自白法则の理论的构造
本书は、笔者が东京大学大学院法学政治学研究科に提出した、いわゆる助教论文を基にするモノグラフである。本书では、宪法38条2项及び刑诉法319条1项が规定する自白法则が、いかなる理论的构造の下で自白を排除するのかという问题を検讨した。
この问题を検讨するにあたって、本书は、歴史的なアプローチと比较法的なアプローチを用いている。すなわち、前者の下、自白法则の発祥から上记の各规定が戦后に制定されるに至る过程を调査するとともに、后者の下、自白法则やそれと类似するルールを採用する诸外国において、当该ルールの理论的构造がどのように理解されているかを検讨した。これらのアプローチは、法学の领域で伝统的に用いられてきたものであるが、歴史的?比较法的な知见を现代法の解釈に反映させることで、従来の议论を一歩先に进めることができたのではないかと思う。
歴史的に見ると、自白法則が18世紀後半のイギリスで発祥した際にその理論的根拠とされたのは、陪審による誤判を防止するために、虚偽であるおそれのある自白を証拠から排除するという発想 (信頼性原理) であった。このルールはアメリカの各法域にも定着したが、その後、アメリカにおいては、拷問等の極端な取調べを意味する「サードディグリー」の問題化を背景に、20世紀前半に連邦最高裁が、連邦憲法第14修正のデュープロセス条項を介して、極めて悪性の高い取調べ手法を用いて獲得された自白に基づく州の有罪判決を破棄するようになる。
憲法38条2項は、GHQの占領統治下において、1946年に成立した。20世紀前半にアメリカで示された上記の発想 (本書では「拷問排除説」と呼んでいる) は、戦前の我が国で生じていたいわゆる「人権蹂躙問題」への反省をも踏まえつつ、この規定に取り込まれたと考えられる。また、憲法には、連邦憲法第5修正が保障する自己負罪拒否特権に関する規定も置かれた (本書が提示する「供述の自由侵害説」はこの権利に基礎を置く) 。その後、1948年に刑訴法319条1項が成立したが、その施行前後には、伝統的な理論的根拠である信頼性原理 (「虚偽排除説」) も、我が国に輸入された。
比较法的に见ると、现在のイギリスやオーストラリアにおいては、自白の任意性という伝统的な概念は用いられなくなり、复数の理论的根拠からそれぞれ个别に判断枠组みを导くというアプローチが採用された。これに対して、アメリカとカナダにおいては、自白の任意性を包括的な判断基準としつつ、その下で复数の理论的根拠を総合的に考虑するアプローチが、ドイツにおいては、供述の自由が侵害されたかのみを判断基準とする一元的なアプローチが採用されている。
アメリカ法の影响を强く受けた我が国においては、これまで、自白の任意性という概念を自白法则の包括的な判断基準であると考える倾向、及び、自白の任意性を判断する际に、复数の理论的根拠を総合的に考虑する倾向が见られた。これに対して本书は、そのような考え方が、现在の议论の混乱を招いているという认识の下、上记の歴史的?比较法的知见を踏まえ、自白法则の背后には位相の异なる复数の理论的根拠が存在し、そのそれぞれから个别に判断枠组みを导くべきであること、及び、自白の任意性を自白法则の包括的な判断基準と考えるべきではないことを主张した。
(紹介文執筆者: 川島 享祐 / 2022年9月5日)
本の目次
第1章 我が国の问题状况
第1节 戦前の问题状况
第2节 宪法38条2项と刑诉法319条1项の制定过程
第3节 现在の议论状况の确立とその问题点
第4节 违法排除説登场后の判例?学説に対する理论的検讨
第5節 本章の成果 ―― 比較法的考察の分析視角
第2章 イギリス法
第1节 自白法则の成立と笔础颁贰制定までの判例の展开
第2节 笔础颁贰の制定とその解釈
第3节 本章の成果
第3章 オーストラリア法
第1节 统一証拠法の「承认」に関する诸规定とその制定过程
第2节 信頼性テストに関する议论
第3节 本章の成果
第4章 アメリカ法
第1节 デュープロセス条项による介入以前の状况
第2节 デュープロセス条项に基づく自白の排除
第3节 本章の成果
第5章 カナダ法
第1節 「任意性」準則の理論的構造とその問題点
第2節 自白法則の憲章上の地位 ―― 黙秘権との関係
第3节 本章の成果
第6章 ドイツ法
第1节 136条补の参照可能性に関する前提的検讨
第2节 136条补による証拠使用禁止の判断枠组み
第3节 本章の成果
第7章 日本法の再検讨
第1節 自白法则の理论的构造を検討する際のアプローチ
第2节 理论的根拠ごとの个别的検讨
第3节 理论的根拠の相互関係と判断顺序
结 语