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東京大学学術成果刊行助成 (東京大学而立賞) に採択された著作を著者自らが語る広場

日本占領期のラジオインタビューのモノクロ写真

书籍名

占领期ラジオ放送と「マイクの开放」 支配を生む声、人间を生む肉声

着者名

判型など

544ページ、础5判、上製

言语

日本语

発行年月日

2022年2月28日

ISBN コード

978-4-7664-2802-5

出版社

庆应义塾大学出版会

出版社鲍搁尝

学内図书馆贷出状况(翱笔础颁)

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博士论文をもとにした本书の特徴は、その出生地が驹场でなければ実现しなかった学际性にある。
 
私は、高校?大学の7年間をアメリカ北東部で過ごした。帰国して社会人経験を積んだのち、学者になる夢を諦めきれず、東京大学大学院総合文化研究科の門戸を叩いた。日英語バイリンガルであることを活かした研究をしようと、言语学を専攻に選んだが、「20代後半のすべてを注ぎこみたい」と思える研究テーマを見つけるのは容易ではなかった。
 
しらみ潰しに文献を読んでいたある日、NHK放送文化研究所から発表された占領期ラジオ放送の論考を目にした。私は、気が付くと同研究所に電話をかけていた。著者と話したい一心であった。東大で言语学を学んだ先輩であることがのちに判明する著者の導きで、私は70年以上前の貴重な放送を実際に聴けることになった。
 
第二次世界大戦后、日本では骋贬蚕によってさまざまな改革が行われ、ラジオ放送も例外ではなかった。大本営発表をはじめとする戦中の上意下达の放送を一新し、投书やインタビューなどで民众の声を拾い上げて「思想?言论の自由」を标榜する番组が続々と始まった。これもまたある日、私はついに「学生生活のすべてを捧げたい」と思える声を聴いた。
 
「そりゃあ人间ですもん、ないってことはないでしょう?」
 
声の主は、骋贬蚕本部が置かれた有楽町で、米兵相手に売春するいわゆる「パンパン」を束ねていた「姐さん」であった。享楽にふける「パンパン」に希望はないのかと、狈贬碍アナウンサーに寻ねられた「姐さん」が不意に発した叫びに、私は泣いた。涙の意味を确かめるため、小林康夫先生のゼミで、この声をテーマに発表をした。すでに退官なさっていたものの、非常勤讲师として小林先生が教鞭を执る最后の年度のゼミに、幸いなことに参加していたのである。発表后、博论のリサーチ?クエスチョンとなる质问が先生から突きつけられた。
 
「君、「パンパン」の「人间宣言」、どうするの?」
 
一般に、「人間宣言」は昭和天皇によるものだと理解されている。しかし、本書は、占領期に「人間宣言」をしたのは「姐さん」だったのだという主張を展開している。私はアメリカでは文化人類学専攻だったので、言语学を駒場で一から学んだ。さらに、真の「人間宣言」の歴史的意義を探究するため、歴史学?メディア研究?文学研究なども新たに学んだ。この自由な学術の在り方が許されたのは、ひとえに私が多様性と学際性を重んじる駒場の大学院生であったからに他ならない。
 
この绍介文の执笔にあたっては、「読者として前期课程の学生を想定し、わかりやすく研究の特徴を解説していただきたい」との依頼があった。私の研究の特徴は、すでに平易な言叶で本书に记してある。しかし、「前期课程の学生」にぜひ伝えたいのは、驹场は梦にも思わなかった数多の出会いと可能性をもたらしてくれる场だという事実である。もし、「これから东大で何が学べるのか、自分に何が出来るのか」と悩んでいたら、立派な学术书としてではなく、ある先辈の七転八倒の记録として本书を手に取ってもらえれば、こんなに嬉しいことはない。
 

(紹介文執筆者: 太田 奈名子 / 2022年6月24日)

本の目次

はじめに
  1 支配のなかで共鳴を生むラジオ ―― 本書の問題意識
  2「マイクの開放」を問い、〈声〉に〈肉声〉を聴く ―― 本書の目的と分析視点
  3 声をことばから探究する ―― 本書の理論的?方法論的枠組み
  4 占領期ラジオ放送がもつ可能性 ―― 本書の特色
  5 時を超え流れだす数多の声 ―― 本書の構成
 
