植民地朝鲜の西洋音楽 在朝鲜日本人音楽家の活动をたどる
「音楽 (Music) は大きく長調 (Major Key) と短調 (Minor Key) で構成され、明るい感じの音楽は長調、暗い感じの音楽は短調である。」これについてはごく当たり前の、誰もが知っている音楽の知識の一つだろう。長調、短調をはじめ、完全音程 (Perfect)、長音程 (Major)、短音程 (Minor)、増音程 (Augmented) などの音楽用語は、日本が西洋音楽を受容した際にその用語を和製漢語として翻訳したものである。このような和製漢語の音楽用語は、実は、現在韓国でも同じくそのまま韓国語に取り込んだ音楽用語として通用されている。
韓国ではこのような音楽用語だけでなく、音楽の父?バッハ、音楽の母?ヘンデル、音楽の神童?モーツァルト、楽聖?ベートーヴェン、交響曲の父?ハイドン、歌曲の王?シューベルト、ピアノの詩人?ショパンといった作曲家たちに冠する称号も日本と同じく通用されている。音による芸術「音楽」という名称さえ、日本がミュージック (Music) を和製漢語に翻訳したものだが、韓国ではそのまま取り込んだのである。
このように、現在の韓国で日本语から韓国語に翻訳された音楽理論が通用しているが、それは、日本が東アジアではいち早く近代化の過程を経て、音楽でも西洋化を追求し、それが専門的な音楽学校設立や音楽専門理論書を出版することで成果が表れたことと関係がある。日本式の西洋音楽の理論そのものが、当時の朝鮮人留学生や在朝鮮日本人音楽教員からそのまま植民地朝鮮に伝わり、その影響が深く浸透した結果、現在に至るまで当時の音楽用語などが通用するようになった。筆者を含む韓国人は、この「日本式の西洋音楽」を何の抵抗感ももたず「西洋音楽」として認識してしまったのだ。
韓国はかつて日本の植民地支配を受けていたことは明白であるのに、現在の韓国の西洋音楽受容をめぐってはこれまで様々な見解が出されてきているものの、音楽に携わっていた在朝鮮日本人や日本の音楽学校に留学した朝鮮人音楽家たちの影響、つまり日本(人)の関わりで育まれた植民地朝鲜の西洋音楽の歴史はあまり知られていないために、それを認めようとしない風潮が残っているのではないだろうか。
しかし、韩国が日本の植民地统治时代に近代的な社会変化を経験したという事実があるのならば、近代的な音楽の経験はどのようなもので、それが持つ意义は何だったのか深く考える必要がある。なぜならば、当时の音楽政策や音楽教育、音楽产业などは、日本の植民地统治下で定着したものが多く含まれていて、音楽用语をはじめとする日本の音楽要素が现在も强く影响しているからである。
本书は、これまであまりにも関心が払われていなかった植民地朝鲜で日本から持ち込まれた日本化された音楽文化が、支配者である日本人によって広められたことに注目し、朝鲜近代史、音楽史、教育史の立场から解明しようとするものだ。植民地朝鲜时代の在朝鲜日本人たちの活动に焦点を当て、彼らが时代の変化に対応しながら、当时の朝鲜で西洋音楽の形成の一部分を担当していたことを捉えていく。现在の韩国がたどり着いた西洋音楽の受容史よりも多角度な観点から解釈するためには、过去の歴史を振り返ることが必要不可欠である。
本书では、植民地朝鲜での日本人中等音楽教员?音楽家の活动の具体的様相を明らかにすることで、当时の朝鲜での音楽の时代相に光を当て、これまで相互に断ち切られた形态で语られていた日韩近代音楽史を一つの潮流として结び付ける手がかりを提供したい。
(紹介文執筆者: 金 志善 / 2024年7月1日)
本の目次
序 章 日韩近代西洋音楽受容史の研究动向
第1章 西洋音楽の受容过程
1 賛美歌
2 初期西洋音楽机関
3 音楽専门教育机関――梨花女子専门学校音楽科
4 日本の音楽学校に留学した朝鲜人
第2章 在朝鲜日本人音楽家と东京音楽学校――『近代日本音楽年鑑』と『东京音楽学校一覧』の分析を中心に
1 『近代日本音楽年鑑』と『東京音楽学校一覧』にみる在朝鮮日本人音楽家と音楽活動の動向
2 东京音楽学校の机能と役割
第3章 音楽教育政策と音楽教育関连教科书
1 教育政策
2 音楽教育政策
3 唱歌?音楽教育関连図书
第4章 唱歌?音楽教育の実态
1 「文教の朝鮮」と「朝鮮の教育研究」の唱歌?音楽教育関連記事
2 両誌の记事に现れた初等教育での唱歌?音楽教育の実态
3 一九叁〇年代后半から四〇年代に初等教育を受けた証言者のインタビューと当时の学习ノート
第5章 师范学校音楽教员の活动
1 师范学校音楽教员
2 中等教员养成
3 师范学校音楽教员による唱歌教科书と音楽理论书
第6章 日本人音楽家による音楽会の実态
1 朝鲜でのクラシック音楽会の状况
2 日本人音楽家の来朝音楽会
3 日本人音楽家による来朝音楽会の朝鲜人観客层
4 日本人音楽家の音楽会について朝鲜人の反响
第7章 総力戦体制下の朝鲜と音楽の役割――组织の一元化と在朝鲜日本人音楽家の活动
1 朝鲜の総力戦体制运动の展开と音楽の役割
2 総力戦体制期の音楽组织
3 朝鲜音楽协会の事业活动と日本人音楽家の役割
4 日本人音楽家の役割――大场勇之助と平间文寿の事例を中心に
终 章 日本人音楽家の朝鲜活动がもたらした日韩西洋音楽受容史の再构筑
1 近代朝鲜が迎えた音楽界の构図の変化
2 植民地朝鲜での日本人の音楽活动
3 日韩西洋音楽受容史での日本人の音楽活动の意义
参考文献
あとがき
资料4-1 「文教の朝鲜」と「朝鲜の教育研究」の唱歌?音楽教育関连记事
资料5-1 京城师范学校音楽教育研究会编『初等唱歌』分析
资料5-2 京城师范学校音楽教育研究会编『初等唱歌』の朝鲜の情绪をモチーフにした曲と、朝鲜人が作词?作曲した曲
资料7-1 「朝鲜文芸会设立趣意书」
资料7-2 「朝鲜音楽协会会议案」
资料7-3 『国民皆唱歌曲集』の曲目
関连情报
第4回東京大学而立賞受赏 (東京大学 2023年)
/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
セミナー:
第120回例会: 植民地朝鲜の西洋音楽界における京城帝国大学教授夫人の音楽活動と相互的関係 (洋楽文化史研究会 2023年9月30日)