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東京大学学術成果刊行助成 (東京大学而立賞) に採択された著作を著者自らが語る広場

白い表紙、赤い文字のタイポグラフィー

书籍名

革命的知识人の群像 近代日本の文芸批评と社会主义

着者名

判型など

350ページ、四六判

言语

日本语

発行年月日

2022年2月10日

ISBN コード

978-4-7917-7445-6

出版社

青土社

出版社鲍搁尝

学内図书馆贷出状况(翱笔础颁)

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知識人とはなにか? 人文知について関心を抱いたひとの多くが、一度はそうした疑問をもったことがあるのではないだろうか。「知識人」あるいは「インテリ」とはこういうものだ、というイメージは、世間一般にも流通しているが、よくよく考えてみるとそれがなんであるのかははっきりしない。理想とされる知識人像は多種多様であり、それに伴って学問や政治についての価値観も異なってくる。意識的であれ無意識的であれ、知識人をめぐる思考は今もなお必要とされているといえよう。
 
本書は近代日本における革命的知识人の群像を追いかけたものだ。戦前?戦後の日本で、知識人たちが革命という理念との関係で自己を意味づける際には、さまざまな困難があった。たとえば、社会主義的な活動を行なうことは、国家による激しい弾圧と隣り合わせであった。革命に関連することばは、「××」といった伏字で発表されることもあった。また、翻訳を通して拡散していった社会主義用語は、多義性を孕み、ときには論争のもととなった。こうした状況のなかで書かれた文章は、さながら暗号文のようだ。
 
したがって、なにがどういう意味で革命的なテクストなのか、一目見てすぐにわかるわけではない。社会主義関連のリテラシーを身につけながら暗号解読者になることによってはじめて、隠された革命のメッセージを見出すことができるのだ。革命的なテクストにおいて、文芸批評や文化運動は特異な役割を担った。社会主義の用語を使って文学について論じることは、発禁すれすれのところで書いて出版する実践でもあった。曖昧さを抱え込んだ文芸領域そのものが、革命運動との関係で積極的な意義をもつこともあった。そうした知識人たちの歴史を明らかにしたい、というのが、この本を書いた動機 (のひとつ) である。第I部では初期社会主義、第II部では有島武郎、第III部ではプロレタリア文学運動、第IV部では『近代文学』派を中心として扱っている。全体として、ロシア文学?思想の受容に注目しながら追いかけた。
 
本书で注目したのは、「知识阶级」「インテリゲンチャ」といった「知识人」関连のことばがどのように使われたのか、文学史がどのように构筑されたのか、ということだ。それを通して、当时の知识人たちが作り出した言论のもつ力を浮き彫りにしたいと思った。本书に登场する知识人たちは、周囲にある情报を集め、自他をカテゴリー化することを通して、世界を変革しようとした。その格闘の痕跡は、いま人文知の意义について考えていくうえでも贵重な示唆を与えてくれるのではないだろうか。
 

(紹介文執筆者: 木村 政樹 / 2022年8月19日)

本の目次

序章 革命的知识人とことば
1 はじめに
2 革命的批评について
3 丸山真男「近代日本の知识人」を再考する
4 「知識人」関連語群について
5 本书の构成
 
第滨部 隠された伝统
 
第1章 大逆事件前后 ロシア文学と社会主义
1 知識人論としてのロシア文学史 ―― チェーホフの位置
2 文学史との接続 ―― 自己歴史化する自然主義
3 「知識階級」のディレンマ ―― 文芸領域と『近代思想』
4 「日本の「智識ある者」 」―― 平出修とロシア文学の読者
5 大逆事件と発禁 ―― 平出修と『太陽』の読者
 
第2章 曖昧な思想の积极性 雑誌『月刊新社会』の论脉
1 階級論のゆくえ ―― 堺利彦と社会運動出版
2 社会主義者とその知識 ――『月刊新社会』の登場
3 「面白い地位」―― 堺利彦の中等階級論
4 「ツナギ」 「ボカシ目」―― 曖昧な文学者たち
5 「面白い傾向」―― 思想と文学の関係
 
第滨滨部 知识阶级の意味
 
第3章 更新される概念 「宣言一つ」论争
1 「知識階級」をめぐって ―― 論争の意義
2 批判と応答 ―― 堺利彦
3 概念の整理 ―― 室伏高信
4 立場と論理 ―― 広津和郎
 
第4章 海を越える革命 有岛武郎とアナ?ボル提携
1 運動史と有島武郎 ―― アナ?ボル提携という問題
2 アナ?ボルの臨界 ―― 有島と吉田一
3 理論を利用する ―― 知識階級排斥論という文脈
4 「指導者」を利用する ―― アナ?ボルのなかの有島
 
