Rural Worlds Rockites, magistrates and parliamentarians Governance and disturbances in pre-Famine rural Munster
1820年代前半のアイルランド農村地帯において、大規模な一揆が発生した。この一揆は「キャプテン?ロック」という架空のリーダーに率いられていたため、一揆勢はロッカイツ (ロックのしもべ) と呼ばれた。18世紀から19世紀にかけてのアイルランドでは農村一揆が頻発したが、ロッカイツ一揆は、暴力と組織性、政治観念の極端さ、そして政府による弾圧の激しさにおいて、特筆すべき存在と言える。
ロッカイツは、「キャプテン?ロック」の名において村掟を布告し、それに违反した人间に胁迫状を送ったり、その家に放火したり、所有する家畜を伤つけたり、あるいは本人に暴行を加えたり杀害したりするなどの行為を夜间に各地で行った。こうした振る舞いはアイルランドの农村一揆に通例のことだったが、ロッカイツの场合、首都ダブリンに存在した秘密结社が农村部に持ち込まれて组织が浸透していたため、一揆は前例のない规模で広がることになった。それだけでなく、ロッカイツはカトリック农民として「プロテスタントを虐杀する」ための一斉蜂起を计画し、そのための武器を製造してもいた。当时のアイルランドでは、土地および都市行政の実権は大部分がプロテスタントの手中にあり、またダブリンの中央政府のメンバーもプロテスタントであった。従って彼らの构想は一种の社会革命を意味した。こうした荒唐无稽とも言える构想を支えたのは、数年のうちに超自然的な出来事が起こって社会秩序が転覆すると告げる千年王国的な预言の流行であり、またアイルランド史における革命の时代だった1790年代の反乱――革命フランスの援军のもと、「アイルランド共和国」を建国しようとした――の记忆であった。
このようなロッカイツに対して、中央政府および农村の地主阶层は厳しい姿势で临んだ。军队がグレートブリテンから派遣されて警察と共同で毎晩のパトロールを行い、全土で数千人を逮捕した。うち数百人がオーストラリアに流刑となり、処刑された者も数十人に达した。こうした一时的な措置だけでなく、中央政府は警察を强化し、同时に司法制度を改革するなど、アイルランド农村の统治改革を开始した。これは、アイルランドの地方统治における名望家支配の终焉と官僚的中央集権化の第一歩を画する。
この时期のアイルランドは、グレートブリテンと连合王国をなしており、一揆などのアイルランド问题は、连合议会において野党が政府を攻撃する格好の材料となった。このため连合王国政府は、上记の警察?司法制度改革に加えて、悬案事项だった教会税の改革を実现することで、机先を制して批判を封じようと试みた。この点でロッカイツの一揆は、アイルランド史における「改革の时代」の口火を切ることにもなったのである。
こうした広がりを持つロッカイツとその生きた时代について、本书は、アイルランド、イギリス、アメリカの文书馆において、警察関係史料や地主の所领记録、政府関係者の所管などを手広く调査し、一部に未开拓の史料も活用することで、実像に迫ろうとするものである。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 勝田 俊輔 / 2019)
本の目次
第一章 農村社会とロッカイツ
第二章 ロッカイツの組織と活動
第三章 ロッカイツの政治性
第四章 ロッカイツと統治
結論 歴史におけるロッカイツ