一见、私たちが见ても违和感のない近代的地図のようにみえる。しかし、その作成経过を踏まえて详细に観察してみたとき、现代とは异なる惊くべき発想にたった国土図が姿を现わす。この図は、「日本」の外形を、破线で表现していた。この破线は、测量点を结んだ线を意味することを凡例で明示し、纯粋に科学的手続きに立脚する地図であることを表明していた。それ以上の政治的意図は含まないというポーズをとっていた。同时にこの「日本」図は、国际的に合意されていない领域をも含んで「日本」として可视化するための慎重な工夫を内包させていた。
 
第三部では、このような近世後期の社会変容のなかで生まれ出た、新たな世界の希求の動きを明らかにした。ここで取り上げた洋学者渡辺崋山は、絵画を売って生活する職業画家であり、主君を支える藩の重臣 (家老) でもあった。かれは複数のアイデンティティの葛藤の中で、主君に依存しない新たな「公」の概念を掴みかけていた。それは、画家個人としての技量の自負に基づいた「公」の概念であった。崋山自身は、それをひとつの思想に結実させることができず、矛盾を抱えたまま自刃した。彼の最後行為、すなわち画家として使っていた絵画用の絹に、「不忠不孝渡辺登 (「不忠」な家臣であり「不孝」な息子である「渡辺登」(崋山の実名)) と大書したことは、その葛藤をみごとに表現している。
 
しかし、上位者の命令ではなく、複数の主体の議論に価値を置く「公議」という考え方は、大きな奔流となって社会のなかに広がっていった。19世紀半ばの変動の中で、開成所に集う洋学者たちは、幕府の洋学研究教育機関という本来の設置目的を超える自律的活動を展開し始めていた。そして、これまで知られてこなかったが、実は、1868年初頭、内乱期の江戸で、彼らの主導のもと、新たな政治空間=二院制議会が開設されたのである。その下院は「公議所」と名付けられた。(更新日 2020年3月9日)
 

(紹介文執筆者: 史料编纂所 教授 杉本 史子 / 2020)

本の目次

  序  章  空間と主体の近世政治史
 
第一部 政治空间としての江戸城と裁判 ― 「天下の公仪」を问い直す
  第1章 近世の政治体制と裁判権の特質
  第2章 城と都市のなかの評定所
  第3章 「公儀」の裁きとは何か
 
第二部  政治空間化する太平洋と「日本」― 地球的世界のなかの表現と公開
  第4章 異国異域情報と日常世界―近世的公開メディア
  第5章 公開される「日本」―新しい海洋の登場と政治文化の変容
 
第三部  新たな政治空間の模索と政体構想
  第6章 「画工」と「武士」のあいだ―渡辺崋山、身分制社会のなかの公と私
  第7章 開成所会議と二院制議会―慶応四年初頭、江戸の政治空間
 
  終  章  裁き?公?「日本」を問い直す
 

関连情报

シンポジウム:
法制史学会シンポジウム「日本近世の法と経済――杉本史子著『近世政治空间论』を素材として――」 (東京大学 东洋文化研究所大会議室 2020年2月1日)

 
书评:
山内昌之 (武蔵野大学国際総合研究所特任教授) 評 「18賢人が選ぶ日本史の新常識65冊」 (『週刊文春』1/3?10号 2018年12月26日)

 
书籍绍介:
『史学雑誌 2018年の歴史学会 回顾と展望』(第128编第5号、2019年5月)では、『近世政治文化论』について、近世、近现代の両方にわたる研究成果として、以下の各所で取り上げられた。

 
<近世>
?「四 近世后期政治史―幕政」の冒头、「近世后期~幕末维新期における评定所の裁判、社会情报の公开を担うメディア、新たな政体构想などをテーマに、空间论的视点を导入した政治史を提示する」(笔115)
 
?「十 文化?教育―书物文化」:「芸能や出版を「近世的公开メディア」として位置づけ、社会的な情报共有の动向を全体史のなかに位置づける」(笔132)
 
<近现代>
?「二 幕末維新―政治」:「開成所会議?(徳川家) 公議所という空間について、諸史料を丹念に分析し、通説に修正を迫る力作」(p153)
 
着者ホームページ:

 

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