第5章 残された课题 マルクス主义と「有岛武郎」
1 「語義の曖昧」と「思想の混乱」―― 階級論の流行
2 もうひとつの宣言 ―― 山川均
3 有島の書簡と「無産階級」論 ―― 福本和夫
4 「有島武郎」で考える ―― 藤森成吉「犠牲」
 
第滨滨滨部 文学史の整理
 
第6章 出版企画と存在証明 刻印される『太阳のない街』
1 解釈環境の編制 ―― プロレタリア文学のリテラシー
2 メディア実践と対抗的文学史 ――『日本プロレタリア作家叢書』
3 《運動史》の論理 ―― 状況論的文学史
4 錯綜するふたつの論理 ――《近代文学史》と《運動史》
 
第7章 亡霊の栖む书棚 宫本顕治「「败北」の文学」
1 文学史としての「「败北」の文学」――「芥川龙之介」という「遗产」
2 革命の陰画 ―― ロシア文学と芥川
3 「書棚」の組み換え ―― 知の接合とジャーナリズム
 
第8章 文学研究という桥头堡 平野谦「プティ?ブルヂョア?インテリゲンツィアの道」
1 研究運動体を歴史化する ――『クオタリイ日本文学』
2 文学史生成の場 ―― プロレタリア科学研究所と明治文学談話会
3 宮本顕治の過去と現在 ――「プテイ?ブルヂヨア?インテリゲンツイア」
4 中野重治という主人公 ――「プロレタリア?インテリゲンツイア」
 
第9章 社会认识と文学论 一九叁五年の中村光夫
1 文学史を再考する ―― 中村光夫という問題
2 「資本主義」と「封建制度」―― 日本社会認識
3 「封建文学」と「ロマン主義」――「体系」的文学論
4 「講座派」理論との関係 ―― 中野重治との論争
 
第滨痴部 反语的な批评
 
第10章 ロシア文学を読む 戦时期の荒正人
1 ロシア文学と知識人論 ―― 読書会と批評方法
2 戦時期の世田谷三人組 ―― 読書会の回想
3 批評の材源 ―― ルカーチとロシア文学史
4 「小市民文学」の批判的更新 ―― 国民文学論 
5 「余計者」の客観化 ―― 国民文学論と『浮雲』
 
第11章 概念を缝い合わせる 平野谦「昭和文学のふたつの论争」
1 文学史のなかの論争、論争のなかの文学史 ―― 論争的文学史
2 小林秀雄と中野重治 ―― 文学史のふたつの「中心」
3 中野重治と「民主主義文学」概念 ―― 戦後「政治と文学」論争と文学史
4 曖昧、齟齬、辻褄合わせ ―― 概念論という問題提出
 
第12章 后退戦の轨跡 本多秋五のプロレタリア文学论
1 概念の重大な微調整 ―― 術語としての文学史
2 「ブルジョア」という登場人物 ―― 宮本百合子論と「私小説論」
3 朝鲜戦争と「知识人」――『白樺』派论と「风俗小説论」
4 「統一戦線」と文学史 ―― 転向文学論と「頽廃の根源について」
5 後退戦と政治参加 ―― 文学史の再構築
 
終章 革命的知识人の群像
 

あとがき
初出一覧
索引

関连情报

受赏:
第2回东京大学而立赏受赏 (东京大学 2021年)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;
/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
 
书评:
大杉重男 評「書評 木村政樹著『革命的知识人の群像――近代日本の文芸批评と社会主义――』」 (『日本近代文学』第107集 2022年11月)
 
和田崇 評「書評 木村政樹著『革命的知识人の群像 近代日本の文芸批评と社会主义』」 (『日本文学』第71巻第10号 2022年10月)


村田裕和 評「「革命の逆説」を体現する文学者たち 有島武郎?中野重治?『近代文学』派の人々」 (『図書新聞』 2022年7月9日)

 
永田希 評「きんようぶんか 知的階層ゆえの矛盾を抱えつつも変革めざす」 (『週刊金曜日』 2022年5月27日)


赤井浩太 評「新刊この一冊」 (『中央公論』 2022年5月号)


川村敦 評「BOOK交差点 普遍的な知性の輝き宿る」 (『富山新聞』 2022年3月20日)


书评への応答:
「範例としての柄谷行人――赤井浩太氏、大杉重男氏に応えて」 (文学+WEB版 2022年11月26日)

 
関连企画:
「「社会主義と文学」について考える――木村政樹著『革命的知识人の群像』と大和田茂著『日本近代文学の潜流』をめぐって」 (初期社会主義研究会2022年8月例会 [オンライン] 2022年8月19日)


「木村政樹『革命的知识人の群像 近代日本の文芸批评と社会主义』「第III部 文学史の整理」公開読書会」 (「芸術運動と知識人」研究会第2回例会 [オンライン] 2022年5月8日)