第一部 マイクに拾われた声を聴きなおす
 
第一章 占領期ラジオ放送の批判的談話研究 ── 理論と方法
  1 ラジオに関する先行研究  
  2 批判的談話研究 (CDS) とは何か
  3 ディスコースの歴史的アプローチ (DHA) とは何か
  4 支配の〈声〉に抗う〈肉声〉を聴くために
 
第二章「マイクの開放」からみるラジオ史 ── 本放送開始から占領開始まで (1925~1945年)
  1 いきものへの「マイクの開放」
  2 ラジオドラマへの「マイクの開放」
  3 臣民への「マイクの開放」
  4 天皇への「マイクの開放」
  5 占領下の「マイクの開放」
  6 CIEと情報番組
  7 日本人意識変革のためのキャンペーン
  8 ウォー?ギルト?インフォメーション?プログラムと民衆の声
  9 CIEとPPBによる指導?統制
  10 戦後ラジオ放送への戸惑いと非難
 
第二部 支配を生む〈声〉
 
第叁章「真実」が进军を始める〈声〉――『真相はこうだ』(1945年12月)
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;1『真相はこうだ』とは何か
  2 分析手法と、分析する放送内容
  3 太郎と文筆家の役割
  4 太郎と文筆家の関係性
  5 聴取者の位置付け
  6 太平洋戦争史観の提示
  7 日本占領をめぐるメッセージ
  8 占領初期における「真相」?「真実」の意味
  9 聴取者の反応
 
第四章「我々」の戦争责任を问う〈声〉――『真相箱』(1946年5~7月)
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;1『真相箱』とは何か
  2 分析する投書の一覧
  3 黙りこむ/口を開く天皇
  4 ラジオが伝えた「人間宣言」
  5 平和を祈る天皇/戦争に突き進む「我々」
  6 東京裁判への準備としての『真相箱』
  7 天皇免責から国民有責へ
  8 聴取者の反応
 
第五章 親米民主化を「面白く」する〈声〉――『質問箱』(1946年12月)
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;1『质问箱』とは何か
  2 分析する投書の一覧
  3 模範的国民としての司会者
  4 常識を共有する〈模範的日本人の共同体〉
  5 物語としてのウォー?ギルト
  6 為政者の物語としてのウォー?ギルト
  7 勝利熱に燃えていた日本
  8 忘れてはならないアメリカの歴史
  9 長期戦の終局に目をむけない軍閥?日本軍将兵?国民
  10 戦争にかりたてられた過去/平和を選択できる今日
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;11『情报玉手箱』としての『质问箱』
  12 聴取者の反応
  13 スポットアナウンスがつなぐ『質問箱』と『街頭録音』
 
第三部 人間を生む〈肉声〉
 
第六章 CIEとNHKが集める『街頭録音』の〈声〉――「民主化ショー」から「生々しい社会番組」へ
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;1「マイクの开放」の矛盾 
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;2アメリカの「マン?オン?ザ?ストリート」
  3 自由を管理するCIE
  4 自由を演出するNHK
  5 銀座から全国を旅した「民主化ショー」
  6 CIEが見過ごしたマンネリズム
  7 NHKが追求した「生々しい社会番組」
  8 CIEとNHKの複雑な関係
  9 隠されたマイク
 
第七章 大衆を露わにする〈肉声〉、あるいは民衆を消す〈声〉―― 涙する投書と太宰治「家庭の幸福」
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;1『街头録音』への感铭の谜
  2 声を上げるべき真の大衆
  3 大衆を顕現させる「マイクの差しだし」
  4 お説教を嫌う〈血の交う人間の共同体〉
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;5「家庭の幸福」で描かれた『街头録音』
  6 廻る支配下に置かれた民衆の涙
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;7「マイクの差しだし」、あるいは「マイクによる分断」
 
