子どもと法 子どもと大人の境界线をめぐる法社会学
子どもと大人で扱いが违うのは当然だと考える人は多い。子どもと大人の区别は、あたかも自然で普遍的で絶対的なものだと捉えられがちである。しかし、このようなイメージは、近代の学校教育制度の成立によって生じた人工的な创造物に过ぎないともいわれている。子どもと大人の区别を盲目的に当然视するのではなく、もう少し慎重に検証する必要があるのではないか。本书は、このような问题意识から、性差别や人种差别などと同様の発想で、「子ども差别」という视点の提示を试みた法社会学の研究书である。
子どもと法というのは、复雑な问题である。子どもの地位が具体的にどうあるべきかについてのイデオロギー的な理想论は千差万别に存在するが、异なる立场の论者が意见の一致を见るのは难しい。それゆえに、法理论的基盘が十分に构筑されてこなかった。本书では、国际的に共有された基本理念である平等原则を根底に据えて、国内外でこれまでほとんど指摘されてこなかった「子ども差别」という视点からの基盘构筑を试みた。
本書は、実証研究による問題提起から始まる (第一部及び第二部) 。調査とデータ分析によって、子どもが社会内で人々からどのように捉えられ、扱われているかを探究した。大人との対比において、子どもに対する制度的不利益が社会内に存在していないかという問題提起を試みた。「大人は~できるが、子どもは~できない」という事柄の代表例は、各種の法定年齢である。近時、選挙権年齢や成年年齢が20歳から18歳に引き下げられて、注目を集めたところでもある。第一部では、このような各種法定年齢をめぐる人々の法意識を包括的に調査した。調査の結果、人々の法意識の次元における《子どもの権利と義務の不釣り合い》が見えてきた。平たくいえば、多くの人は、子どもに対して権利よりも義務ばかりを負わせたいと考えがちなようだ。また、法的地位のみならず、子どもに対する事実上の扱いについても解明する必要があろう。例えば、飲食店などでは、高校生のアルバイト時給が一律に低く設定されていることも珍しくない。そこで、第二部では、子どもに対する人々のステレオタイプや、社会内の様々な場面 (供述の信用性評価や交渉?合意形成の場面) における事実上の差別について検証した。
そのうえで、本書は、問題解決に向けた法理論的研究によって締めくくられる (第三部) 。子どもと大人の区別の恣意的な設定を防ぐためには、判断基準が必要である。その切り口として、他のマイノリティー集団に対する差別と同様に、「子ども差別」を平等原則の問題として捉え直した。憲法上の平等原則 (法の下の平等) の違憲審査基準という切り口から、どのような子どもと大人の区別であれば許容されるかについての判断基準を論じた。
「子ども差别」という视点に関心を持った方、あるいは调査とデータ分析を活用しながら法と社会のあり方を考える法社会学という学问分野に関心を持った方は、ぜひ一度手に取ってみていただけると大変嬉しい。
(紹介文執筆者: 齋藤 宙治 / 2022年7月4日)
本の目次
第一部 人々の法意識上の子ども差別
第1章 人々が考える法定年齢の理想年齢
第2章 理想年齢の規定要因――法意識の縦の構造
第3章 理想年齢タイプの分類――法意識の横の構造
第4章 子どもの権利?義務のイメージ
第二部 人々による事実上の子ども差別
第5章 ステレオタイプの分析枠組み
第6章 日本社会における子どもに対するステレオタイプ
第7章 供述と交渉における子ども差別
第三部 平等原則からの法理論的基盤の模索
第8章 平等原則と米国の判例
第9章 子ども差別と違憲審査基準
第10章 子ども差別の違憲審査に関する諸問題
第11章 知見の一般化と日本法への示唆
終 章 子ども差別の視座からの法学の提唱
関连情报
第24回日本法社会学会奨励賞 (著者部門) (日本法社会学会 2023年)
第24回尾中郁夫?家族法新人奨励赏 (日本加除出版株式会社 2023年)
第2回東京大学而立賞受赏 (東京大学 2021年)
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