隋唐洛阳の都城と水环境
中国の都城というと何を思いつくだろうか。日本人の多くは、遣唐使が派遣され、平城京?平安京と同様の構造をしている隋唐の長安を考えるはずである。実は、隋唐時代には洛陽にも首都機能が置かれ、両京制 (二都制) が採られていた。長安と洛陽の二都体制は古くは周まで遡ることができ、中国では政治?軍事の長安、経済?文化の洛陽として周知され、洛陽も重要な都である。ところが、日本では長安に対する関心が強く、世界的に長安城研究が深化していることも相まって、洛陽に対する知識は少なかった。そこに転機が訪れた。1990年代末から2000年代にかけて中国全土で展開された建築ラッシュである。それに伴い洛陽でも活発に考古調査が行われ、新発見が続出した。現在、洛陽研究はこれらの考古学の成果を使った考察の段階に来ている。しかしながら、現時点では、その成果は従来の説を裏付けるか、あるいは構造について新たに考察する程度にとどまっている。本書の著者は建築ラッシュ最中の洛陽でフィールドワークを重ねているうちに、洛陽城の構造が「水」に関与していることに気が付いた。本書は、洛陽を「足」と「目」で調査し、点と点を結んで全体像を明らかにした成果である。
隋唐洛阳城が长安城と大きく异なる点は、都城の形が台形で左右対象でないこと、大きな自然河川と大运河を城内に取り込んでいることである。なぜこのような构造になったのか、そして隋煬帝が建设した洛阳城は何故宋代まで长期间の使用に耐えうる都城になりえたのか、本书では水环境に着目して洛阳城の特徴を导き出した。各章が有机的につながり、一贯した理论で全体像が把握できるように构成されている。自然水系と経済的基盘として建设された运河をも内包した総合的な都市水利という视点から、隋唐洛阳城の立地と构造を検証し、煬帝が目指した都城理念と唐高宗?武则天に受け継がれた都城运営を考察することにより、水利史?都城史研究における洛阳城の歴史的意义を明らかにしている。
着者の独自な観察力と视点から导き出した洛阳城の仕组みを多くの人にも共有してもらい、本书を皮切りとして日本と中国の古代の都城を「水」というインフラストラクチャーから考えて新たな见解を出してほしいと考えている。それにより都城の比较ができ、さらに当时の人々がどのような概念で生きていたのか、考察する材料を整えてほしいと切望する。
(紹介文執筆者: 宇都宮 美生 / 2023年9月1日)
本の目次
第一部 隋唐洛阳城をとりまく水环境
第一章 隋唐洛阳城における河川、运河と水环境
――问题の所在
第二章 隋唐洛阳城の洛水と都城水利
――「洛水贯都」构想を中心に
第叁章 隋唐洛阳城の穀水
――煬帝の洛阳奠都をめぐって
第四章 隋唐洛阳城における煬帝の运河建设
――通済渠と通远渠をめぐって
第二部 隋唐洛阳城の施设と水利
第一章 隋唐洛阳城の西苑の四至と水系
第二章 隋唐洛阳城の西苑の役割と水利
第叁章 隋唐洛阳城の含嘉仓
――设置と役割に関する一考察
第四章 隋唐洛阳城の穀仓
――子罗仓、洛口仓、回洛仓および含嘉仓をめぐって
终章 洛阳城における水环境の変迁と意义
付章 隋唐の水利関係の诸机関について
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関连论文:
「隋唐洛陽城の西苑の役割と水利」 (『東洋学報』第104巻第1号 pp. 61-96 2022年6月17日)