第八章「人間」を廻り合わせる〈肉声〉――「ガード下の娘たち」(1947年4月) と田村泰次郎「女狩りの夜」
  1 戦後史の記録の誤引用
  2 警めの〈声〉のストーリー
  3 有楽町ガード下に集う〈占領下共同体〉
  4 娘たちの温かみと希望
  5 パンパンの肉体が秘めた人間性
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;6「女狩りの夜」で描かれた「ケダモノ」、あるいは「レデイ」
  7 人間を再生させる〈肉声〉
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;8「マイクによる邂逅」
 
終章 占领期ラジオ放送と「マイクの开放」── からっぽのラジオの向こう側へ
  1 後付けの紐帯と人間 ―― 日米合作による天皇免責のシナリオ
  2 天皇から主権を託された国民 ―― 直接?間接参加の〈声〉による日本再建
  3 方便としてのウォー?ギルト ―― 親米民主的国民づくりをする『真相はこうだ』『真相箱』『質問箱』の〈声〉
  4「どうして」を問う「マイクの開放」―― 自助?共助の社会づくりをする『街頭録音』の〈声〉
  5 耳障りな〈声〉の割れ ―― 為政者結託の痕跡をことばからあぶりだす
  6 紐帯を結いなおす人間の〈肉声〉―― 有楽町ガード下という「胎内くぐり」からの再生
  7 メディアの〈声〉に〈肉声〉を聴く ――「未来について考える批判」の実践
  8《私の現在》に響いてくる《日本の過去》―― 本書の限界と今後の展望
  9 ガード下の娘?後日談 ――〈肉/声〉を聴く、それから
 

あとがき
参考?引用文献一覧
索引

関连情报

受赏:
第9回内川芳美記念メディア学会賞 (日本メディア学会  2023年)


第2回东京大学而立赏受赏 (东京大学 2021年)
/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
 
书评:
井上寿一 評 (『週刊エコノミスト』p.58 2023年3月28日号)


賀茂道子 評 (『メディア史研究』Vol.53 2023年3月)


広瀬正浩 評 (『日本近代文学』第107集 pp.145-148 2022年11月)


三原治 評 (『GALAC』 2022年10月号)


佐藤 卓己 評 「読書『占领期ラジオ放送と「マイクの开放」』」 (『公明新聞』 2022年8月1日)

丸山友美 評 「占領期に放送された四つのラジオ番組に表れた民衆の声 ―― 戦争責任の所在を再考し、「マイクの開放」の欺瞞性を提示する」 (『図書新聞』第3551号 2022年07月16日)


平山周吉 評 「『占领期ラジオ放送と「マイクの开放」』 今も続く“洗脳”にメスを入れる」 (『週刊ポストセブン』 2022年5月1日)

 
持田叙子 評 「今週の本棚 『占领期ラジオ放送と「マイクの开放」』」 (『毎日新聞』 2022年4月9日)

 
书籍绍介:
「ラジオを聴きながら読む本 ――『占领期ラジオ放送と「マイクの开放」』のデジタル?アーカイブ公開」 (庆应义塾大学出版会note 2022年3月17日)

 
関连イベント:
太田奈名子『占领期ラジオ放送と「マイクの开放」』書評会 (評者: 河西秀哉) (オンライン [象徴天皇制研究会] 2023年2月19日)


メディア报道:
NEW!「けさの&濒诲辩耻辞;闻きたい&谤诲辩耻辞;『&濒诲辩耻辞;ラジオが伝えた戦争&谤诲辩耻辞;~今、ラジオと戦争を考える意味~』」コーナー (狈贬碍ラジオ「マイあさ!」 (2023年8月1日)


「「そりゃ人間ですもん」 NHKに残る終戦直後の未編集音源に衝撃 安倍元首相銃撃にも通じる問題」 (『日刊スポーツ』 2022年8月1日)


【アシタノカレッジ】武田砂鉄 × 太田奈名子 (TBSラジオ公式 | YouTube 2022年4月8日)


関连记事:
「占領期ラジオ番組『真相箱』が築いた〈天皇〉と〈国民〉の関係性」 (『マス?コミュニケーション研究』94巻 p. 93-111 2019年)