日本语音節構造史の研究
本書は、「拗音」「二重母音?長母音」「撥音?促音」「清濁」等、日本语の音韻の、ごくごく基本的な要素の歴史を取り扱うものである。
日本语音韻史は、近代以降の日本语研究において、真っ先に着手された分野であり、多くの輝かしい成果を上げてきたが、必然的に、ジャンルの成熟と引き替えに、研究の停滞を招くことになった。決してすべての問題が決着したわけではなかったし、諸説が並立したまま放置されている事象、新たな解釈が出てくる余地のある事象も多いのではあるが、研究者の世代交代等により、むしろ現在の学界の共通理解が、概説書レベルまで後退してしまっている観があった。
本書は未解決の問題を掘り起こすと同時に、問題の所在自体が気づかれていなかった事象をも多く取り上げることにより、日本语音韻史研究に、新たな息を吹き込んだ著作であると自負するものである。とりわけ以下のような諸点において、概説書の記述にも影響を与えるような新見を提示している。
一つには、ウ段拗音の分布の偏り (原則としてシュ?ジュしか存在しなかった) を起点として、外来語音としての開拗音?合拗音の受容の問題を考察し、その上で、/CVU/音節の長母音化や音節組織の組み替えの問題へと議論を展開した点である。部分的な事実は以前から指摘されてきたものであるが、これらを独自の観点から、統合的に捉え直した。
また一つには、平安時代にはm音便?n音便という二つの撥音便があったとする従来の説を修正し、n音便を後続音に依存する量的撥音便と捉え直したことがある。これにより、従来の考え方 (二種の撥音便を認めない立場を含む) では説明の付かなかった諸事実のかなりの部分が説明できるようになり、現代語における撥音?促音の非対称性にも合理的な解釈が可能となった。さらには、m音便に並行する音価固定の促音の存在を予測し、懸案であったハ行四段動詞音便形の「ム表記」について、それがΦ音便の表記であった可能性を示した。
連濁の起源については、繰り返し指摘されている「濁音 (にごり) がアクセントに似た性質を持つ」という見解を積極的に継承し、従来の諸学説とはかなり発想の異なる、「内部境界強調説 (再分割説)」を提唱した。これにより、濁音の持っている「語頭に立たない」「単純語中に最大一回しか現れない」「平仮名?片仮名表記に反映されなかった」「古代語において前鼻音を伴っていた (多くの現代方言にもその痕跡を留めている)」等の諸事実を、統一的に説明できることを示した。
以上のように、本书においては多くの新説が提出されている。通説とされている学説であっても、不可解な部分が残されているならば、まったく别の、より合理的な説明ができるのではないか? 若い世代の皆さんには、そのような姿势で、ぜひ、それぞれの研究対象に虚心に取り组んでいただきたい。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 肥爪 周二 / 2019)
本の目次
第一章 本书の构成
第二章 本书の理论的立场
第叁章 上代语?先上代语?日琉祖语の音节构造
本 论
第一部 拗音论
序 章 拗音―その概念と分布の偏り
第一章 ア段拗音―拗音仮名「茶 (荼)」をめぐって
第二章 ウ段开拗音の沿革
第叁章 唇音と拗音
第四章 拗音?韵尾の共起制限
第五章 合拗音の受容
付 章 サ行子音の音価とサ行开拗音
第二部 二重母音?長母音論
第一章 /CVV/音節 (二重母音) の歴史
第二章 長母音成立の音韻論的解釈
第叁章 江戸语の连母音音讹
第叁部 拨音?促音论
第一章 二種の撥音便
第二章 m音便とウ音便
第三章 リ延長強勢オノマトペ―「ひいやり」「ふうわり」から「ひんやり」「ふんわり」へ
第四章 撥音と鼻音韻尾
第五章 ng韻尾?清濁の表記の相関
第六章 ng韻尾の鼻音性―?イの形を取る場合―
第七章 &笔丑颈;音便について
第四部 清濁論
第一章 清濁についての研究史―共通理解とすべき事柄
第二章 ガ行鼻濁音の歴史
第三章 連濁の起源
第四章 上代語における文節境界の濁音化
第五章 龍麿の仮説
第六章 尘音便の后の清浊
既発表论文との関係?参考文献?引用文献资料?后记?索引
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