小津安二郎はなぜ「日本的」なのか
本书は日本の激动期の象徴的存在たりうる小津に焦点を当て、彼に対する「日本的」という形容の歴史的変迁やその背后にある経纬を解明するものである。小津映画と「日本的なもの」について、最もよく知られてきたのはアメリカでの议论である。アメリカの论者たちは「禅」や「もののあはれ」といった日本の伝统文化と结びつくキーワードと関连づけながら、小津を「日本的」だと形容した。だが、小津の同时代の日本国内における「日本的」という形容はこれらのキーワードに还元できるものではない。
そこで本书は、小津はそもそもなぜ「日本的」と形容されるようになったのか、という根本的な问いに立ち返り、まず小津が生きていた1920年代后半から1960年代前半までの日本国内の言説を検讨することで「日本的なもの」の意味内容の歴史的変迁を辿る。次に、国内のローカルな文脉の议论を踏まえ、アメリカを轴に1970年代、1980年代の小津受容におけるグローバルな「日本的なもの」の议论を再検讨することで、そこにある新たな意义や问题点を见出す。本书はこのように言説史を辿る方法论を取り入れることで、小津の「日本的なもの」が1920年代后半から1980年代までの日本国内や西洋の言説においてどのように形成され、変容していったのか、その过程のダイナミズムを描き出す。
本书は以上の探求を通して、小津映画批评における「日本的なもの」という概念が戦争や戦后といった时代状况を反映していること、また时代変迁と络み合うことで日本映画史全体の流れと呼応していたことを明らかにする。この际に、「日本的なもの」の内包は伝统に依拠するのみならず、伝统の再解釈としての同时代や现代、过去をも包摂しうるものとして重层的に构筑されていたことも指摘される。なお日本国内における「日本的なもの」の议论は、日本の文化を世界の文化においていかに位置づけるか、というグローバルな射程を持っていたのに対し、「日本的なもの」が1970年代に実际にグローバルな文脉に置かれた际に、日本文化の内に闭ざされる、ローカルでステレオタイプな概念としての「禅」や「もののあわれ」といったものに回収されてしまったことも本书を通して新たに提示される。
本书による以上の発见は小津研究、ひいては日本映画研究においてかつてなかった视座を提供する。小津をめぐる「日本的なもの」の议论の全体像を初めて提示する本书は、今后小津や日本映画研究が新しく展开される可能性を切り开くものとなる。
(紹介文執筆者: 具 慧原 / 2024年6月5日)
本の目次
1 研究目的&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;
2 先行研究における不足点
3 本书の构成&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;
第1部 「日本的なもの」の形成:一九二〇年代後半から一九四〇年代前半まで
第1章 「日本的」映画の成立:一九二〇年代後半から一九三五年まで
1 「日本/西洋」という二項対立
2 アメリカ映画からの影响:モダンな日本表象としての小津映画&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;
3 「日本的なもの」への転向
结び
第2章 「伝統的なもの」から「日本人らしさ」へ:一九三五年から終戦まで
1 优れた日本映画の「日本的」倾向に组み込まれて
2 小津论における「日本的なもの」
3 戦时体制とその影响
4 『父ありき』(一九四二)と国民映画としての「日本的なもの」
结び
第2部 戦后の议论:败戦から一九六叁年まで
第3章 「最も日本的な監督」としての定着:終戦から一九五五年代まで
1 社会的问题に取り组む映画への期待
2 『晩春』から始まる戦後の「日本的なもの」の議論
3 「日本的」と否定される二つの傾向
4 小津映画に対する「日本的」という评価の内向性
结び
第4章 「古い伝統」の象徴的存在:一九五六年から一九六三年まで
1 「倒すべき伝統像」としての小津
2 「日本的なもの」の議論における三つの流れ
3 「俳句」という解釈
4 海外での小津受容の始まり
结び
第3部 ローカルな议论を越えて:一九七〇年代から一九八〇年代
第5章 一九七〇年代のアメリカにおける文化论的解釈
1 西洋における初期の小津受容――一九五〇年代后半から一九六〇年代まで
2 ポール?シュレイダー:超越的スタイルと「壶のショット」
3 ドナルド?リチー:禅の无と「壶のショット」
4 ノエル?バーチ:「枕ショット」
结び
第6章 一九八〇年代における「日本的なもの」の転覆
1 日本における文化论的解釈への反论:莲实重彦の主题论的アプローチ&苍产蝉辫;
2 アメリカにおける文化论的解釈への反论:フォーマリズム的アプローチから
结び
结章
註
参考文献一覧
あとがき
関连情报
第4回东京大学而立赏受赏 (东京大学 2023年)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;
/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
関连エッセイ:
具慧原「小津めぐり」 (関口グローバル研究会 2021年7月29日)
関连论文:
具慧原「1930年代の批評言説からみる小津映画の「日本的なもの」」 (『映像学』104巻 pp. 31-50 2020年)
具慧原「小津映画の「無人のショット」をめぐる日本国内の批評言説――一九四〇年代末から六〇年代中頃まで」 (『美学芸術学研究』38号 pp. 21-44 2019年)
具慧原「小津映画の「無人のショット」をめぐる 1980 年代の言説――1970 年代の言説との関係に即して」 (『日本映画学会大会報告集』13巻 pp. 18-31 2017年12月)
具慧原「小津安二郎映画をめぐる西洋からの批評における問題点――「無人のショット」を中心に」(第67回美学会全国大会 若手研究者フォーラム発表報告集 2017年3月)