宗教の自由と不寛容のアメリカ史 19世纪の反カトリックとプロテスタント
「アメリカ合衆国 (以下、アメリカ) は、宗教の自由の国である。」
「アメリカはキリスト教国である。」
宗教という切り口からみたアメリカの歴史と现在は、この二つの理解の紧张関係のもとに展开してきた。一方では、宪法が建国から间もない1791年以来宗教の自由を定め、宗教の自由はアメリカの第一の自由として尊ばれてきた。他方では、アメリカの宗教的多数派は英领植民地期以来ずっとキリスト教徒で、中でもプロテスタントが数の上でも力の上でも优势であり続けた。19世纪まではプロテスタンティズムが「事実上の国教」だったともいわれるほどだった。そうしたなかでのカトリック移民の急増は、宗教改革以来プロテスタントの间に潜在した反カトリックを再燃させた。
19世纪には圧倒的多数派だったプロテスタントの反カトリックは、宗教の自由の国のはずのアメリカに数多みられた不寛容の一例である。彼らが宗教の自由をどのように捉えていたのかを明らかにし、アメリカの宗教の自由とは何かという问いに、歴史的事例の研究を通じて一つの解を与える。それが本书の出発点となった问题意识だった。
実はこの问いにまつわる研究は既に蓄积がある。移民の多くがヨーロッパ出身のカトリックだった当时、プロテスタントのあいだからは、移民排斥を求める政治运动?ネイティヴィズムがうまれた。「カトリックは自由を破壊する宗教であり、アメリカの自由を守らねばならない」との言辞が运动を支えたことは、多くの研究が夙に指摘してきた。
だが研究をすすめるうえで新たに见えてきたのは、ネイティヴストたちと反カトリックを共有しつつも、カトリックをプロテスタントに改宗させることで「问题」に対応しようとしたアメリカ人プロテスタントの存在である。しかも彼らは、宗教の自由さえあれば、プロテスタンティズムの正しさが自ずと人々の目に明らかになるはずと信じた。ここからは、ヨーロッパのカトリック国をはじめ世界に対し、アメリカ同様の宗教の自由を输出する活动が展开した。宗教の自由とプロテスタンティズムは、互いが互いを促进し、世界的なカトリックとの対抗を助けると理解されたのである。
本书がもう一つ取り组んだのは、宗教の自由の世界的普及を诉えた人々が、奴隷制という国内の不自由をどのように考えていたのか、という问いである。详细は本书で确かめていただきたいが、改めて浮かび上がったのは、アメリカにおける人种主义の根深さだった。
2024年春の现在、11月の大统领选挙は现职バイデンとトランプ元大统领の争いとなるとみられている。2017年から4年间大统领职にあったトランプとその支持者たちは、宗教の自由を重视するとともに、アメリカはキリスト教国との意见を支持し、人种问题には冷淡といわれる。本书が取り扱った、「宗教の自由の国」と「キリスト教国」との紧张関係、そして宗教と人种主义の交错は、アメリカの现在にも影响をもたらし続けている。
(紹介文執筆者: 佐藤 清子 / 2024年6月17日)
本の目次
第一节 研究の背景――宗教の自由への関心の高まり
第二节 宗教の自由の歴史研究と反カトリック研究
第叁节 本书の构成と意义
第一章 アメリカ的反カトリックの勃兴――一八叁〇年代
第一节 サミュエル?贵?叠?モース――反カトリックから反移民へ
第二节 マリア?モンクとサミュエル?叠?スミス――道徳的批判と扇动者たち
第叁节 ウィリアム?颁?ブラウンリー――カトリックの改宗と宗教の自由
第二章 福音主义、宗教の自由と反カトリック団体の発展――一八四〇年代
第一节 アメリカプロテスタント协会
第二节 海外福音主义协会
第叁节 キリスト教连盟
第叁章 环大西洋世界と普遍の自由――福音主义连盟?マデイラ?一八四八年革命
第一节 一八四六年福音主义连盟会议とアメリカ支部形成の失败
第二节 ポルトガル人プロテスタント移民事业
第叁节 一八四八年革命とその影响
第四章 反カトリック団体の合併と一八五〇年代の奴隷制问题
第一节 础贵颁鲍の活动
第二节 奴隷制をめぐる南北対立の深化と础贵颁鲍
第五章 宗教の自由を求める运动
第一节 宗教の自由を求める运动の背景
第二节 运动の展开
第叁节 运动における宗教の自由――普遍性をめぐる议论
第四节 一八五叁年から一八五四年以降の础贵颁鲍
终章 宗教の自由と白人プロテスタント国家アメリカ
补章 反カトリックと学校问题、教会财产问题
第一节 ニューヨーク州学校问题と宗教の自由
第二节 ニューヨーク州教会财产问题と宗教の自由
第叁节 政府による自由、政府からの自由
参考资料
あとがき
関连情报
第4回东京大学而立赏受赏 (东京大学 2023年)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;
/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
関连记事:
佐藤清子「2020年のアメリカにおける宗教――コロナ?BLM?大統領選と信教の自由」 (『現代宗教』 pp. 235-253 2021年)